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第32幕 急展開は予兆がないから急展開


「その必要はないでしょう」

プリンがペニーから奪ったお金と引き換えに、メナードの知っている灰色の貴公子の情報を教える。その提案にメナードが渋々ながらもわかりましたと答えかけた時、突如現れた別の人物によってその言葉は遮られた。


「あなたは・・・」

その人物にスケさんは見覚えがあった。最初は案内掲示板の前でオークションの事を教えてくれ、その後ミス・セプテンバーの競売で高値を付けていた優しそうなお爺さん。ちなみにミス・セプテンバーの競売はドサクサに紛れて無効になったので、そのドサクサに乗じてしっかりと救出させてもらったのは言うまでもない。

お爺さんはアカハナに近寄り目配せで合図すると、あのチャランポランだったアカハナの雰囲気がガラッと変わり、二人は無言でうなずきあう。そしてその横では黒勇者が不貞腐れたような態度をとっているが、もう何が何だか分からない。

「要は私たちが灰色の貴公子なのですよ」

「なんじゃと!?」

「何ですって!?」

「何だって!?」

何気ない日常会話のような物言いで語られた、お爺さんの告白に一同は驚きを隠せない。

「おっと失礼、自己紹介がまだでしたな。私は商人をやっているアダマンと申す者」

「ちょっと待ってよ、ボクたちには何がなんだか・・・」

「そりゃそうじゃろうな、ここは儂が説明しよう」


ここで混乱を極める一同の前にアカハナが一歩前へ進み出た。

「事の発端はもう二十年ほど前になるかのう、儂にはひとり息子がおった。しかしこれが病弱な子でな、いつ死んでもおかしくないほどの病を抱えてたんじゃ。しかし名のある薬師に頼っても、高位のプリーストに癒しの力を求めても、これがこの子の運命なのだから受け入れなさいと誰もがサジを投げおった。儂は世の中を呪ったよ。しかしそんなとき、カネはかかるが治せんことはないという一人の魔法使いが現れてな、儂ら夫婦は必死になって金儲けに明け暮れたんじゃ」

「ちょっと待って、何の話をしているの?」

スケさんの問いかけに、アカハナは手のひらを向けて最後まで話を聞けと促す。

「しかし普通の仕事では稼ぎにも限界があった。そんなとき嫁が小さな賭場を開いてみたらどうだと言ってな、試してみたらこれが大当たりで、面白いようにカネが転がり込んできたんじゃ」

「ん?」

「魔法使いの要求してきた金額はとんでもない高額じゃったが、儂らはあっという間にその金を準備できた。しかし、しかしじゃ、それから間もなくその魔法使いは金だけ持ってトンズラかましおった。何のことはないインチキ魔法使いだったのじゃ」

「じゃあ息子さんは、お気の毒にだね・・・」

久しぶりの自由を得てハイテンションだったミス・セプテンバーでも、さすがにこの話を聞いてはしおらしく悲しい表情を浮かべた。

「ん?生きとるぞ?魔法使いもインチキじゃったが、薬師もプリーストも皆インチキじゃったのじゃ。息子はただの栄養失調で、転がり込んできたカネで贅沢なものを飲み食いしとったら、ブクブク太って健康そのものになっておった」

「なんじゃそりゃ。だったら息子がおったって、死んだみたいに過去形で喋るな!」

「痛いイタイ!コラ妖精、物を投げるな!」

アカハナの言葉にイラついたミス・セプテンバーが小さな何かを投げている。


「ところがじゃ、生真面目な嫁はその魔法使いにお金を騙し取られたことが悔しくてな、失った金を取り戻そうと賭場の経営にはまり込んでいったんじゃ」

「ねえ、その嫁って」

「そうマダムじゃ、あやつこそ儂の嫁なのじゃ」

え~っ!?と驚愕する一同。

まあ当然だ、こんな金も持ってない小汚いジジイが、煌びやかなパンナコッタ・ヘブンの経営者である超セレブなマダムの旦那だと言われても、冗談はヨシコさんである。だからスケさんは、そんなアカハナの言葉の矛盾点を指摘せずにいられない。

「でもおかしくない?最初ボクたちが地下牢に閉じ込められた時、アカハナさんもいたのに完全に無視されてたと思うのだけど」

「そうアイツは変わってしもうた。欲望の螺旋に取り込まれて、もう儂が誰かも思い出せんようになってしもうたのか。無視じゃムシ、ずっと見知らぬ者のように無視されておる」

「じゃあ、今のマダムは別の何かになってるってこと?」

別の何かがマダムになりすましている可能性もあるのかとスケさんは問うが、アカハナは強い確信を込めた目で首を横に振った。

「息子が病気の時に遊園地に連れて行ってやりたいとマダムが言っておったのだが、金がないからそれも叶わなくてな。それで息子のために儂がせめてもと作ったいくつかの遊具がパンナコッタ・ワールドの原型なのじゃ。今でも残りさらに大きくなっているあの場所を見る度に、マダムのなかに嫁の心がまだ残っておるからだと儂は確信しておる」

「そこで失われたマダムの心を取り戻すため、力を貸してくれと雇われたのが我々というわけですな」

そう言ってアダマンはアカハナと入れ替わり、話のなかに入ってきた。


「雇われたって、こんな金持ちが動くとなったら報酬はそりゃたいそうな金額だろうに、アンタそれを払えるだけの金持ってんの?」

ミス・セプテンバーの言うことはもっともだ、最初金がなくてメシを食わせてくれと近づいてきたアカハナがそんな大金を準備できたとは思えない。

「なにお金ではないですよ。マダムが正気を取り戻したら、このパンナコッタ・ヘブンの経営権を私に任せてもらうというのが条件ですじゃ」

「え~ッ!?そりゃ見返りとしては十分だろうけど、それをマダムが許すのかな?」

「そこは賭けでしょうな」

「うわあギャンブラーだね」

「ただ正気に戻った彼女が手に入れるのは他の資産だけでも常人には想像もつかない大金を手にすることになりますがな。それに人格を取り戻すということは、今の彼女の体を乗っ取っているモノが消えていなくなるという事なのですよ」

「そうかパンナコッタ・ヘブンを作り上げた別人格が消えれば、ここの経営者も消えるってことになるのか」


だが皆がある程度の納得をするなか、ひとり怪訝な表情を浮かべるスケさんが核心に迫る。

「で?そんな秘密をベラベラと漏らすってことは、何か思惑があるんでしょ?」

「ホホウ、話が早くて助かりますのう。要はマダムを倒すためにアナタたちの力をお借りしたいのですよ。正確にはそちらの魔女のお嬢ちゃんの力を」

そう言ってアダマンは、ウトウトと眠そうなプリンに視線を向けた。



どうもデグリーズノートです。

今回は久々にオススメ映画の紹介を!


タイトルは

リバー・ランズ・スルー・イットです。

先般私の地元が田舎である事を書きましたが、

この作品の舞台も自然豊かな場所で、若い頃は都会に憧れるものですが、

田舎もまあいいかと思った記憶が・・・。

(観たのがかなり昔なので記憶もおぼろなのですが)


若い頃のブラッドピットの作品で

なんかこの頃似たような世界観の作品が多かったような気もしますが

これまた記憶が定かでないです。

でも当時かなりお気に入りだったので、気になる方はチェックされてはどうでしょう。


ではまた、ごきげんよう!


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