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ヤンデレ狼の英雄様に、無理矢理番にされました〜それでは、デスゲームを始めましょうか〜  作者: 井藤 美樹


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親子二代でやっちゃってたようです


 てっきり、伯爵令嬢の時のように裏から手を回すと思っていたけど、今回は正攻法で行くみたい。国王陛下に直訴したとか。ラメール侯爵夫人は国王陛下の妹だからね。そこに頼るのが、一番手っ取り早いでしょう。


 後日、その時の様子を両殿下に聞いたけど……素直に正攻法とは思えないのが、カイナル様らしい所よね。えげつない程、完全に逃げ道を塞いでいるから。


「難しい顔をしてるわね」


 スノア王女殿下が、休憩のために持参したクッキーを優雅に摘みながら話し掛けてきた。


先程(さきほど)の話を聞いて、普通笑えません。カイナル様、脅してますよね、国王陛下を」


 以前、何度も抗議文を送っていた過去があるから、国王陛下に再度直訴したのは理解出来る。叶うかどうかは別として、一応、筋は通るから。それに、あの女の実母は国王陛下の実妹だし。だけどね……


「脅してるわね」


「脅した上に、期日を(もう)けていたな」

 

 スノア王女殿下とアジル殿下が愉快そうに言った。


「二人とも、楽しそうですね」


 予想外の反応に呆れながらそう言うと、同時に返事が返ってきた。


「「楽しいよ」」


 さすが双子。綺麗にハモってる。


「楽しいですか……?」


 とても機嫌がいい両殿下に対して、どう反応したらいいか分からないけど尋ねてみた。


(国王陛下が気の毒に思うけど、両殿下は違うのね)


「そもそも、叔母上はシルクに甘いのよ。それも、身体に悪いほどの砂糖を入れた上に、また追加したくらいの甘さ。カイナル様が番を得たって情報が届いたから、留学先から戻って来たのよね。なら、どうして、戻って来たシルクを普通に受け入れているのよ。ましてや、常識があるなら復学などさせないわよ」


 それ、私も思った。


 過去、起こした問題が問題なんだから、私が親なら登校させないで、留学先に送り返す準備が整うまで自室に謹慎させるわ。今はどうかは知らないけど。学園にいないだけで、気が休まるよ。


「シルクが叔母上にねだったんだろ。ほんと、超過保護で困るよ。似た者親子だから、溺愛が凄くて……娘の恋を真剣に応援しているから、話にならない。そもそも、シルクを無理矢理留学させたのは、ラメール侯爵だから、今回もかなり揉めるね」


 そのもの言いで察したよ。スノア王女殿下もアジル殿下も、何かしらの被害を受けたのね。


(亜人族が決めた番を他人が否定することを、母親が容認してるって……母親自身、降嫁される前からかなり問題があったようね。無理矢理、ラメール侯爵家に降嫁させたように思えるわ。少なくとも、他国に嫁がせることは出来ないよね。お花畑過ぎて。絶対、問題起こすわ)


「親子とも恋愛気質なのですね。似た者親子って、気質以外にあるのですか?」


「シルクと同じだよ。相手は現コルディー公爵。親子二代でやっちゃったんだよ。それプラス、運命の番から逃げられた」


 アジル殿下が苦笑しながら教えてくれた。


「運命の番から逃げられるって事あるんですね……」


(運命の番が逃げ出す程の馬鹿さ加減って、何したの?)


 余程の事なんだろうね。それにしても、親子二代でターゲットにされるなんて、可哀想に。まぁでも分かるかも。義お父様、今も格好良いから。カイナル様とよく似てるのよね。そう考えると、親子で好みが一緒なの!?


「はっきり言っていいわよ、お花畑だって」


(いや、言えないよ。私平民)


「そのせいで、公の社交場でコルディー公爵家とラメール侯爵家がかち合わないように裏で働かされて、ほんと、迷惑もいいところだよ」


 心底、ウザそうに語るアジル殿下を見て苦笑い。


「……ラメール侯爵令嬢様と同じ思考なら、他国の招待客がいる公の場で問題起こしそうですね。ラメール侯爵様が不憫です」


(胃と髪の毛に直できそうね)


「その分、降嫁する時に、通常の五倍のお金を渡したそうだよ」


(お金で、家臣に押し付けたのね……王族、怖っ。その王族を脅すカイナル様って……)


「……取り敢えず、四日後までにどうするかですね」


 留学先に送り返すか、除籍にして放逐するか――


 カイナル様は国王陛下立ち会いのもと、ラメール侯爵夫妻に、シルク嬢の処分を五日以内に下すよう嘆願した。それを、国王陛下が受理したのが昨日。


(すんなり片が付くとは思えない)


「どうにかしないといけないのだけど、たぶん、すんなりとはいかないわね。あの親子、妙に図太いから」

 

 スノア王女殿下も同じように考えていたみたい。


「……所で、何故、ユリシア嬢は学園に登校しているのかな?」


 笑顔で、アジル殿下に訊かれたよ。言葉に詰まる。


 だって、カイナル様と登校するかしないかで揉めたからね。その時は、そんな経緯(いきさつ)があったからなんて知らなかった。知ってても、登校したけど。


「……もうすぐ、中間試験がありますから」


 登校する選択をしてよかったと思う。両殿下から、何があったか聞けたし、それに――


「本当に、それだけなの?」


 スノア王女殿下が私の顔を見ながら確かめてくる。


「はい」


 私はにっこりと微笑みながら答えた。


 スノア王女殿下もアジル殿下も険しい表情をしている。間違いなく、嘘を吐いてるって分かってるよね。同時に、詰問しても答えない事も分かっているはず。


 まだ明確なものじゃないけど、私なりの意趣返しが出来るかもしれない。


「そろそろ終わったか? 出来れば、ここでする話ではないと思うが、というか、しないでくれないか」


 生徒会長が困惑した顔で、私と両殿下の会話に入って来た。


「場所を考えろ」


 副会長はもろ迷惑そうに吐き捨てた。


「ここが一番安全だからです」


「失礼な。場所はわきまえてるわ」


「ついでに、時間もわきまえている」


 私と両殿下は次々と反論した。生意気な一年生に、生徒会長と副会長は心底うんざりした様子で疲れていた。



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