一生、言われ続けるでしょうね
結果から言えば、ラメール侯爵令嬢を出禁にすることは叶わなかった。
内心、出来ないだろうって思っていたから、生徒会長に抗議はしなかったよ。目の前で、盛大な溜め息は吐いたけど。
生徒会役員を辞退してから留学したわけじゃないし、戻って来てからも辞退してはいないからね……無理でしょ。そもそも、その留学が交換留学の形だったから尚更だよね。籍はまだ学園にあったようだし。だから、スムーズに戻って来れたんだよ。要は、休学扱いされていた訳。それに、あの女は仮にも侯爵令嬢様、それも降嫁したとはいえ王族の血が入ってるから、正直難しいよね。ここが学園でも。
それでも、生徒会長は頑張ってくれたみたいで、「仕事をしないのなら辞めてほしい」とはっきり言ってくれたみたい。副会長の件で色々思う事が、彼なりにあったのね。私的には、「辞めさせる」と断言してほしかったけど。
この件については両殿下も了承済みだし、生徒会長の後押しをしてくれたようだから、あの女も渋々納得して仕事をし始めたみたいね。その場面見たかったよ。呼んでくれれば、飛んで駆け付けたのに、残念。
とはいえ、問題そのものが解決したわけじゃない。っていうか、解決しようがないよね。相手が病的に拗らせているんだから。
妄想と現実がごちゃ混ぜになってるから……いくら、私がカイナル様の番だと言っても、意味が分からない反論をしてくる。辻褄の合わない話を繰り返す。頭の病院に行くレベルだよ。なので、言うだけ無駄。聞く耳もないしね。相手するだけで、マジ疲れる。
今日も、カイナル様自慢から始まって、謎の妄想話を長々としてから、これでもかって程に、私を遠回しに貶す貶す。
要約すれば、「お前みたいな貧相な平民が、カイナル様の番ですって!? 笑わせないで!! カイナル様の番に相応しいのは、地位も美貌もあるこの私よ!! ちゃんと約束したの。留学から帰って来たら結婚するのよ!! この泥棒猫!!」って所かな。仕事の手を止めないで言ってる所が、ある意味凄い。これが通常モード。
両殿下がいない時は、更にヒートアップしてるくるわ。生徒会長や副会長が見兼ねて注意しても、治まらない。ヒステリーに喚くから煩くてしょうがないわ。あの女が侯爵家だから、副会長も対処に困ってるようね。それでも、やれる事はしてくれてると思うし、私をフォローしてくれる。あの副会長がよ。性格は合わないけど、根は良い奴かもしれない。
取り敢えず、私は完全スルーしてるわ。話が通じない人と話するなんて面倒だしね。おかげで、スルースキルが上がる上がる。瀑上がりしてるよ。これもまた、貴族社会で生きて行くためには必要なスキルだよね。ここまで酷くなくても、似たような人たちは沢山いると思うし。
あの女が学園にいるだけで、何度溜め息を吐いたことか……
書類を顧問に届ける途中で、つい立ち止まり、ボヤいてしまう。
「……平民は、どんなに努力しても平民なんだよね。たぶん、私が正式にゴルディー公爵家に入っても、言われ続けるのね。分かってはいるし、納得もしているけど……何故、私なのかな? 訊きたいのはこっちだよ。それでも、今更、カイナル様と離れるって選択肢はないんだけどね」
愛してるって感情は未だによく分からないけど、カイナル様は大事な人なの。あの温もりは嫌じゃない。手放せないの。
カイナル様は、「愛してる」とか「大事だ」とか、毎日、赤面するような事を平気で挨拶のように言ってくるし、それでいて、かなりのヤキモチ焼き。病んでいて、直ぐに私を監禁しようとしてくるし、私を害する者には容赦ない。必死で止めているから、まだ死人は出ていないけど、社会的な罰はしっかりと下していた。私が知った時には、全てが終わっていたよ。
(たぶん、今回も、水面下で動いているよね)
カイナル様が動かないはずがない。
「間違いなく、伯爵令嬢や取り巻きたちとは比べられない程に、徹底的にやるでしょうね。国外追放で済めばマシだけど……」
今後、ラメール侯爵家がどうなるか不安しかないよ。王族の血筋だからといって、絶対、カイナル様は忖度はしない。それが許される実力と権力があるからね。
カイナル様は番の私以外に、怖いものなんてないのだから……




