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あめの家のサンタさん

新学期。


クラス替えって、少しだけ緊張しますよね。


今回は、あめのお友達《凪》が初めて雨宮家に遊びに来るお話です!


なお、サンタさんの破壊力にはご注意ください。


油断してると心をもっていかれますよ…



四月、あめも高校2年生になった。


新学期初日の教室は、少しだけ落ち着かない空気がある。


机の位置も、黒板の文字も、窓から入る風も、靡くカーテンも…


全部、去年とほぼ変わらないのに、どこか少し違って落ち着かない…


「…あ!」


席表を見た凪が、小さく声を出した。


1番前の1番角、雨宮あめがぱっと顔を上げて振り返った!


「凪ちゃん!」


「今年も同じクラスだね」


「やったー!」


あめは嬉しそうに笑った。



凪とは去年も同じクラスだった。


最初は、ただ隣の席になっただけ。


でも、プリントを見せ合ったり、休み時間に少し話したり、帰り道が途中まで一緒だったり。


そういう小さなことが積み重なって、誰とでもすぐ打ち解けられるあめにとっても、凪とはいつの間にか、1番の友達になっていた。


「今年も同じクラスじゃん!運命感じるよ」


「あはは、大袈裟!」


「そういえばあめってさ」


凪が、ふと思い出したように言う。


「家、近いんだよね?」


「うん!近いよ!」


「じゃあ今度、遊びに行っていい?」


「いいよ!」


「ってか、今日来る?」


即答だった。


「お母さんも喜ぶと思うし!」


「ほんと?」


「うん!あと、サンタさんもいるし!」


「……サンタさん?」


凪が首をかしげる。


「あめの家、サンタさんいるの?」


「いるよ!」


あめは当たり前に笑った。


凪は少しだけ黙る。


そして、苦笑した。


「……同名としても、被りたくない名前ナンバーワンだよねサンタさんって」


「分かる分かる!」


「サンタさんとはさすがにポテンシャルで勝てる自信ないわ」

とあめが言った!



放課後。


凪は、あめの家の前に立っていた。


普通の家。


普通の玄関。


普通の雨宮の表札。


初めて行く高校の友達の家って何故か少しだけ緊張する…


玄関を開けると、あめが元気よく振り返った。


「ただいまー、凪ちゃん来たよー」


そして凪に舌を出して笑った


「お邪魔します!」



奥から、やわらかい声が返ってくる。


「いらっしゃい。あめのお友達?」



リビングから出てきたのは、優しそうな女性だった。


落ち着いた雰囲気で、笑い方があめによく似ていてとても美人だ


「母の雫です!」

とあめが紹介した


「あはは、雫です」


「はじめまして。凪です」


「来てくれてありがとう。ゆっくりしていってね」


「はい…!」


その空気は、あたたかかった。


いい匂いがする。



少し甘くて、夕飯前の台所みたいな匂い。


凪はほっと息をついた。


挨拶からの流れでそのままリビングへ通された。


ドアを開けて左がキッチン、右側が広くソファとテレビがあるリビングになっていた。

白い壁紙と、優しい薄緑色のマットが部屋全体をやさしく見せている。


「なんか、雰囲気いい家だね」


「ありがとう」


あめが得意げに笑う。



「サンタさんも優しいよ!」


「だから、そのサンタさんってー」


その時だった。


さっき通ったリビングのドアがもう一度開いた!


そして、静かな足音がした。


ゆっくりと…


まるで、そこだけ夜が歩いてくるみたいに…


凪が振り向く。


黒い服。


濡れたような黒髪。


白すぎるほどの肌。


影をまとったみたいな、整いすぎた顔。


その男が、静かに立っていた。


「……」


凪の呼吸が止まった。


ほんの一瞬。


本当に、一瞬だけ。


でも、その一瞬で心臓が跳ねた。


ドクン。


な、何この感覚…


全てがスローモーション!!


そしてお花畑に埋もれてしまったぐらいな気持ちと息苦しさ!


「……っ」


息を吸おうとして、うまく吸えない。


目が離せない。


怖いわけじゃない。


でも、近づきすぎたら…そんな圧がある。


「おかえり、あめ」


低い声だった。


静かで、やわらかくて、少しだけ甘い。


ヒーリングボイス!?何これ…


凪の耳の奥に、その声が残る。


「ただいま!サンタさん!」


あめは普通に駆け寄って腕を掴んだ。


普通に。


本当に普通に。


「サンタさん、友達の凪ちゃん来たよ!」


「お友達か?!」


サンタと呼ばれた男が、凪を見る。


視線が合った。


その瞬間。


凪の心臓が、また跳ねた。


「…はヅメまスて」


声を出したつもりだった。


でも、少しかすれた。



サンタは、ほんのわずかに目を細める。


「こんにちは、凪ちゃん、サンタです!」


「……サン、タ……さん」


名前を呼ばれただけなのに、胸の奥が変に熱くなる。


(凪ちゃん、凪ちゃん…凪ちゃん……何この気持ち!やばい、好き、なのか私!!こ、恋?)

凪は思わず目をそらした。


でも、そらした先で気づく。


あめが、きょとんとして見ていた。


「凪ちゃん、顔赤いよ?」


「赤くない」


「赤いよ?」


「赤くないって!」




雫がくすっと笑う。

「ふふ。初めて見ると少し驚くよね、サンタさんは!」


(カッコ良すぎる!少しどころではない色んな意味で!!)



凪は心の中で叫んだ。


(お、おかしい!やばい、一瞬でハートが鷲掴みに!!)


「……大丈夫?」


サンタが静かに聞いた。


その声だけで、また呼吸が乱れる。


興奮しすぎて鼻の奥がツンとしている…


「だ、大丈夫です」

(大丈夫じゃないです)

(これは恋?恋なんですか!?)



「ならいいが…呼吸が荒れていたから」

サンタが凪を見つめる。


(ダ、ダメです!私まだキスもしたことがなくて!!)


「花粉症で息がし辛くて」

変な返事をしてしまった凪


その返事をすることすら苦しい


凪は胸元を軽く押さえた。

(なにこの人…そしてこの胸の高鳴りはキュンキュンが止まらない)


(本当に、人間なの?)


冷たそうに見えるのに、声は温かくてやさしい。


近寄りがたいのに、優しい隙がたくさんある…不思議な人


その全部が、凪の頭を混乱させた。


「凪ちゃん、こっち!」


あめが手を引く。


「私の部屋、見せる!」


「う、うん」


凪は歩き出しながら、もう一度だけ振り返った。


「また後でお茶とお菓子を出すからおいでね!」とお母さんが笑顔で言ってくれた


「は、はい」


サンタとも視線が合う。


ほんの少しだけ、サンタの口元が凪に向けて緩んだ気がした。


「……おうふっ!」

なんだこの破壊力…

(あめが手を握ってなければ危うく倒れるところだったわ、私)


凪は慌てて前を向いた。

(気をしっかり持つのよ私!!)


(心臓が、うるさい。)


あめは隣で楽しそうに笑っている。


「ね?サンタさん、かっこいいでしょ?」


凪は、少しだけ間を置いてから答えた。


「……うん!好きになりました…」


それから、小さな声で続ける。


「……かっこよすぎて、心臓に悪い」


あめは嬉しそうに笑った。


「あはは」


「でしょ!」


春の夕方。


あめの家に、週1ペースで放課後、新しい賑やかさが増えた。


凪にとってサンタといえばあめの家のサンタが序列1位になったそうです!


ちなみに、クリスマスのサンタクロースも、あめの家のサンタさんもどちらも同一人物なのは凪には内緒にしたあめでした。

読んでいただきありがとうございました!


三章は、こんな感じで学校や放課後、友達との時間など、少しずつ広がっていく日常も描いていけたらと思っています。


凪ちゃん視点だと、雨宮家ってかなり危険空間ですよね。


ちなみにーー


凪の中で《サンタ》という存在は、もう完全に「あめの家のサンタさん」が世界一になったそうです。


でも、本物のサンタクロース本人だということは、まだ知りませんww


ブックマークも20人になりました!!評価やスタンプもたくさん増えてきて、それも楽しみになってきた私です。


これからも頑張って書くので、楽しみにしてもらえたら嬉しいです。

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