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224.リティシア様降臨

『まず一つだけ言わせて貰う。私が呼ばれている魔王という称号は、実力的な意味での「魔法の王者」や「魔獣の王者」、または「魔境の制覇者」という敬称だ。それが世界共通の認識で、君達だけが違う解釈をしている。』


君達がイメージしている悪魔の王のような神の敵対者ではないだろう?

 

「だが、それがリティシア様を害さないという論拠にはならない。」


そうだね。

だが、状況証拠はある。


『その論拠と証左もあるよ。それを説明する前に紹介しておこう。そこにいるゼムノア君は元ゼムノークスの魔王だ。魔法の始祖、魔神ゼムノーディアの話は聞いた事があるだろう?』

「な、何だと!?」

「バカな・・女神二柱に加えて魔神まで・・信じられぬ!」


よくもまぁそんな規格外の存在が集まったよね?

私も不思議でならないよ。だが事実だ。


『ゼムノア君も妖魔の王のメンバーだよ。つまり、妖魔の王にはゼムノークスの現魔王と旧魔王が在籍している。』

「まさかあの伝説の魔法の始祖、ゼムノーディア=ダーククライシス?」

「200年以上姿を見せなかったゆえに、死去したと聞いていたが・・。」

「だが妖魔の王には、確かにゼムノーディア=ダーククライシスが組していると情報がある。」

「不老不死って本当なのね・・。」

「ふふふふ・・」


得意気に不敵に笑うゼムノア君。

好きだね君は、その陰の実力者ムーブ・・。

 

あとゼムノーディア=ダーククライシスって中二病芸名、恥ずかしくはないのだろうか?

 

『魔王とはゼムノークス魔法都市における「魔法の王」という意味だ。現在は私が襲名したが、彼女は魔王として長年支持されてきた。リティナス教の斥候もゼムノークスには潜入しているだろう?ならば知っている筈だ。ゼムノークスがリティナス教団を弾圧したり、喧嘩を売っている事実はあるかね?これまでゼムノークスと敵対した事は?』

 

とにかく事実を突きつければ目が覚めると信じたい。

 

「それは、無いが・・。」

『君達の言葉を正とするなら、ゼムノークスとリティナス教団は長年に渡り全面戦争していないとおかしい事になる。』


魔王とリティシア様が敵対・対立しているなら、そうなる筈だ。


世界各地に信者という斥候がいるリティナス教団だ。

ゼムノークスがリティナス教を排除するような敵対関係にない事は明白。

自らの目と耳が、事実無根であることを証明しているのに、何故認めないのか?


「ゼムノークスは、頭がおかしい連中が多いという印象だ。」

『それは私も同意する!』

「即答で同意した!?」

「そこに同意するの!?」

「現ゼムノークスの魔王が同意しては駄目なのでは?」


何を言うか!事実頭のおかしい奴等ばかりではないか!

主に前任魔王のせいで、最近まで方向性がズレにズレていたからね。

魔王として直々に指導しているので、余計に肌で感じる連中の頭のおかしさ!


っていうか、私から見ればリティナス教徒も同様に頭がおかしいのだが!?

鏡を見たまえ!ブーメランに気を付けたまえ!


「いつ敵対し、侵攻してくるか判らぬではないか。」


ああ、得体の知れない怖さがあるという事か。

っていうか、私か見ればリティナス教徒も同様に得体が知れないのだが!

鏡を見たまえ!ブーメランに気を付けたまえ!


と言いたいが我慢だ我慢。


『それはゼムノークスに限らず、どんな国家や組織でも同条件だろう?もっと言えば、リティナス教はエレングレイド王国のアークティア領を、領主を差し置いて実権を握っている教団だ。それを許さない為政者となった場合、今後王国がリティナス教を排除しないという確約は無い。世情的にはゼムノークスより王国の方が君達にとって脅威足り得る。違うかね?』

「・・確かにその通りだが・・。」


ゼムノークスよりエレングレイド王国そのものを心配した方が良いよ。

逆にゼムノークスは無害だと思うぞ。

魔法と魔道具にしか興味が無い、無邪気な集団だ。放置で良い。

聖書と御神体にしか興味が無い、一心不乱な集団と似てると思うがね。


『つまり魔王はリティナス教と敵対していない。現に魔王である私が君達に危害を加えないようにだ。』

「納得はしかねるが、理解はした。」


取り敢えず落ち着いてくれたようだ。


ならば次の証明に移れるかな。




『次に決定的な証明だ。リティア君、君の正体を明かしたまえ。』


もうこの際、ここにいるメンバーであれば、知っていて貰った方が色々話が早い。

リティシア様イコールリティア君だとバラしてしまおう。

そうすればリティア君に対する態度も改まるだろう。

一石二鳥である。



「え?嫌ですぅ。」



おやおや



『・・嫌ですぅ、じゃない!ここで君がババーンと正体を明かして、皆がへへー!っと平伏するのが、お約束パターンなのだよ!』


王道で鉄板のネタではないか。

早く女神様の姿になりたまえ!


「だってわたし怒りました。あんな風に言われるのは心外です。」


それを改めさせる為に正体明かせと言ったのだが・・。

腹立ったから教えてやらないって気持ちは分からなくもないが、このままだと今後もボロカスに言われ続けると分かっているのかね。


『気持ちは分かるが、事情を知らないんだから、別人だと思うのは仕方ないではないか。』

「どうせわたしは穢れて邪悪な存在ですぅ。」

 

確かにその通り事実だが、ここで頷いてしまうと余計に拗れる。

完全にスネてしまったリティア君。面倒臭い。


『むう、仕方がない、ではリティア君には申し訳ないが緊急措置だ。』

「え?」


秘書スキルを一旦解除して再起動すれば、リティア君は神様スタイルで顕現するので、強制的に正体暴露が可能だった。


そう企てて解除しようとしたら、


『秘書スキル解j「 正 体 明 か し ま す ! 」』


解除をインターセプトされた。


変わり身早っっ!



「秘書スキルは切らせない!」


そのシュートを止めたゴールキーパーみたいなドヤ顔をやめたまえ・・。


そう言うや否や、リティア君が光を伴い大きくなっていく。


「解雇なんてさせません!」


どうやら言うこと聞かないから解雇されると勘違いしたようだ。

いや、そんな事で解雇なんてしてたら、もう何回解雇してるか数え切れないよ!

君が言うこと聞かないのは常日頃からではないか!


「な、な、何が?」

「正体?どういう事か?」


突然始まった不思議現象に戸惑う教団サイド。


『よく見たまえ。君達の目の前に居るのは誰だ?』


そして光は次第に人の形になり、収束していく。

そこに現れたのは・・


「リ、リ、リ、リティシア、様?」


聖女が目を見開いて驚き固まっていた。


「はあ?聖女エリーゼ、一体何を言っている?」

「リティシア様だと?」


枢機卿の二人は何が起きているのか分かっていない様子。

彼等は顕現したリティア君を見た事がないようだ。


「リ、リ、リティシア様・・リティシア様ぁぁ!!」


教皇が感極まって滂沱の涙を流していた。


彼等が見たのは見紛う事なき女神の姿。

栗色の艶やかな長い髪は、途中からゆるふわウェーブに流れ、サイドはクラウンハーフアップのゴージャスな感じに纏められている。

赤と紫を纏い、パチクリと開いた大きな瞳は吸い込まれそうに輝いていた。


クルティナ君も美人なのだが、この姿に戻ったリティア君も本当に綺麗なのだ。

カワイイとはこういう顔を指す、というお手本のようなルックス。


流石だ。パーフェクトカワイイよリティア君!

可愛いが正義であるリティナス教が崇めるに相応しい容姿。

ならば効果は抜群だ!


うん、容姿は抜群に良い。

中身が抜群に残念だが・・。



それはそうと・・



何 故 ス ー ツ 姿 ! ?



『秘書ですから!』


心の声に答えてきた。

要らん設定まだ引き摺ってるー!


『着替えて来なさい!』

『ええー?』


ええー?じゃない!浮いてるだろ!

TPO! TPOだよリティア君!

しかも一番最初に顕現した時と同じ、妙に扇情的な恰好だった。


無駄にコスプレ感が強い!


女神のイメージが崩れる!

夢 を 壊 す な !


『もっと女神様らしい、機能性ゼロで良いから、デザイン重視の装飾多めのヤツで頼みたい。』


私は女神の品位が地に落ちるのを防ぐ為、リティア君にダメ出し。

既に地に落ちていて、何なら地下深くに埋没しているような状態だが、それでも守りたい女神の品位!


『それはエロいですか?』


ここでエロさは関係ないだろ!

とツッコむのは野暮なのだ。


ここは敢えて、彼女の意向も汲む事で妥協点を探る。


ここで余分な注文を付けると、ますます混迷を極め話が進まなくなるのは自明の理なのだ。

リティア君との付き合いは長い。

その程度の先読みが出来なければ、彼女を制御する事は出来ない。


『ベアトップのドレスにすれば良いのではないか?前世の私の国のゲーム等からデザイン拾って来なさい。』

『なるほど、分かりました。』


よし、上手いこと導けた。


「どどど、どういう事ですか?何故魔王とリティシア様が親し気に!?」

「また消えた!?」

「え?姿が変わった!?」


困惑と混迷を極めるリティナス教サイド。

すまんね、もう少し待ってくれたまえ。

 

次に姿を表したリティア君は、注文通りの格好をしてくれていた。

ファンタジーなデザインに、カッコ良さだけ追求した、機能性度外視の衣装を身に纏っていた。

 

それ機能的に意味があるの?動きを阻害するだけではないか?と疑問を抱くデザインだが、見た目がカッコ良いのでヨシッ!


明らかに重量のある金属加工品なのに、重力に逆らって肌に吸い付くように所定の位置に留まる不思議装飾。

何故ずり落ちないか分からないが、見た目がカッコ良いのでヨシッ!


現実にこんなの着けてたら、少し動いただけで、装飾品の尖った部分が肌に刺さって痛いだろう。

その服や腕輪等の装飾品は、拷問具か何かなのか?

と思ったが、見た目がカッコ良いのでヨシッ!

 

とにかく、今ここで穿った感想は無粋だ。


見た目がカッコ良いので全てヨシッ!

なんせカワイイが正義なのだから!


「嗚呼、なんて美しい・・。」

「神々しい・・やはり神は実在したのですね。」

「本物はこれほどまでに尊いのか!」


よしよし、反応は上々だ。


「きょ、教皇様、まさか、本当にリティシア様なのですか!?」

「降臨したリティシア様に実際にお会いしているのは、現在では教皇様と聖女エリーゼのみ。その二人がリティシア様と言っているのであれば、本当にリティシア様なのだろう。」


やはり枢機卿クラスでも、神姿のリティア君には会ったことがないようだ。


「嗚呼、ああ、そうだ。リティシア様だ。間違いなくリティシア様だ!諸君、祈りを!全身全霊をかけて祈るのだ!」

「リティシア様、なんと美しい・・。」

「この圧倒的美の化身こそが、リティシア様・・。」


感動と感激で震え跪く教団サイド。

しかし、リティア君は怒っていた。


それはもう度し難く、怒り心頭のプンプン丸であった。


「ふーん、今さら褒めても知りません。」


「・・・・え?」

「・・・・は?」


教団サイドは女神が何故怒っているのか分からずにいた。


「どーせわたしは穢れて邪悪で醜悪で肉しか食べません。」


分かり易くスネていた。


「え?」「え?」「何故?」「そんな・・。」


四人とも茫然自失だ。

一瞬にして奈落に突き落とされ、恐慌状態となった。

彼等が信じ崇める神が、彼等を拒絶したのだから当然の反応だろう。



『良いかね、心を強くもって聞きたまえ。』


彼等はあまりにリティシア様を愛するが故に、リティシア様に嫌われたら自害しかねない。

それくらいの危うさを秘めている。


だから真実を明かすのを躊躇ったが、事態の収拾にはこれくらいの荒療治が必要だと判断した。


『ウチのリティア君は、君達が崇める女神リティシアその人なのだよ。ちなみに、本当の名前はリティア。リティシアは君達教団の聞き間違いだ。』


私はありのままの事実を突き付けた。

それは彼等にはあまりにも残酷な真実となる。


「そ、そ、そ、そ、そんな馬鹿な!そんな事がある筈がない!」

「有り得ない!有り得ない!有り得ない!」

「嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ!」


恐慌状態に陥る教皇達。

今彼等の脳内はグチャグチャだろう。


魔王の仲間が信仰する女神だった?

そんな事認められる訳がない。

この現実の受け入れ難さは尋常ではない。


「リ、リティシア様、い、い、い、今の話は本当なのですか?」


聖女が何とか自我を保って、リティア君へ問い掛ける。


「本当です。ちなみにわたしの名前はリティアです。」

「そんな・・そんな・・」


聖女も頭を抱えて蹲ってしまった。

 

「では、今まで我々は神の御名を間違えて呼んでいたと・・」

「ですが、これまでリティシア様と呼び掛けて、答えて下さっていたではありませんか?」

「訂正するのが面倒でしたので、別に良いかと思いまして・・。大して変わらない名前ですから。」


流石はリティア君。テキトーだ。

教皇はそれを聞いて膝から崩れ落ちた。


「おかしいではないか。何故我輩達リティナス教団ではなく魔王なのだ?」

「そうです!何故そんな不気味な妖木に従っているのですか!?」

「え?シャチョー様カワイイではないですか?」

「「かわいい!?」」

 

おい、こんな愛らしい盆栽を見て何故同意しない。




『あー、ちなみにそこのクルティナ君は、聖書で言うところのクルシュミナだ。』


この際だ、一気に畳み掛けてしまおう。

どうせバレるだろうから、さっさと明かしておいた方が後々やり易い。


「は?・・は?・・はぁぁー!?」

 

更に混迷を深めるリティナス教。

立ち直れるかなぁ・・。

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