第24話 “クビ無し”
クビ無しのオーガを連れた男、シュラウデンが、ナイフで腕を切りつけた。当たり前のように血が吹き出し、男が苦痛に歪む顔をする。しかし、それと同時に、クビ無しのオーガの魔力が一段と強くなる。
「…何をした?」
「生物の血にはな、魔力が僅かだが存在するんだ。そんな中で、エルフはその量が魔族に次いで強いんだ。つまり、」
オーガが武器を地面に叩きつける。その瞬間に、風圧とは違う、何かの打撃をくらう。
「死んだ生物にも、魔力の供給ができるってことだ!!!」
シュラウデンはそう叫ぶと、クビ無しのオーガ(略称“クビ無し”)に触れ、その場を離れる。
シンは追おうとするが、止まる。
(二手に分かれやがった。どちらかに時間稼ぎをさせる魂胆か)
「ただな、俺は速いぞ」
シンがシュラウデンを捕まえようと、一歩を踏み出したその瞬間。“クビ無し”が二体に分裂する。分裂すると言っても完璧に、分身を作り出した訳ではなく、自ら身体を裂き、下半身と上半身に別れたのだ。
「なっ、なにやってんだ!?」
勿論、命ある生物には真似できない。さらに、上半身と下半身に別れたところでスムーズに動けるはずがない。しかし、
「っ、くそっ!!」
上半身の投げた木が前方を塞ぐ。的確に投げ込まれたその木を見て、シンは悟る。
(普通じゃないってか?)
シンが狙いを変え、“クビ無し”達と向き合う。
「さて、俺の防衛戦かな」
投擲を余裕で避ける。が、下半身の蹴りに間に合わず、仕方なく腕と足で防御する。
岩に体当たりをされたような衝撃が、体を貫く。見かけによらず、鋭く入った痛みは、シンを吹き飛ばすことなくダメージを負わす。
「んだよ、そのテクニック」
(魔装が無かったら折れてた。いや、それだけじゃ済まないな)
「今回も、一体一体、確実に殺す」
シンがそう言うと、“クビ無し”達は動きを止める。すると、下半身が足を動かし、上半身へ向ける。
「なんだ、」
ズドンッと下半身が足を上半身の腹に突き刺す。これにはシンも驚きを隠しきれず、無表情な顔に困惑が現れる。
(なんで、殺したんだ?)
シンがそう考えると、嘲笑うように上半身が腕を動かす。「死んでない」シンは、そう言い、舌打ちをする。
(もう死んでるって訳か)
そう、“クビ無し”は一度死んだ生物を操っているだけだ。その為致命傷など存在せず、死なない。全身を斬り裂こうとしても、回復魔法によって立ち所に回復してしまうだろう。
「はぁ、すまんハル。遅れそうだ」
そう言ってシンは、シュラウデンの向かった方向を見た。




