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クリスマス…忘れていた灯り

こんばんは!昨日の続き、クリスマス回です!


避け続けてきた日。思い出したくなかった日。でも――


今年は、少しだけ違う夜になりました。


三人にとっての、あたたかいクリスマスのお話です。


感動回ですよー


「わぁー!!」


白い息が、夜の空気にふわりと溶ける。



その声に重なるようにーー

目の前いっぱいに広がる光。



大きなクリスマスツリー!


無数の電飾が、きらきらと瞬いている。

赤、緑、金、そして温かい白。



あめと雫は、並んでそれを見上げていた。


その少し後ろで、


二人の背を見るように、サンタもまた、静かに視線を上げる。


ーー


こんなふうに、ちゃんとツリーを見たのは、いつ以来だろう。


あの事件以来、三人はクリスマスを外でしたり、ツリーをこうして見たこともなかった…


胸の奥に、遠い記憶がかすかに触れる。


「綺麗だね」


雫が、ぽつりと言った。


「やばい、これ……!」


あめは、言葉にならないまま笑っている。


サンタにとってあめのその語彙の少なさすら、愛おしい。


「クリスマスの主役のサンタさんは、このツリーどう思いますかー?」


くるりと振り返って、いたずらっぽく聞く。


サンタは、少しだけ間を置いてーー


「……綺麗だな」


そう答えた。


あめと雫が、またツリーを見上げて、同時に頷く。


――時間を越えて。


あの時から止まっていた三人が、こうしてツリーを前に並んでいる。


ただ、それだけで。


冬の寒さすら、どこかやわらかかった。


ーー


そのとき。


サンタの目が、わずかに細くなる。


視線だけが、音もなく動いた。


(……この気配)


次の瞬間。


ぐっと、二人を引き寄せる。


「え……?」


突然のことに、あめと雫がサンタの顔を見上げる。


その表情で、ただ事ではないと悟った。


そしてーー


ふわり、と。


ツリーの周囲に、細かな粒が舞い上がる。


雪よりも繊細で。

宝石よりも透明な、氷の結晶。


弾けた水が、夜空に溶けるように広がりーー


そこへ、


淡い、黄色い光が重なった。


やさしく、静かに。


すべてを包み込むように。


次の瞬間。


キラキラキラキラ……!


七色の光が、一斉に弾けた。


電飾と混ざり合い、無数の光が空中で踊る


まるでーー


星が、降ってきたみたいに。


「……なに、あれ」


「すご……」


「綺麗……」


足を止める人々。


顔を見合わせて笑う人。

スマホを向ける人。

ただ、言葉を失って見上げる人。


その中で。


あめは笑っていた。


雫は、静かに涙を浮かべていた。


そしてーー


サンタは、確信する。


(……この光は)


懐かしい。


あたたかい。


忘れていたはずの名前が、胸の奥から浮かび上がる。


(……レミエル)


目だけで、その気配を追う。


――いた。


少し離れた人混みの中。


光の中に紛れるように。


(…下界に来ていたのか)


その姿は、どこか違って見えた。


二つに分かれて…


だがーー


確かに、幸せそうだった。


その隣にいる少年。


(…不思議な力を持っているな)


一瞬だけ、視線が交差する。


けれど、それ以上は何も起こらない。


ただ、すれ違うだけの距離。


それで、十分だった。


ーー


「サンタさん……?」


あめの声で、現実に戻る。


「すごかったね!」


「あれ……サンタさんがやってくれたの?」


雫が、そっと尋ねる。


サンタは、少しだけ空を見て。


「……いや」


静かに答えた。


「昔の知り合いだ」


それだけ。


それ以上は、語らない。


ーー


「あのさ……」


あめが、少し照れくさそうに言う。


「こんなふうに抱きしめられるの、初めてで……どうしていいか分かんないんだけど」


その言葉に、サンタがはっとする。


雫は耳を真っ赤にして固まっている…


「あ……すまない」


慌てて離れようとする。


けれど。


袖は、離れなかった。


あめも。

雫も。


無意識のまま、ぎゅっと掴んでいる。


それに気づいて。


三人とも、少しだけ照れながら笑った。


そして三人ともごく自然に手を繋いだ…




「こんなにも、あたたかいクリスマスになるなんてね」雫が言った



誰も、想像していなかった。


光は、ゆっくりと消えていく。


けれど…


胸の中の灯りは、消えないまま。


それぞれの想いを乗せて。


静かに、夜空へと溶けていった。



「ねえ、サンタさん」


あめが、ツリーを見上げたまま言った。


「ん?」


「サンタさんって誕生日って、いつなの?」


雫が、はっと息を止める!


サンタは少し考えてから、静かに答えた。


「……分からないな」


その言葉に、あめは振り返った。


そして、少しだけ笑った。


「じゃあ、今日にしなよ」


「今日?」


「うん、12月25日」


サンタと雫は言葉を失った。


「……いいのか?」


「いいよ!」


あめは、まっすぐに言った。


「クリスマスの主役なんでしょ?」


冗談みたいな言い方だった。


でも、声は少し震えていた。


雫が、目元を押さえる。


「……あめ」


あめは、サンタの繋いだ手と腕からそっと離れて、ツリーの前へ歩いていく。


光を浴びながら。


少しだけ背中を向けたままツリーを見上げるあめ…


「誕生日のお祝いもあめがやらないってずっと今日まで過ぎて来たのに…」と雫が言った


サンタと雫が、黙って見つめる。


「なんかいい気がする!私すごく幸せなんだもん!!」


あめは空を見上げる。


「今日なんてサンタさんの誕生日にぴったりじゃんね!」


雫の頬に、涙が落ちた。



サンタは、雫に静かに聞いた。


「……あめの誕生日は?」


雫が、小さく答える。


「12月23日……」


サンタは、ゆっくりと目を閉じた。

(あめはそういう子だ)


そして。


ツリーの前に立つあめに向かって、普段は出さないような大きな声で言った。


「あめ」


「え?」


あめが振り返る。


サンタは、少し不器用に笑った。


「あめ、誕生日おめでとう」


その瞬間。


あめの顔が、ふっとほどけた。


泣きそうで。


でも、それ以上に嬉しそうな。


そんな、とびきりの笑顔だった。


「ありがとう」


それから、あめは一歩近づいて。


今度は自分から言った。


「サンタさん」


「ん?」


「誕生日、おめでとう」


サンタは、少しだけ目を細めた。


「ああ」


そして、静かに笑う。


「ありがとう」


雫が二人を見て、涙を拭いながら微笑んだ。


「二人とも誕生日おめでとう!!」


光は、もうほとんど消えかけている。


それでも。


三人の胸の中には、まだ確かに灯っていた。


失くしたと思っていた日。


避け続けてきた日。


誕生日になった日。


そしてーー


あめが、自分の誕生日を少しだけかもしれないが取り戻した日。


サンタは、夜空を見上げて、そして雫とあめに視線を戻した…


「メリークリスマス」


あめと雫も、顔を見合わせる。


そして、笑った。


「メリークリスマス」


三人の声が、冬の夜に重なる。


今年のクリスマスは、三人にとって特別な日になった。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。


今回のお話は、《あめが誕生日を取り戻す話》でもありました。


ずっと祝わなかった日…

避け続けてきた日…


でも、大切な人と一緒にいることで、少しずつ意味が変わっていく。


そんな夜を書きたかったです。


そして、サンタにも初めて誕生日ができました。


三人にとって、きっと忘れられないクリスマスです。


もしよければ、感想やブクマ、評価などいただけると励みになります!


メリークリスマス。

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