第8幕 星宮殿
朱塗の門を抜け石段を駆け上がったプリンの目に飛び込んできたのは、和風様式でお宮のようなお城だった。辺りには人影もなく、夕暮れ時の景色に建物がライトアップされて全体像を浮かび上がらせている。
その玉砂利が敷き詰められた中庭を抜け、本殿の入口へと向かうと魔力の淀みはその内部から漏れていた。
「なにかいるです!」
そう感じたプリンの周囲から現れたのは、プリンよりも一回り小さな背丈の泥人形たちだった。
丸い体形で愛くるしい姿をした泥人形たちが、あちらこちらから無数にあらわれ襲い掛かってくる。
プリンはおもむろに杖を手にとり身構えた。
「どこから取り出したかはナイショなのです!」
そして杖を振りかざし呪文の詠唱をはじめると、杖の先端に周囲から魔力が集まってくるのが分かった。
「ウィンディア!」
そしてプリンがそう叫ぶと同時に、杖の先から放たれた衝撃波が数体の泥人形を粉々にうち砕く。
「フン~ッ」
鼻息荒くドヤ顔をきめるプリンであったが、その表情はすぐに驚きに変わる。
崩れ落ちた泥人形たちがグニャグニャと再生を始めたのだ。
「ぬぬぬぅ!倒してもすぐ再生するソッチ系のヤツでしたか・・・。となると、こういう時は人形を操っている親玉を探して倒すのがセオリーってやつなのです」
そのときプリンの背後から声が響いた。
「待ってプリン!人形たちの額をよく見てごらんよ」
「お~、スケさん!よくぞここが分かったのです。ズンズの元おっちゃんはどうしたですか?」
「さっき二手に分かれて、下でチョビンさんたちの救助にあたってる。って、そんなことはいいから!ほら、人形たちの額を見てごらんよ」
スケさんがしつこく促してくるので人形の額に注目すると、そこに刻まれた"エメス"の文字が見えた。
「なんですか?キ〇肉マンのマニアか何かなのですか?」
「違うよ!ゴーレムの額には真実をあらわす"エメス"の文字が書かれているんだ。そこから"エ"を消して死をあらわす"メス"に変えてやれば、ゴーレムってのは消滅するんだよ」
「お~!確かに昔そんな話も聞いたことがありますが、ゲームじゃあまり見かけない設定なのです」
「まあそりゃね、だって表現が難しい設定だから。それよりもさっきの魔法で"エ"の文字をピンポイントで狙い、そのゴーレムたちを倒すことは可能かい?」
「フン、アタチを誰だと思ってるですか!オチャノコさいさい丸なのです」
「そりゃ失礼」
プリンが再度の詠唱と共に複数の衝撃波を放つと、それが復元途中のゴーレムの額にヒットし、額に"メス"の文字が残された泥人形たちはサラサラの砂となって崩れ落ちていった。
「フフン~ッ!」
得意げに再度のドヤ顔をきめるも、すかさずスケさんの言葉が飛ぶ。
「油断しないで!ほら、第二陣があらわれるよ!」
スケさんの言葉通り、見ると地面の中からヨッコイショといった感じに、新たな泥人形たちが沸き上がってきていた。しかも予想よりも多かったその数に、あわてて呪文を解き放ったプリンは手元が狂ってしまう。
「しまったなのです!」
しかし衝撃波が"エ"の文字を右に逸れて"コメス"と額に刻まれた泥人形は、狂ったようにおかしな踊りを始めたかと思うとやがて徐々に崩れ落ちていった。
「これは!"エ"を完全に消さなくても、文字の形状を狂わせるだけでもいけるのです」
「なんだって!?それならボクでもできそうだ」
スケさんは泥人形に飛びかかると、爪先で"エ"に縦棒を二本加えた。
"Ⅲメス"と文字を加工された泥人形は、よろよろと歩いた後パタリと倒れると砂となって消えた。
「これは面白いね」
調子に乗ったスケさんは逃げ惑う泥人形を追い詰めては、額の文字を変えていく。
"ヰメス""皿メス""ヱメス"
パタリ・パタリ・パタリと息絶えてというか、砂に還っていく泥人形たち。
「アハハハハハハハハハハハ!」
なんだかもう泥人形たちを追い詰めては消していく、スケさんの方が悪の化身にしか見えなくなってきたころ、お宮のような城から悲痛な叫びが聞こえてきた。
「やめてよもう!あたしの可愛いドロキチたちを、いぢめないでよっ!」
城の上方に目をやると、テラスから身を乗り出して声を上げている誰かの姿が確認できた。
よく見てみると、どうやら古風な着物を羽織った少女らしき人物が、両手を突き上げて怒っているようだ。
「おまえは誰なのです!?」
「なんてゆっかぁ、あたしがオツ姫てきな?このパンナコッタ・ワールドの主役てきな?」
「なんだかまた頭の悪そうなオンナが出てきたのです・・・」
「なにこのガキンチョ、ちょムカつく!この星宮殿の主てきなあたしに向かって・・・。こうなったらケチョンケチョンにしてやるんだから!中に入ってきなさいよ」
その自称オツ姫な女の言葉と共に、城内へと続く扉が開く。
「望むところなのです!今すぐ行くので、そこで待ってるのです」
プリンは勢いよく妖しげな気配漂う、星宮殿へと飛び込むのであった。
ーいっぽうその頃ヨンズは
「チョビンさん、皆さん、しっかりして下さい!」
スケさんと別れてチョビンたちを救出するため、この場に残ったヨンズは状況に苦戦していた。
ボーっとパレードを眺めたままチョビンもグリンもミス・セプテンバーも、先ほどからヨンズが必死に語りかけるが魂を抜かれたように反応がない。
「(どうやら、この歌と踊りに人の心を操る効果があるようですね)」
ストリートでは彦ブーの気を引こうと、色鮮やかな衣装に身を包んだ女たちが歌い、そして統率のとれたみごとな群舞を演じていた。ヨンズの見立てでは、そのリズムと視覚効果が人の心を惑わし支配しているのだろうということだったのだが、その場にいても特になんの変化も感じないヨンズ自身は、それ以上のなにか大きな力で守られているのであろう。
しかしその得体のしれない加護のおかげでヨンズは冷静に状況を分析できた。
よく見ると、笑顔で歌い踊る女たちの瞳に光がない。どうやら彼女たちの心もまた何者かに支配されているようだった。
「(いったい誰が操っている?)」
群舞はいくつかのグループの輪になったり、ひとかたまりの大きな群になったりと、その全体像は緩やかに、そして時に激しくその姿を変えていく。統率のとれた造形は素晴らしく、文字通り心を奪われるほどの美しさであったがヨンズを狂わせるには至らない。
しかしそんな中、正気を保ったままでいるヨンズの前に小さな変化が起こる。
群舞の中から一人の少女がするりと抜け出して、頭飾りの中から一輪の花をヨンズに差し出したのだ。
少女の表情は笑顔であったのだが、光を失ったその瞳は訴えていた"助けて"と。
そのときヨンズのなかで、何かがはじけた。
「記憶が・・・」
助けを求める少女の姿に、心を揺さぶられたヨンズの記憶の一部が蘇ってきたのだった。
前回映画が好きで、ブラッド・ピットが出ているものをよく観たと書いたのだが、今回もその続きを。
皆はご存じだろうか"12モンキーズ"という映画を。
主演はブルース・ウィリス。
私たち古い世代だと"ダイ・ハード"のオジサンってところなのだが、若い子たちにわかりやすいトコロでいうと、最近ソフトバンクのCMでドラえもんを演じているオジサンと言った方がわかりやすいだろうか。
肝心のストーリーはというと、謎のウィルスが原因でほとんどの人類が死滅した世界。
その世界からブルース・ウィリスがタイムトラベルで過去に戻ってウィルス発生の原因をさぐるという話なのだが・・・、なんか妙にタイムリーな気もしなくはない。
あとこの作品は映像と音楽が良かった記憶が。
(続編?ドラマ化もされてるようだけど、こっちは観てません)
そうそう肝心のブラッド・ピットはというと
ストーリーの中心的人物の役で、あるシーンでは右目と左目が別の方向を向いている(歌舞伎とかで有名なヤツ?)と話題になってました。
もし興味があればチェックされてはどうだろう。
それではまた次回。ごきげんよう。
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