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第4話 魔獣




「遠いな…」


「無駄に広いから、この島は」


 森を抜けて、平野に辿り着く。この離島『スパク』は、広大な面積を誇っていながらも、自然界の濃い魔力のせいで、魔獣が蔓延り、土地にも影響を与えている。そのため、生物が住むのに適さない。しかし、魔族は大昔に、多種族連合に追いやられ、仕方なくこの離島で暮らしていた。


「シンなら一瞬じゃないの?」


「まあ、俺だけならね。ハルも一緒となると、多分ホントに数秒くらいしかハルの体が耐えられない」 


「そっか、じゃあ、歩かないとか」


 ハルは、所々ぬかるみ、凹凸の激しい平野を、シンの背中を掴みながら進んで行く。ハルはお姫様ということもあり、あまり慣れていなかった。


「なぁ、ここって、本当に魔獣が多いよな」


 シンが遠くを眺めながら言う。


「それは、自然界の魔力の濃度が高いから、生まれちゃうのよ。でも、急にどうし––」


 ハルがそう言い終わる前に、咆哮が遠くから聞こえてきた。その咆哮が少しずつ大きくなるにつれ、地面が揺れてくるのが分かる。

 シンと同じように、前方を眺める。平野だと思っていたそこには、砂煙を巻き起こしながら、突進してくる魔獣の群れがあった。


「な、なんで…」


「ドラムドラ、危険度A級指定の魔獣、それも数百はいるな。発展した街が全勢力で立ち向かう程の数だぞ?」


 シンの左頬が引きつる。

 ドラムドラは、腹と腕の筋肉が発達したドラゴンで、基本数匹の群れで行動する。それゆえ、腹からの突進や、腕を豪快に振り回す攻撃で、何千人もの旅人、兵士、騎士が命を落とした。


「ど、どうしようシン。に、逃げる?」


「いや、いち早く街に着きたい。ハルは目を瞑っててくれ」


「へ? なんで?」


「……グロイから、」


 シンは魔王城跡地から拾った、漆黒の剣を握る。それを見たハルが両手で目を覆う。

 暗くなった視界で、ドラムドラの咆哮と、地面の揺れが激しさを増す。

 すると、剣が地面を擦る音だろうか、大きく不快な音が聞こえた。すると段々と咆哮と揺れが収まる。十秒経つか経たないかすると、完全に静寂が訪れた。


 「突進する方向を変えたのかな?」そう呟き、ハルは両手を目の前から離す。

 あまりにも早い解決。ハルはシンが退治ではなく、群れの向かう方向を変えたのだと考えた。しかし、ハルの瞳に映るものはそんな平和なものでは無かった。


「ん? バカッ!! まだ早い!!」


 シンが慌てて駆け寄ってくる。


「大丈夫か? 気持ち悪くないか?」


 シンがハルの目の前に立ち視界を遮る。顔は強張り、瞳が高速で揺れている。


「動揺しすぎだよ、シン。私、結構大丈夫だから、こういうの」


 頭をそらし、目の前に広がる光景を見る。

 数百はいた大群のドラムドラ。しかしそこにあったのは、巨大な肉片だけだった。

 地面にはどうすれば付くのか分からない、えぐられたような跡が、肉片もその一つ一つが一撃だったのだろうと、悟れるレベルのものだった。


「そっかぁ、これが勇者なのかぁ」


「……」


 ハルは視界の端で、漆黒の剣が粉々に崩れるのを見る。これほどの光景、普通なら悲惨と感じるだろうが、不思議と落ち着いた気持ちになれた。この男が勇者である。そして、魔族を、自分の父である魔王を殺したのだと、改めて実感したのだ。


「シン、私あなたのことを本当は恨みたい。でもやっぱり出来ないや、()()()()しちゃうんだもん」


 ハルはシンの顔を見る。その顔は、何かに耐えるような、辛い表情をしていた。

 彼にとって、“殺し”とは、出来ればしたくないことなのだろう。今までの戦いも、きっと辛かったのだろうと、ハルは察する。


「…顔? 自分では、分かんないや。それより、足元気をつけて、先を急ごう」


 シンはそう言って、ハルの手を取った。












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