第3話 魔法
「ねえ、シン。あなたの魔法は少し変わっていると思うの。単純な身体強化じゃない。もっと強くて、そして、魔力に無駄が無い」
ハルは水を飲みながらシンに聞く。夜が明けた今、ハルには疑問に思っていたことを聞く余裕が生まれていた。
「あぁ、魔装って言うんだ。魔力を装備するって書いて、魔装」
そう言ってシンは右手に魔力を集める。可視化された魔力は雷のようで、黄色く光っていた。
「知ってると思うけど、魔法には属性がある。火、水、土、雷、光、闇、無。この6つが“基本属性”だ。掛け合わせることで生まれる“複合属性”っていうのがあるけど、これはまた別か」
そう説明しながらシンは、右手の魔力を全身に広げる。雷のオーラが全身を包み込み、印象がガラッと変わる。ハルは目を凝らしてシンを見つめる。
「ただ、俺の魔装は属性魔法と少し違う。属性魔法が、自然界の魔力と自身の魔力とで発動するのに対して、魔装は自分の魔力で発動する。発動した魔装には、各々が持つ魔力の性質が発現するけど、基本は無属性だよ」
シンは、魔力を左手に集めると、拳を握る。すると、魔力量が増大した。周りの空気が振動し、木々が揺れる。ハルは、髪を押さえながら、必死に、シンの説明を聞く。
「自身で発動しているから、属性魔法より操りやすく、洗練させれば自由自在にコントロール出来るようになる。防御や攻撃のために一箇所に集めたりと、身体強化と言っても使い道は無限だ」
そう言って魔装を解除する。オーラが消え、ザワついていた森が一気に静かになる。
けろっとした表情を浮かべるシンに、ハルは驚きを隠せない。
ハルは、いかに洗練すればと言っても、“魔装”にそんなポテンシャルが含まれているとは到底思えなかった。それは、属性魔法が何千年の歴史を持っており、それこそ神話の時代からのモノなのだ。そして、日々戦闘に、日常生活に最適の形で進化していっているからで、魔装よりも、優れているべきと、感じてしまう。
「…シン、それって、あなたが強いだけじゃ無い?」
「…かもな」
無表情で答える旅のパートナーに、ハルはこれ以上ない信頼と、呆れを覚えた。
「そろそろ行くか、」
そう言ってシンが立ち上がる。ハルも急いで立ち上がりシンの後に付いて行く。
「最初はどこに行くの?」
「ここから一番近い街、と言っても何週間か掛かるが、『カラム』に行く。あそこは、魔族と多種族連合が“不戦の契り”をした場所だからな。いかに、戦争が多種族側の勝利で終わっても、安全だろ。多分」
「…なるほど、分かったわ」
とてとて、と後ろを付いてくる姿に、シンは小動物的な愛らしさを覚える。
風に揺られ、髪が靡く時にツノが見える。小さくあまり目立たないソレは、ハルが隠しているように見えた。
「綺麗だな、ツノ。可愛い」
「…あ、ありがと、」
反応が薄く後ろを振り返ると、ハルは顔を真っ赤にして、真横を見ていた。




