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置いていかれた過去より今‥エル、指を鳴らす!

いつも読んでいただきありがとうございます。


今回は少しだけ、エルの《時間、月日》に触れる回です。

1700年という長さは、数字で見ると途方もないけれど、

その中身はきっと、置いていかれた記憶の積み重ねなのかもしれません。


なおきは、まだそれを全部は知らない。

でも知らないなりに、向き合おうとする。


そんな回になっています。


どうか最後まで見守っていただけたら嬉しいです。


「わぁ……! きれい……!」


焼きたてのパンケーキが運ばれ、甘い香りが広がる。

エルはきらきらした目でフォークを握った。


――が。


「なんで膝の上に乗ってるの?」


いつの間にか、なおきの膝の上にちょこんと座っている。


「だってここ、落ち着くし」


「落ち着くの基準どうなってるの?」


悪びれもなく笑うエル。



「僕は1700歳のおばあちゃんの子どもを授かったのか?」


なおきが冗談っぽく言う。


「誰が!?!?」


エルが勢いよく顔を上げた。


「いやだって、膝の上に当然みたいに座ってるし」


「ここ落ち着くんだもん」


「あと1700歳って聞くと急に説得力ある」


「むぅ……」


エルは頬を膨らませながら、フォークでパンケーキをつつく。


その動きが、少しだけ弱かった。


「……なおきってさ」


ぽつり、とエルが呟く。


「そういうこと言うんだね…」


「え?」


「見た目こんなのなのに、中身おばあちゃんって思われるの……ちょっと複雑なんだけど」


言ってから、へにゃっと笑う。


冗談っぽく誤魔化そうとしているのが分かった。


なおきはそこで、

あ、少し傷つけたかも、と気づく。


「ごめん。変な意味じゃなくて」


「分かってるよ?」


エルは小さく肩をすくめた。


「ただ、長く生きてるとさ。周りだけどんどん変わるから」


その声は重いというより、ふと漏れた独り言みたいだった。


「……まあ、慣れてるけどね」


なおきは少しだけ考える。


それから、エルの頭を軽く撫でた。


「でも僕、エルが1700歳でも別にエルだなって感じだけど」


「雑!!」


「だって急に仙人みたいになったりしないじゃん」

悪びれずなおきが言う


「ならないよ!」

怒り口調のエル


「エル、パンケーキ見てキラキラしてるし」

となおき…


「それはする!」

とエルが返す


ちょっとだけ、空気が戻る。


なおきは笑って続けた。


「人間と堕天使が一緒に暮らすって、普通に考えたら意味分かんないし」


「……うん」


「でも、なんか面白いじゃん」


エルがぱち、と瞬きをする。


「家族っぽいのか、友達っぽいのか、その辺まだ分かんないけど」


「……夫婦?」


「飛び級しすぎ」

エルが吹き出した。


さっきまで少し沈んでいた空気が、ふわっと軽くなる。


なおきはその顔を見て、少し安心したように笑う。


「だからまあ、とりあえず」


「美味しくパンケーキ食べられたら、それで今日は大成功じゃない?」


静寂。


すると…


ぽろ、と…


エルの目から涙が落ちた。


「え!? なんで泣くの?!」


「……わかんない」


泣きながら、エルは笑う。


「そんなのでいいんだって思ったら……なんか……」


なおきは困ったように頭をかく。


それから、少しだけ照れながら言った。


「いいんじゃない?」


一拍置いて、なおきは照れくさそうに笑う。


「……あり。」


「え?」


「エルと暮らすの、あり。」


「うん、すごくあり。」



「いいんじゃない?」


一拍置いて、なおきは照れくさそうに笑う。


「先の後悔で、今を諦めるのはもったいない。」


「僕も努力する。」


「だからさ。」


「思い出す場所を、いっぱい作ろう。」


「嫌な記憶より、楽しかった思い出が勝つくらい。」


エルは裾をぎゅっと握る。


「私といても……後悔しない?」


「するわけない」


少し困ったように笑う。


「今日出会ったばかりなのに、不思議だけど。」


「むしろ、いない方が後悔すると思う。」


エルが息を呑む。


「私、堕天使なのに?」


「そう。」


「問題ある?」


「……ない。」


声は柔らかい。


「でも……元は天使、か」

小さく笑う。


「じゃあ、私がなおきを幸せにしなきゃだ。元天使の最初のお仕事」


「1人だった僕にとってもう十分幸せだけど」


なおきは少し身を乗り出す。


「もう少し欲張ってもいい?」


エルは目を伏せ、小さく笑う。


「天界ではね。」


「欲は我慢するものだった。」


「でも。」


「誰かにいてほしいって言われるのは……嫌いじゃない。」


なおきは迷わず答えた。


「家族なんだから。」


「遠慮しなくていいよ。」


距離が自然と縮まる。


エルはぴったりくっつく。


「それより恥ずかしくないの?」


「家族なのに?」


きょとん。


「くっついてないと落ち着かないもん」


少し意地悪く見上げる。


「本当は1700歳のお姉さんなんでしょ?」


「そうだけど?」


「証拠見せて。」


エルはにやっと笑う。


「後悔しても知らないよ?」


青い瞳がいたずらっぽく光る。


ぱちん、と指を鳴らす。



ーー淡い光が二人を包む…


髪がさらりと伸びる。


身長が少しだけ高くなる。


柔らかなワンピースが揺れる。


光が静かに消えた。


僕は、息を忘れた。


そこに立っていたのはーー


膝の上でパンケーキを頬張っていた少女ではなく。


月明かりのように微笑む、一人の美しい女性だった。




この回は「家族って何だろう」というテーマを、

少し真面目に書いてみました。


血のつながりでも、種族でも、時間の長さでもなく、

今を一緒に選ぶことが家族なのかもしれない。


エルのお姉さん姿は、強がりでもあり、覚悟でもあり、少しのいたずら心でもあります。


次話では、その変化がどう影響していくのか――。


よければ感想やブックマーク、していただけると嬉しいです!


今ならなんと第一号になれますよww誰も私にファンなんて居ないのでww


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