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第31話 隠密




 風圧がフウマを襲う。先程の不意を突かれた攻撃ではなく、警戒していたので、難なく防御が間に合う。それでも、フウマは後方のシンを、警戒せざるを得なくなってしまったため、ハルとの距離が開いていく。


(まずい。あの子、隠密の魔法を使ってるから、視認できなくなると一気に追跡が困難になる)


 フウマは追跡魔法を唱えようとするが、またもや風圧が飛んでくる。フウマは防ぐが、ハルの背中が遠くなる。ここでフウマは、シンとの経験の差を感じる。


「……しょうがない、こうなったら––」


 そう言ってフウマは、隠密魔法を展開する。この状態になると、他の魔法が使えなくなるが、シンに妨害されるのを嫌ったのだ。またフウマには、視認さえ出来れば確実に捕らえられるという自信があった。


(魔力反応は消した。後は任せます先輩)


 フウマはハルを追って、どんどん街へ近づいていく。フウマは魔導騎士団、それも情報収集を主に行なっているので、追跡や隠密は慣れている。その為、離れていたハルとの距離が一気に詰まる。


(速い、どうしよう…)


 ハルは、まだ先に見える門を見て考える。

 どのようにすれば逃げられるのか、シンだけならば、簡単に逃げられたのではないか、その疑問が脳内を埋め尽くす。その結果、足が引っ掛かり、体勢を崩す。


「あっ––」


 そうハルが言うタイミングで、フウマの魔法が飛んでくる。その距離はいつの間にか5メートル程にまで近付いており、ハルは息を呑む。


(ハルが成長するには、鍛錬と経験が必要なんだ。挑戦してみろ、死なない程度に。何かあったら俺が、支えてやるから)


 ハルは、この前シンに言われたことを思い出す。「挑戦」その言葉の意味は、何事にも挑むこと。ハルは覚悟を決めた。

 見様見真似、父である魔王の扱っていた、魔法を無力化させる魔法。ハルは手を前に出した。


「なっ、消えた!?」


 フウマがそう叫ぶと、ハルを見る。フードがとれ、表情が伺える。金色の長い髪に、目立たないが、確かにあるツノ。真紅に輝く瞳。魔族以外が見ても、美人だ。と言われる容姿をしている。


「……魔王の、娘、」


 フウマはハルを見て、小さく呟く。ハルの堂々たる風貌に、威圧感を覚える。が、すぐに感じたオーラが消え、ハルが倒れ込む。どうやら魔力切れのようだ。


(今なら!)


 フウマは拘束用の魔法を放つ。その魔法は今度こそ消えることなくハルに向かって飛んでいく。当たった。そう思った時だった。


「世話になったね、魔導騎士団さん」


「“神速”! 先輩!?」


 フウマは後ろを確認して、レネルを探す。倒れ込みながらも、手を振っているので、大丈夫だろう。

 いつの間にか、シンに当たっていた拘束魔法は解かれ、ハルを抱きかかえていた。


「…危なかった。それと、裏切った訳じゃない」


 シンはそう言って、街へ消える。フウマには、足の動きすら見えなかった。

 街へ至る道で、魔導騎士の二人は腰を下ろした。


 












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