はちゃめちゃ回〜天使の息吹〜
今回は、甘くて白くて、ちょっと危険なお話です。
堕天使エル、ついにキッチンに立ちます
説明書は読めるのに、力加減は読めない。
スキル天使の息吹が出ます
そんな、いつもより三割増しでわちゃわちゃしている回です。
焦げるか、笑うか。
私の好きなテンポアップ回です
どうぞ、生温かい目で見守ってください。
頑張って、説明書を読んでパンケーキを作り始めた2人。
エルはボウルを覗き込む。
「なにこれ、ふわふわ! 中に空気いっぱい!」
勢いよく混ぜ始めるが――
しゃこ、しゃこ、
バシャッ。
「わっ!」
「力加減!!」
小麦粉がふわっと舞い、エルのほっぺに白い粉がつく。
「…大丈夫だよ。ほっぺ可愛いことになってるけど」
「え!? どこ!?」
ごしごし。
「あっ、広がった」
「やだぁぁ!」
でも「可愛い」と言われたのはちゃんと聞こえているらしく、ちょっとだけ嬉しそうだ。
「次は生地に空気入れるんでしょ? いっせーので、ふーってやろ!」
「いや、空気って息で入れるもんじゃない」
きょとん。
「入るよ? 天界では指から《羽みたいな空気》出せたもん」
むっ、と指を見つめる。
「今はちょっと出にくいかもだけど……いけるはず。見ててね!」
なおき、距離を取る。
「どれどれ」
エル、集中。
「んぬーーーーっ!」
手の中心が柔らかく光った
《慈愛の風羽》
ぽわん!!
うっすら白い煙。
一瞬で消える。
沈黙。
「……今の?」
「天使の羽、出たでしょ!!」
「すごいすごい(棒)」
「棒読みやめて!」
「本当だ! ふわっとした」
ぷんすかしながらも嬉しそう。
「よし! 焼くよ! バターとろーり! なおきシェフ、アシスタントは任せて!」
「はいはい」
フライパンに生地を流す。
じゅわああ。
「おおお! プクプク膨らむね!!」
「生きてるの?」
「生きてない」
エル、フライパンを覗き込みすぎる。
「あぶな!」
なおきがぐいっと引き寄せる。
「近い近い」
「だって見たいんだもん!」
そのまま背後から軽く抱きしめる形になる。
一瞬、静止。
「……な、なに急に」
「照れたかー」
「うるさい」
沈黙、三秒。
パンケーキ、焦げる。
「うわああああ!」
「ほら言ったじゃん!」
慌ててひっくり返す。
ぎりぎりセーフ。
「私の天使の能力で助かったね」
「関係ない」
甘い匂いが広がる。
エル、目を輝かせる。
「いい匂い! これ絶対おいしいやつ!」
「ふふ、僕が作るんだから当たり前だよ」
「アシスタントは私だけど?」
「邪魔してたのでは?」
「ひどい!」
でも楽しい!
皿にこんがり焼けたパンケーキを乗せる。
エルは生クリームのボウルを手に取り、真剣な顔。
「デコレーションはセンスだからね」
「嫌な予感しかしない」
生クリームにゅるるるる。
たっぷり山盛り。
「うわ、すご」
「まだいくよ!」
にゅるるるるる。
「いやいや、これ以上はエルさん?!」
「ちょ、待っ」
ぷしゅっ。
勢い余って、クリームが――
ぺち。
「……」
「……」
なおきの頬に、真っ白なクリーム。
「……えへ?」
「えへ、じゃない」
でも、吹き出しそうになる。
「動かないで! 取るから!」
指でちょん、と拭おうとして――
逆に広げる。
「のびてるー」
「やだああ!」
慌ててティッシュを探すエル。
その隙に、なおきは指で自分の頬のクリームをすくい――
ぺた。
「ひゃっ!?」
今度はエルの鼻先に白い点。
「おあいこ」
「なおきーーー!」
鏡を見て、エルは真っ白な鼻に気づく。
でも怒るどころか、なぜか笑いが込み上げる。
「……ふふ」
「なに笑ってるの」
「……楽しい」
ぽつり…
エルは小さく笑う。
「こんなふうに、一緒にご飯を作って笑うの……初めて」
なおきも爆笑!!
「こういう楽しいのいいね!」
「またやりたいなー」
エルはぱっと顔を上げる。
「じゃあ次はチョコソース戦争ね」
「戦争前提?」
部屋中に、甘い匂いと笑い声が広がっていた。
床には、二人が騒いだ証拠みたいに白いクリームの跡が点々と残っていた。
……片付けは、食べ終わってから考えよう。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
今回はとにかく「楽しい」を詰め込みたくて書きました。
エルは強がるし、すぐむくれるし、すぐ照れるし、でもちゃんと嬉しいと笑う。
なおきはツッコミながらも、結局一番楽しんでる。
こういう何でもない時間が、実は一番尊いのかもしれません。
……床のクリームは、たぶんミニエルの仕業です。
(責任転嫁)
次回は甘々か、それともまた事件か。
お楽しみに




