Li sTe N -リッスン- 3
廊下に出た瞬間、音が消えた。
さっきまでのざわつきが嘘みたいに静かだった。
ただ好きな曲が頭の中を駆けまわる。
「……はぁ」
未來は小さく息を吐く。
「またやっちゃってる……」
誰に聞かせるでもなく、ぼそっと呟く。
「おとなしくしてんだから、いいじゃん……」
自分で言って、自分で納得できない。
わかってる。
“おとなしく”なんてしてないことくらい。
「あぁ……もぉ今帰ったら、美月に怒られるだけだし」
顔をしかめる。
あの人の説教は長く逃げ場がない。
「屋上で時間つぶして帰ろ」
ふと、視線を横に流す。
色あせた紙の中に、明日の給食のメニューが貼られていた。
「……明日、カレーじゃん」
どうでもいいはずの情報に少しだけ気が抜ける。
未來はそのまま、階段へ向かった。
立ち入り禁止と書かれた紙を、気にも留めずドアノブを引く。
軋む音と一緒に屋上の空気が流れ込んできた。
「……やっぱ、屋上は」
未來は外に出ると両手を思いきり空に突き上げる。
「キッモチイイーー」
声が、風に乗って消えた。
「フゥー……」
深く息を吸って、吐く。
胸の奥に溜まっていたものが、少しだけ軽くなる気がした。
鞄を枕にしてそのままコンクリートに寝転がる。
冷たいはずの地面もすぐにどうでもよくなる。
目を閉じる。
音も、感情も、全部、真っ暗な闇の中へ消えていく。
――気づいたときには、時間が経っていた。
最終下校を告げるチャイムが、校庭に響く。
「……やっべ」
未來は目を開ける。
「爆睡しちゃった」
体を起こそうとした、そのとき。
「やっぱり、ここに居たのか」
聞き慣れた声が、背後から聞こえた。
未來は一瞬だけ目を向ける。
そして、すぐに目を閉じた。
――寝たふり。
「なにやってるんだ!」
「……」
無視する。
「なにをしてるんだ!?授業はどうした?起きてるんだろ、未來っ!」
しつこい。
逃げきれないのは、わかってる。
美月が腕を組んで立っていた。
未來はゆっくりと体を起こした。
「ほんっと……どいつもこいつも、うるさいな」
目を細めて、美月を見る。
「なんか俺に用でもあんの?」
「よっ……用はないが……」
歯切れの悪い返事。
未來は大きく背伸びをする。
「用がないなら、職員室戻れよ」
「お前だって用もないのにここに居るだろがっ」
「……えっ、まぁそうだけど」
一瞬だけ言葉に詰まる。
それを誤魔化すように、空を見る。
雲と時間がゆっくりと流れていた。
「なぁ未來…」




