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第33幕 伏線はまとめて回収すると、こんなことになる


「要はそちらのお嬢ちゃんの力を貸していただきたいのですよ」

「ふぁ!?」

アダマンの申し出に、今まで眠そうにしていたプリンが反応する。


「それはどういう事?」

「それよりもさぁ、ちょっと休憩にしない?私は今まで閉じ込められてた疲れがまだ抜けてないんだけど」

真剣な表情のスケさんに対して、ダラけて間の抜けたミス・セプテンバーの温度差が激しい。どうやらこの妖精はシリアス展開が体質に合わないようなのだが、アダマンからは有無を言わさぬ雰囲気が漂っていた。

「残念ながら悠長にしている時間の余裕はもうなくなってしもうたのです。だからこうして私たちが出てこざるを得んようになったというのもありますし」

「ボクたちのあずかり知らないところでも、物語は動いていたってこと?」

「そういうことですな。つまりはそちらの妖精さんがペニーにさらわれたのも、我々をおびき出すためのマダムの作戦ですし。とはいえ説明が面倒なので、回想にいきますかの?」

「いや、長いからいい」

「いらん」

「メンドクサーイ」

「要件のみ言うダス」

アダマンの提案に、皆が一斉に回想の差し込みを拒否する。そしてそんな困り顔になったアダマンと入れ替わるようにアカハナが一歩前に進み出た。


「つまりじゃな、儂ら"灰色の貴公子"はマダムを倒すため強い魔法を使える者をここパンナコッタ・ヘブンに引き入れようとしてたのじゃが、マダムはそれを警戒して魔力の強い者をしばらく入場禁止にしておった。そんななか、お前さんたちが都合よく現れたのじゃ、"灰色の貴公子"がお前さんたちに近づくことを予期したマダムはペニーに命じて揺さぶりをかけてきた。要は灰色の貴公子を釣るがために、お前さんたちはマダムから利用されていたのじゃ」

「ちょっと待ってください。じゃあペニーはマダムの手下ということなんですか?」


ヨンズの質問に、何を今更といわんがばかりにアカハナが答える。

「じゃからウドゥンを馳走になっておる時言うたではないか。ペニーとその取巻きをどっちが踊ってどっちが踊らされておるのかと、つまりその者らを踊らせておったのはマダムに他ならん。そしてその手下であるペニーをいま儂らが掴まえたことで、マダムに儂らが灰色の貴公子であることがバレてしもうたっちゅうことじゃ」

「なぜですか?ペニーはここに居るんだから、まだ情報は漏れていないのでは?」

「無駄じゃ、恐らくマダムは"遠見の水晶球"ですでに状況を把握しておる」

なにげに遠見の水晶球という言葉にチョビンがピクリと反応する。しかしそんなチョビンを傍目に、スケさんはそれでもまだ何か釈然としないといった様子で話をつないだ。


「うーん・・・。ボクは何を信じて何を疑えばいいのか、さっぱり分からなくなったのだけど、もう一ついい?なんでアカハナさんたちはプリンが魔女だと知っていたの?」

「は?お前たち知らんかったのか?お前さんたちがパスを手に入れたパンナコッタ・ワールドでの活躍はオツ姫、彦ブーを通じてこのパンナコッタ・ヘブンのあちこちにあるモニターでライブ中継されておったんじゃぞ?」

「え!?」

「考えてもみろ、あのケチなマダムが何の得もなしに高価なパスをタダでくれると思うか?お前たちの行動をエンターテイメントのコンテンツとして利用し、さらには灰色の貴公子を釣るためのカードとして使い捨てるためにパスを渡したのじゃ」

「なんだかボクたちの知らない間に、骨の髄までしゃぶりつくされていたみたいだね・・・」

「というわけで、間もなくここに灰色の貴公子を掴まえるため警備の機械兵が押し寄せてくるじゃろう。時間はもうない、お前さんたちはどうする?」

「遠見の水晶球を」

「ん?」

「マダムを倒した後で遠見の水晶球を使わせてくれるのなら、ワシは灰色の貴公子に協力する」

チョビンの言い分は理解できる。もともと彼の目的は遠見の水晶球であったし、最初からマダムが自分たちを利用するためにパンナコッタ・ヘブンに引き入れたのだとすれば、これ以上義理立てするスジもない。というより、そんな目的のために仲間が捕まって売りに出されていたことを知り、マダムに対する不信感が全員のなかで膨れ上がっていた。


「アタチも幸せを呼ぶフォーチュンダイスが手に入るなら何でもいいのです」

今まで眠っていたと思ったら、プリンがちゃっかり便乗して口を開く。

そしてそのプリンの言葉を神妙な表情で聞いていたアカハナが「わかった。その件は儂が必ず何とかする」と約束したので、灰色の貴公子に協力することを拒むものはもう誰もいなかった。


「いいでしょう、それでは現状の課題とその対策について説明をしましょう」

皆がマダムの討伐に賛同したことで、元気を取り戻したアダマンが身を乗り出してくる。ミス・セプテンバーはシリアス展開の継続にえ~ッ、休憩は?とボヤいていたが、今はそれどころじゃないとチョビンに一蹴されて機嫌を損ねていた。

「まずマダムがいると思われるのがパンナコッタ・ヘブンの中心にそびえる管理監視塔セントラルタワーなのですが、この塔周辺にはプロテクションフィールド系の結界が張られていて侵入できないということがまず一つ。これが私達では対処できないのです。併せてこの塔に侵入を試みるものが現れた場合、各所に配置されている警備の機械兵が集まってきて妨害されるのですが、その数が多すぎて塔を調べることもままならないのです」


スケさんはう~んと唸りながら数の推測を試みたが、諦めて素直に訊ねることにした。

「あの機械兵はどこにいても目につくけど、全部で何体くらいの数がいるのかな?」

「正確な数は把握できておらんが、数千体はおると言われとる」

「確かにそれだけの数に囲まれちゃったら、身動きなんか取れなくなるね。でも塔の中はどうなの?中に入ったら迷宮のようになっていて、マダムの所にたどりつくまでがまた大変とか言うんじゃないのかな・・・」

「いや中に入ってしまえば内部構造はシンプルなようじゃから迷うこともあるまい。もともと基本はこの施設の制御システムの機械部屋だからな、演算装置の物置みたいなもんと考えてもらえばよい」

「でもこのパンナコッタ・ヘブンの心臓ともいえる部屋だから厳重に守らなければいけない場所ではある。ならその部屋を守るついでに自分の身も一緒にってことか。なんともコスパの良いことだね」

まあ面倒ではあるが中に入ってしまえば何とかなるようだ。となれば問題を解決するために、そのひとつ前の壁となる結界の方はどうだろう。


「ねえプリン、結界の方はどうなの?解決できそう?プロテクションフィールド系ってアダマンさんが言ってたけど、プロテクションってあれでしょ、俗にいうバリアみたいな感じの」

「そうです。プロテクションっていうのは、魔法や物理攻撃の障害となる薄い膜みたいなものなのです。その膜を何層にも重ねて強度を高めたり、大きさを変えたりして自分を守るのですが、強いダメージを与えたりデスペルの力で剝がすこともできるのです」

「じゃあその層を一枚ずつ剝がしていけば、時間はかかるかもしれないけど何とかなるってことだね」

「そういうことなのです。ただ膜一枚当たりの強度は術者の魔力レベルによって変化するので、やってみないと分かりませんが大丈夫なのです。なぜならアタチは大魔導士の卵プリンちゃんなのだからです。ムフ~ッ!」

「いやだから鼻息が荒いって・・・。でもそうなると、結界を剥がしている間に邪魔をされないよう、機械兵たちをなんとか足止めできればいいのか」

「ほぇ?そんなことは簡単なのですよ」

そう言ってプリンは不敵な笑みを浮かべて、黒い小さな塊を懐から取り出すのであった。



どうもデグリーズノートです。

ちょっと家の方がバタバタしてたのと、考えてた設定をまとめて出そうと考えたら、思った以上に重たくなってしまって更新遅れました。


やっと終盤に差し掛かってきた(?)と思うのですが、引き続きよろしくお願いいたします。

ではまた次回。


°Note



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