第25話 雷槍
風を切る音がして、岩が飛んでくる。いや、岩ではなく、土だ。地面を掘り、オーガの握力によって投擲できるまでになった土が飛んでくる。
地面を蹴り、身体を回転させながら空中で回避する。しかし、すぐに下半身のかかと落としをくらう。
「うぐっ、」
シンは地面に叩きつけられ、一瞬息が出来なくなる。それでも、すぐさま体勢を整え、剣を握る。
(厄介すぎる。この森という環境、二人が如く一人の“クビ無し”、そんで死なない。これは、どうすんだ?)
シンは上半身の投擲により、凸凹になった地面に剣を突き刺し、目を伏せて考える。
どのようにすれば殺せるのか。いや、行動不能にできるか。それが一番の問題だった。
(傷をつけても、そもそも死んでいるから関係ない。部位を切り落としても、回復魔法で回復してくる。魔力量に弱点があるなら、魔王との戦いのように、斬り続けるか?)
「……いや、お前ら死んでる奴に、あそこまでしなくて良いか、」
突然になるが、皆さんは知っているだろうか? 雷によって熱せられた空気の温度は、約27000℃と高温になる。
それ程のエネルギーを持った雷が、シンの周りで音をたて、光っている。
「……お前ら、動くなよ? 手加減できないからな」
そう言うと、更に光が強くなる。音も大きくなり、周りの植物が燃え始める。地面が焦げ、“クビ無し”は距離をとろうとする。
「【神成流打 雷槍】」
瞬間。“クビ無し”の下半身が消え去る。地面や、周りの木々が燃え、次々と灰になる。その時、残った“クビ無し”は死んでいながらも悟る。自身が、跡形もなく燃え尽きると。
閃光が縦横無尽に駆け回り、辺り一帯を消し炭にして行く。
上半身は、目の前を疾る業火を見る。そこに恐怖など感じず、どこか美しさを感じる。
「……じゃあな」
消え去る直前。“クビ無し”は目の前に、目を瞑ったシンの姿を見たような気がした。それが、“クビ無し”の最後の記憶だった。
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木々が燃え、黒い煙を吐き出す。しかし、思ったよりも火は燃え広がらず、鎮火していっているのが見てとれる。
森特有の湿気が原因なのか、それとも何年、何十年と魔力を蓄えて培った生命力なのか。シンには分からなかったが、内心では安心していた。
「エルフの森を燃やした。なんて言われたくないしな。もう使いたくない【雷槍】」
シンが“クビ無し”に放ったのは、【雷槍】と言い、シンが勇者として旅をし始めた頃、当時の師匠に教えてもらった、【神成流打】と言う武術の奥義だ。
実際の【雷槍】は魔力の放出を、最大のままで維持し続け攻撃する、連続して繰り出す攻撃だ。だがシンは魔装を極め、かつ自身の魔力に雷の属性が備わっていた為、当たれば一撃必殺の、最高威力の攻撃となった。
「熱いし、前が見にくいし」
しかし、弱点がある。それは約27000℃までになる高温に、身が焼かれる為、長時間使えず、そしてあまりの速さに、目が見えなくなる。これが致命的になることがあり、今回のような限られた足場でなくては、そもそも当てることが出来ない。
「……はぁ、追うか、」
シンは地面に突き刺した剣を探すが、どこにも見つからない。溶けたのだとと悟り、手ぶらでシュラウデンの後を追った。




