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第6話 夕方辛鍋

「今日の夕食は、何を食べたい?霜月さん」

「えっと。……それじゃあ。藤村君のお部屋ではガスが使えるのでキムチ鍋と言う物を食べてみたいですね。今まで缶詰め料理ばかり作って食べていたので」


 学校帰りの放課後。彰と雪乃は人通りが激しい商店街へとやって来た。


 商店街ならば、どこに行っても人の目や監視カメラそこら中にある為、雪乃を狙っている人間が、雪乃を連れ去ろうとしても時間がかかる。


 そして、雪乃が大声で助けを叫べば、誘拐犯もその場に居る大人数に取り押さえられる確率が高い。

 そう考えた彰は、放課後。学校を急いで後にすると人通りの多い公園へと行き。タクシーを呼んだ。


 そして、《《元婚約者》》の紫陽花あじさいが、雪乃と一緒にやって来たと同時に3人でタクシーに乗り込み。彰達が住む近くの商店街へとやって来きた。


(彰君。任務完了しましたわ)

(ご苦労様、紫陽花あじさい。感謝する)

(はい。それでは、私はお買い物がありますので失礼します)

(おう。またな~!)

(……紫陽花ちゃん。いつの間にメイド服に着替えたの?)


 そして、現在。彰と雪乃は2人きりで夕食の買い物に来ている。


「おいおい。笑顔全快でそんな発言するなよ。悲しくなるぞ」

「えっと。……ごめんなさい」

「いや、冗談だって。そんな深刻しんこくそうな顔しないでくれ。……キムチ鍋か。良いな。じゃあ、今日はキムチ鍋な」

「は、はい。……(藤村君。私に対して全然怒らないなぁ。ここまで優しく接してくれる人今まで、夕凪ゆうなさん以外で初めて)」


 彰の顔をジーッと見つめてる雪乃。かすかに雪乃のほほが赤いのは、寒いせいかもしれない。


「チゲ、チゲと。おぉ、特売だってよ。チゲ鍋の出汁。これは買いだな。商店街って、たまに特売をやってくれるからスーパーの時より安く買える時があるよな」


 ジーッと雪乃のに見られている彰はというと。すぐ近くの店内で特売品の鍋の元を物色ぶっしょくしていた。


「ん?……どうした?霜月さん。俺の顔になんか付いてるのか?」

「い、いえ。なにも!なんでもないですよ。藤村君。オホホホ」

「オホホホって。なんで九条のモノマネ?」

「さ、最近。女の子達の中で流行ってるんです。マリアちゃんモノマネ。オホホホ」

「へ~!そうなのか。初めて知ったわ。オホホホとか。どこのお嬢様な笑い声だよ。やっぱり面白いよな。綾人の嫁さん」

(……ごめんなさい。マリアちゃん。藤村君を見つめていたことを、誤魔化ごまかす為に。マリアちゃんをダシにしちゃった)


 心の中で親友に謝る雪乃。やはり少し腹黒い女の子。



 ここは近衛マンションの最上階。彰の悪友の近衛このえ綾人あやとが住む部屋。


「ぺくちゅん!……鼻水出てしまいましたわ。綾人あやと君」

「ほら。鼻をかめかめ。ズビィ~」

「ズビィ~ですの」

「……本当にマリアは世話が焼ける」

「嫌……ですの?」

「嫌じゃないな」

「嬉しいですわ。綾人あやと君」

「……そっか。良かったよ。真莉愛マリア


 オホホホで話題に上がった真莉愛さんは、綾人あやと君と言う、彰の悪友とイチャコラしていた。



《再び商店街》


「点呼を取る。良いかな?霜月助手」

「は、はい。藤村教授」

「では、まずは野菜から。白菜、長ネギ、ニラ、大根、白滝しらたき、茸類は……えのき、しめじ。以上だ」

「あ、あります。藤村教授。……(商店街の中で。こんな大声で。は、恥ずかしいよぉ)」



「あら。可愛いね。高校生カップルがイチャついて」

「若くて良いね。お似合いじゃないか」


 彰が、突然商店街で始めた謎コントに周囲のお客様が注目し始めた。


「良し。次はメイン食材だな。牛肉、白子しら牡蠣かき、海老、タラ。揃っているかね?霜月助手」

「は、はい。いっぱいあります。……(私が食べたことない高そうな食材ばっかり)」

「よしよし。それでは、次はキムチとチゲ鍋の元はあるな。これで全部買ったかな?」

「キ、キムチを買っていません。藤村教授」


 どんどん続く謎コント。


「おぉ!流石は、霜月助手。私の一番のパートナーだな」

「ふ、藤村君の一番のパ、パートナナナナ?!てすか?」

「いや。演技だけど?」


 雪乃は、顔をだごの様にして、恥ずかしがり。彰は、演技をめて、雪乃に聞かれた事に素直に答えた。


 一方。商店街から少し離れた場所で、彰と雪乃のやり取りを見つめているガラの悪そうな2人の男女が、イライラしながらその様子をながめていた。


「……何なんだ?あの馬鹿なガキは?あんなにさわがれたんじゃ。近寄ちかよりたくても近寄れねえじゃねえか」

大毅たいき。本当にやる気なの?いくら、私が、雪乃の義母だからって。面識めんしきのないアンタと一緒に、雪乃に声をかけたら怪しまれるわよ」

「馬鹿やろう。あと数日で、お前の旦那が帰って来るんだろう?さっさと……ん?」


 屑男くずおが何か言い終え様とした時、2人の前に珍しい猫が現れた。


「ニャンニャンニャン~♪ ニャン?」


「うお?!あの猫は?マジかよ。おい!」

「な、何よ?あの珍しい猫がどうしたっていうのよ?大毅」

「馬鹿。あの猫は、ブリティッシュ・ショートヘアーだ。前に海外から密輸したから分かる。あれは、希少なブルーの毛並みだ。捕まえて金持ちにでも売れば40万以上はくだらね。しばらくは遊んで暮らせるぞ。美和子みわこ

「40万以上……凄いじゃない」


「ニャン!」


「うおぉ?!待ってゴラ!40万!」

「ま、待ちなさいよ!金のなる猫!」


 どこからともなく現れた。謎のブリティッシュ・ショートヘアーは、大通りの道路へと突然走り出した。

 それを見た屑男と毒母は周りを一切確認せずに道路の方へと向かって行く。


〖ブッブー!ブッブーー!!〗


 目の前に大型乗用車が走って来ているのにもかかわらず。謎の猫を追いかけて道路へと飛び出した。


「「ギャアアア!!」」


「キャアア!!交通事故?!」

「い、いや。馬鹿そうなカップルが乗用車に突っ込んで行ったぞ。自殺でもはかったのか?」


 その後。自殺を図った男女カップルは、意識不明のまま救急車へと運ばれて行った。


〖ピーポーピーポー!!〗


「何だ?事件か?」

「……いえ。男女カップルが勝手に車の前に飛び出したみたいですね」

「アホなのか?」

「……さぁ?」


 全ての買い物が終わり。マンションへと帰るとしていた彰と雪乃は、遠くに見える事故現場を見つめていた。


「ニャン!」


 そして、そこに現れたのはブルーの毛並みを持つブリティッシュ・ショートヘアーのネロだった。


「お~!ネロ。今から家でチゲ鍋やるから来るか?」

「ニャン?ニャン!」

「おお!そうか。食べたか。食べたか。ヨシヨシ」


 彰は、可愛らしく足元にすり寄って来たネロを優しくかかえると。モフモフの毛並み頬擦ほおずりした。


「藤村君。猫ちゃんにチゲ鍋を食べされるのは不味いと思いますよ」

「……かな?」

「はい。……私も猫ちゃ…ネロちゃんを抱き締めて良いですか?」

「ん?あぁ、良いよ」「ニャン♪」

「では……ふわぁ~!

ネ、ネロちゃん。モフモフですねぇ~!」

「ニャア~ン♡」


 雪乃は、彰からネロを受け取ると。彰と同じ様にモフモフし始めた。


《近衛マンション 彰の部屋》


「「頂きま~す!」」

「ニャニャニャ~!」


 その後。マンションへと戻った2人と1匹は、仲良くチゲ鍋作りを行って。美味しいチゲ鍋を完成させた。


 ちなみにネロは高級猫缶を食べ終わったと同時に、彰の部屋から姿を忽然こつぜんと消していた。



《近衛マンション とある部屋》


「ムムム。どこに行っていたんですか?ネロさん」

「ニャ~ン!ゲプッ!」

「……凄い満た顔をしてらっしゃいますね。ネロさん」

「ニャンニャン」



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