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第2話 契約




 目を覚ますと、綺麗な夜空が見えた。大小様々な輝きが、夜の暗闇をこれでもかと照らしている。

 一際大きな輝きを伴って、流れ星が漆黒を駆ける。子供みたいに夢中になり、目で追いかけると、端で焚き火が見えた。


「痛っ、」


 起き上がろうとすると腹筋や背筋、足先から太ももまで、言ってしまえば全身に痛みが走った。


「あ、こら! まだ寝てないと、傷が開いちゃうよ」


 聞き覚えのある声が頭の中を反響する。疲労のせいなのか、ボーっとする頭を、更に横に向ける。すると、焚き火の向こう側に、髪の生え際から、小さなツノの生えた少女が立っていた。


「え、なんで?」


 ツノの生えた少女とは、魔王の娘、ハルだった。


「良いから、動かないで。私の魔法で傷がやっと塞がったんだから。同じことをさせないでよ」


 あざとく頬を膨らませた、ハルとの温度差について行けず、シンは目眩いがする。


「説明、してくれる? 俺を殺すのに、なんで傷の手当てをしたの?」


 勇者の困ったような顔を見て、ハルは焚き火に目を落とす。


「…私、知りたいの」


「知りたい? 何を?」


「…あなたが守った、多種族が共存している世界を、見てみたいの。そして、私の父が死ななければいけなかったのか、ちゃんと考えたい」


 ハルの赤い瞳から、涙が一滴、頬を伝う。その瞬間、勇者には分かった。彼女が自分と同じなのだと。

 わけも分からず最悪へ動く環境。この先に何があるのか、暗闇に向かっていると分かっていても、自分の立場上、考えることをやめなければならなかった。そして、それがこの結果だ。


「…知りたいって、言ったな」


「…うん、」


「辛いかもしれない、後悔するかもしれない。それでも、知りたいか?」


「…知りたい。見たい全部、この暗闇をしっかり見たい!!」


 彼女は口を堅く結び、涙を拭う。そこには、か弱い少女なんかでは無く、覚悟を見出した大人の姿が見えた。


「…じゃあ、行こう。文字通り、俺が君を死ぬまで守り続ける。これは、契約だ」


「なんだか、おかしいよね? 勇者と魔王の娘が契約を結ぶなんて、」


「…勇者は死んだ、魔王の娘も、これを見たら、必ず皆んなそう思う。それに、俺としては、魔王を倒した時点で、勇者じゃなくなってる」


 二人は背後に目を向ける。僅かな光で照らされたソレが、魔王城であったと、もはや誰にも分からない程に崩れ去っていた。


「今いるのは、ただ世界一速い男とツノの生えた変わった少女だけ。旅人の二人組さ」


「でも、もし狙われたら?」


「大丈夫。万が一でも、俺は“神速”シン・ベルハザードだ。そもそも俺たちのスピードに届く奴がいないさ」


 控えめに上がる口角が、ハルには不自然に見える。不自然と言っても、精一杯笑おうとしている不器用さを感じでいるだけだ。


「ふふ、面白いね、シン。全然笑えてない」


「感情の表現が苦手なんだ、俺は。これでも、嬉しいんだ。こうやって、魔族とヒト族が話し合えるって分かって」


 勇者は立ち上がり、ハルの前に跪ひざまずく。頭を下げて、かつてヒト族の王にしたように、忠誠を誓った。それは、彼女の父を殺した罪から、そして、彼女の力になりたいと、強く思ったからであった。


「顔をあげてよ、シン。気にしてない、って言ったらウソになるけど、これから宜しくね」


 シンは手をとられ、立ち上がる。ハルの手は少しヒンヤリしていて、それなのに何処か懐かしい温もりを感じた。


 夜空に流星が群れとなって、縦横無尽に駆け回る。その下で焚き火に照らされた二人。一方はこれからの旅に不安を感じ、もう一方は、()()()()をしてでも守り切ると誓っていた。


 焚き火に照らされ、二人から伸びた影は、()()()()()と、()()()()()を映していた。

 


















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