222.無敵僧侶 聖棍のガンダムスと妖魔の王対戦ダイヤグラム
私は擬態スキルを解いた。
「え?」
「なんと!?」
「はっ?」
「なっ!?」
四人それぞれの驚きの反応を見て、私は落ち着いた声で自己紹介をする。
『私達は「妖魔の王」。私は魔王シャチョー、そして彼女達が魔王四天王だ。』
私は妖魔の王の姿を見せた。
魔王絶対殺すマンだらけのリティナス教団の総本山、敵地の最奥部で、私達は正体を晒した。
これまで一緒に切磋琢磨し、聖書作りを続けてきた仲間が、実は神敵扱いしている魔王だと判明した瞬間だ。
果たして彼等はどう思うだろうか。
今まで正体を隠していた事を非難されるだろうか。
騙していたことを罵倒されるだろうか。
それとも有無を言わさず戦う事となるだろうか。
だが、甘んじて受け止める。
そして彼等を説得して聖書を次のステージへ導いて見せる!
その為にはリティナス教幹部である、君達の協力が必要不可欠なのだ。
「な、な、何て事だ・・。」
「教団内部、しかもこのような奥へ魔物が!」
「おのれ魔王!モザイク殿をどこへやった!?」
・・ん?
どこへ?
いや、モザイク=魔王シャチョーなのだが・・
「やはり魔王、卑劣なり!モザイク殿と入れ替わり、こんな場所まで侵入するとは!モザイク殿を返せ!」
「おのれ魔王!モザイク殿、絶対に救って見せる!」
えええええぇ?
別物扱いされてる!?
『いや、あの・・』
確かに擬態スキルの説明をしてないけど、そう捉えちゃったんだ!
早く誤解を解かないと。
「おお、魔王が怯んでおるぞ!」
「チャンスだ、ここには聖女とガンダムスがいる!」
「ガンダムスまでこの場へ呼んだのは失策だったな魔王!」
なんか突然魔王とエンカウントしたみたいに、勝手に盛り上がってるのだが・・
似たようなクダリ、ゼムノークスでもやった気がする!
やっぱり臭うよ、ここでもゼムノークス臭!
「聖女エリーゼを退けた実力は認めよう!だが、我等には最強の騎士道戦士ガンダムスが居ることを思い知れ!」
騎 士 道 戦 士 ガ ン ダ ム ス !?
「そして我等と聖女による支援聖魔法がガンダムスを強化!傷付く事も恐れず敵を蹴散らす無敵の戦士と化すのだ!」
聖魔法のバフと回復で支援を受け、ダメージ覚悟の擬似的スーパーアーマーで突撃し、圧倒的パワーで叩き伏せるゴリ押し脳筋戦法か。
って言うか、私がマジモンの敵だったら、強化する暇なんて与えずに、会敵即攻撃するけどなぁ。
この辺りもゼムノークス臭がプンプンする。
ゼムノークスとリティシア教は親戚なのかね?
まあ、ここで空気を読まずに容赦なく攻撃したら興醒めだろうから、準備が整うまで待ってあげよう。
「ガンダムス、身体能力強化だ!フィジーゲイン!」
「聖女エリーゼ、魔力強化魔法を!」
「・・マ、マナフィード・・。」
「違う!ガンダムス、魔力強化だ!マナフィード!と叫ばないでどうする!」
聖女が恥ずかしそうに聖魔法をかけていた。
あ、あのノリは苦手なんだ。
って、ここも魔法発動に前置きがあるのか!
ゼムノークス臭!ゼムノークス臭!
「ガハハハハ!更にパワーアップだ!スキル剛体!」
お、剛体も習得済みか。やるなガンダムス君。
さすがは教団の魔獣戦隊長。
説明しよう!
リティナス教団虎の子の魔獣戦隊「デルタガンダムス」とは!
リティナス教の活動は、漫画とフィギュア作りという力仕事が不要なデスクワーク主体である。
その製作に必要な素材は、主に買い取りや専属ハンターに依頼して調達しているが、特殊でコアとなる素材に関しては、機密情報を守る為外注が出来ない。
その場合は、自前で調達を余儀なくされ、魔獣との戦闘になる事もある。
ワイズエイプとの交戦が避けられないコウセンカの採取等がその代表例だ。
そんな戦闘時に活躍するのが、教団の魔獣戦隊「デルタガンダムス」なのである。
リティナス教の信徒は、漫画とフィギュアをこよなく愛するが故かインドア派が多く、非力且つ貧弱である傾向が強い。
その中でガンダムスは異色の信徒だった。
彼はその屈強な肉体で魔獣を一手に相手取り、採取組へ魔獣を向かわせなかった。
または魔獣そのものが素材の場合も、彼が魔獣を引き付け、同部隊のアタッカーが安全に狩れるようにサポートに徹し続けた。
丁度レールモンドのコウセンカの花を守っていたワイズエイプのような戦術だ。
つまり彼はタンク、壁役である。
我先に手柄を上げようと無謀な突撃を繰り返す他の隊員の中で、自己犠牲を厭わない献身的な彼の姿勢は、地味だが高潔で人望を厚く集めた。
やがて彼は被害を最小限に留める守護神として、絶大な信頼を教団員から得る。
その多大な貢献から枢機卿まで登り詰めた、教団唯一無二の肉体派幹部なのであった。
「「「完成!無敵僧侶、聖棍のガンダムス!」」」
無 敵 僧 侶 、聖 棍 の ガ ン ダ ム ス !?
戦隊ものの合体ロボか・・。
聖女だけ端の方で恥ずかしそうにポーズ取っていた。
んー、何故だろう。
ここでもゼムノークス臭がプンプンする。
宿敵である魔王にエンカウントをしたのに、のうのうとバフ魔法をかけて、最後にポーズまで取っちゃって・・。
終わるまで待ってあげる身にもなって欲しい。
そんな親切な魔王って居ると思う?
「行けガンダムス!正義の鉄槌を魔王へ叩き込め!」
「騎士道戦士ガンダムス、出撃!」
ガンダムス君はボタンかレバーで動くのかね・・。
「我は聖棍のガンダムス!魔王、いざ尋常に勝負だ!ガハハハハ!」
ガンダムス枢機卿が聖女から聖杖を受け取り、振り回していた。
ちょ、危ない危ない!高そうなシャンデリアに当たりそうになってたよ!
いや、勝負って、こんな狭い部屋でそんな長物使い難いでしょ?
味方巻き込むよ!
私が呆れて見ていると、何故かゼムノア君が堪え笑いを漏らす。
「くくくくく・・」
「貴様、何が可笑しい!」
ガンダムスが嘲笑と受け取り激昂する。
「そちらこそ何か勘違いしているのではないか?」
「何?」
お、良いぞ。そのまま彼等の勘違いを正してくれたまえ。
モザイク=魔王シャチョーだと伝えるのだ。
いや待て・・。
ゼムノア君がスラスラ台詞を吐いている。
アレって何らかの演技モードに入っている証拠だ。
あー、なんか余計なこと言い始める前兆ではないかコレ・・
すると、アリサ達もピンと来たようで・・
「ふふん、アンタ達にはアタシ等が見えてないの?」
「古来より魔王には最強の四天王が付き従うものです!」
「魔王と対峙したくば、四天王を倒してからにして貰おうか!」
「ボ、ボクの台詞が!」
出番を奪われるゼムノア君が不憫だ・・。
それよりまた変なノリで話をややこしくした!
「むむ、そうか、ならば貴様等から血祭りにあげてやろう!」
付き合いが良いな無敵僧侶、聖棍のガンダムス!
何でわざわざ四天王戦するの!?
そんな不合理で非効率な提案、乗らなきゃ良いのに!
ガンダムス君はビシッと指差してキメポーズ。
しかし、ここから更にグダグダになっていく・・
「そう来なくてはな!よし、行けゼムノア!」
「くくく、血祭りにあが・・って、ボボボ、ボクが先鋒なの!?」
「お前の立ち位置は四天王最弱。ゼムノアごときに敗れるとは口程にもない!という結末に落とし込む為の役回りだろう?」
「い、いやいや、最弱はクルティナでは?」
「何だと!」
「ヒッ!殺さないで!」
おーい、君達、周囲を見なさい。
仲間割れしてる場合か。
皆固まってるぞ?オーイ・・
「そう言われるとノアちゃんって戦い慣れてるし、最弱って言われると違うのかも?」
「イヂリ易さは突き抜けてますけど、弱いかと言えば違いますよね?」
「むう、ではどうすれば良い?四天王最弱は是非とも欲しいポストだ。」
「そうね。」
「そうですね。」
「そ、そうなんだ・・。」
要らないよそんなポスト!
「では、今決めれば良いではないですか。」
良くないよ!
ガンダムス君待たせてるから、早くして!
今することじゃないでしょ!
「なるほど、さすがはリティア様。今後の事も考えて、決めておいた方がいいな。」
どこが流石だ!褒めちゃ駄目だよ!
何故納得した!
って、クルティナ君はリティア君のイエスマンだった!
今じゃない今じゃ!後にしたまえ!
「ちょ、アタシはパスだから!アンタ達みたいなデタラメ存在と戦いたくないし!」
「スノーエールをひっくり返す化物妖精は十分デタラメと思いますけど?ニコッ」
確かに、魔力さえあれば近接戦最強はアリサだったりする。
なんせ近寄れないからな。
「ア、アリサ対策なら、闇魔法Lv3スキルバインドで、フ、フラッシュブレスを封じればイケるのでは?」
「ゼムノア、貴様知らないのか?アリサはその対策の対策を習得している。ワタシはこの間の模擬戦で、それにやられた。」
「ええ!?」
ええっ!?
「チッ、バレた。」
隙が無いではないか、あの蜂蜜妖精!?
なんか最近アリサの成長が著しくないかね?
「この中でアリサに一番有効な戦いが出来るのは、遠距離から魔法主体で押し込める貴様だゼムノア。」
「確かにノアちゃんが一番やりにくいかも。でも、逆にリティアとかクルティナは、パワーゴリ押しでノアちゃん掴まえたら勝ちでしょ?」
「の、の、脳筋プレイ反対!」
ゼムノア君は密着されると決め手に欠けるのが弱点か。
ダメージ覚悟で強引に突っ込んで来られると、ライオネルトで触らせないようにするしかない。
だが、読まれるとスキルバインドやスロウ等のデバフを貰って詰む。
「対戦ダイヤグラムを組んでみました。」
はあ!?今!?
アリサ リティア クルティナ ゼムノア
アリサ ー ○ ○ △
リティア △ ー ○ ○
クルティナ △ △ ー ○
ゼムノア ○ △ △ ー
「これ見ると、相性で意外と拮抗してるよね。」
「レ、レ、Lv7魔法アリならボクだって・・」
「アリサはリティア様に容赦ないのが強い・・。」
「クルティナはリティアに本気出せないのが痛いよね。」
リティア君が作った対戦表を四人で眺めながら唸っていた。
いや、そんなの眺めてないでガンダムス君を見ろ!
困っているではないか!
「ゾンビ戦法アリなら、アリサの魔力切れまで粘れば掴まえられるのだがな。」
「不老不死って反則でしょ・・アレは無しよ!」
「リ、リ、リティア様は泣かしたら勝ちなら、最弱です。」
「ゼムノアァ!リティア様を泣かすのはワタシが許さん!」
「ヒッ!殺さないで!」
話し込んでる・・。
「権能アリならリティアとクルティナの二強なんじゃない?」
「ア、アレは反則」
「リティア様、権能あり、何でも有りとして、妖木も含めるとどうなるのでしょうか?」
「んー、えーっと、はい、出来ました。」
どうやら鑑定スキルを使って、分析した結果を表示しているらしい。
シャ アリ リテ クル ゼム
シャ - ◎ ○ △ ○ 8P
アリ ✕ ー △ ✕ △ 2P
リテ △ ○ ー ○ △ 6P
クル ○ ◎ △ ー ◎ 9P
ゼム △ ○ △ ✕ ー 4P
「ま、フツーこうなるよね。つーかアタシ、リティアとノアちゃんにワンチャンあるんだ。」
「わたしの権能は戦闘向きではありませんし、戦いは苦手です。」
「妖木が厄介だな。権能有りのワタシにワンチャンあるのが驚愕だ。」
「こ、これ、リティア様との対戦以外、ぜ、全部初撃で勝負が決まりますよね。な、何を出すかの読み合いなだけで、戦闘という形にならなくないですか?」
「そうですね・・」
「やはり一定のレギュレーションがなければ面白くないな。」
「何でもありだと、味気無いね。」
ダイヤグラムを見ながら考察に入った四人。
私も入りたい。
「ねぇ?そこのオジさんどう思う?」
「「「・・・・。」」」
全員唖然として言葉が出ないようなので、代わりに私が答えてやろう・・。
『今、それ、やるなー!』
ガンダムス君のバフも切れてしまったではないか!




