第15話 狐毒
フォンに案内された場所は、木造の建物だった。先程の興奮していたフォンはもうなく、目が揺れている。
「こちらです。どうぞ」
引き戸を開けると、一人の老人が眠っており、その横で老婆が座っていた。シンはその老婆に見覚えがあった。
「センナさん、」
「シンくんかい? どうして」
シンは、センナと呼んだ老婆の元に駆け寄り、事情を説明する。センナはチラチラとフォンを見ており、違和感を感じる。
「コイツがハルです」
「ハル・メルルトです」
「宜しくね、私はセンナ。眠ってる夫がハツ、モムト村の村長よ」
センナがそう言うと、フォンは誰かに呼ばれたのか、部屋を出て行った。獣人は聴覚も良いので、少し間を開ける。
「……何が、あったんですか? 雰囲気が違い過ぎる」
「……」
「…センナさん、おれは、“神速の勇者”です。信用できませんか?」
センナは顔を上げ、口を開く。
「この村が過疎化している時、獣人の移民を受け入れたのよ。最初は良かった、綺麗な塔が建って、賑わっていた。ただ、」
「ただ?」
「夫が病気で、倒れてから、獣人がこの村を取り仕切るようになったの。どんどんこの村の伝統が壊されていって」
「なるほど、そう言うことか、」
シンはセンナの話しを聞き納得していた。急激な外観の変化は、獣人主体の村になってしまっていたからなのだろう。ただ、そうなってしまっては、この村はもうモムト村としては無くなってしまうだろう。
「…病気? これ、毒じゃない?」
「え? どういうことだ? ハル」
ハルがハツの顔を見て言ったその言葉。それが本当ならば、また違った方向に傾いてくる。
「センナさん、少し詳しく調べても良いですか?」
こくこくと、口を押さえながら、驚いた様子で頷く。
「ハル、診れるか?」
「うん、その勉強はしてたから」
そう言ってハルはハツの腕を触る。脈を測っているのか、暫くして、次に瞳を確認している。
一通り調べ終えたのかハルは、ベッドから離れて言う。
「うん、毒だよ。この症状は主に暗殺で使用される、徐々に弱らせて殺すタイプのモノ。一般に、独身の貴族に使われてたから『孤毒』って呼ばれてる」
「そんな、誰が」
シンはその話しを聞き、確信する。
「センナさん。フォンの住む場所はどこですか?」
「え? 南東のエリアよ」
「分かりました。すみませんが今日泊まる場所がないので、お邪魔して良いですかね?」
「ええ、もちろんよ」
シンの作り笑いに気付いたのは、ハルだけだった。




