第34幕 風が吹けば桶屋も吹っ飛ぶ
「でもそうなると、結界を剥がしている間に邪魔をされないよう、機械兵たちをなんとか足止めできればいいのか」
「ほぇ?そんなことは簡単なのですよ」
そう言ってプリンは不敵な笑みを浮かべて、黒い小さな塊を懐から取り出すのであった。
「うん?ナニソレ・・・」
しかしそう言いながらもスケさんはその物質の形状に見覚えがあった。
妖精女王ティターニャから譲り受けた青いその石が緑から黄色、そしてオレンジ色になったら注意と言われていたはずの妖精女王の護り石。赤を通り過ぎて赤黒く変色したソレは、プリンの手の中でおぞましいほどのオーラを放っていた。
「溜まりに溜まった不幸をパンナコッタ・ヘブンでバラまいてやれば、あちこちで大混乱が大洪水なのです」
「そうか!あの機械兵たちはあくまで施設の運営をサポートするためのシステムだから、パンナコッタ・ヘブンで大混乱が起これば優先順位は客の安全と施設の維持にすり替わるのか。結果こっちの動向にかまけている余裕がなくなるってことだね」
「そういう事なのです!ムフ~ッ」
しかしそんなプリンの言葉を聞いて、横から口を挟んでくるものがいた。自らの置かれた境遇に嘆きながらも、逆転の一手を虎視眈々と狙うメナードだ。
「無理でございます!そんな事をすれば、マダムの怒りを買って生きては戻れませんぞ!ここを私めに任せてくれるなら、あなた方を助けてやっても・・・」
「ムリ?だからあんたはシゴトができんのじゃろう」
「何をおっしゃる!?」
「ギャンブルっていうのは、不可能をどうやって可能にするかの遊びじゃ。普通にやってたら負けてしまうものを、どうやって勝ちにつなげるか。不可能の境界線をギリギリまで追い詰めていく創意工夫。しかしそれはシゴトも同じ、だから儂に言わせれば遊びができんやつはシゴトもできん。そしてシゴトのできんお前は今こうして捕まっとるっちゅう訳じゃ。その前に信用もできんお前なんぞに任せるわけがないじゃろう」
「ぐぬぬぬ・・・」
アカハナの言い分に、メナードは顔を真っ赤にして口を閉じた。
「でも遊びができないアカハナもシゴトができないけどな」
「ふがっ!?」
そしてまた得意満面であったアカハナも、ヌンペッチの放った一言で口を閉じることになったのは言うまでもない。
そうこうして決まった作戦の概要はこうだった。
プリンが妖精女王の護り石を使ってパンナコッタ・ヘブンのあちこちで混乱を引き起こし、その隙に乗じて他のメンツも大暴れ。機械兵のシステムをパンクさせて足止めさせたら、セントラルタワーの入り口に移り、プリンが結界を解除している間無防備になっている彼女を他のメンバーがサポート。中に乗り込こんだら、まずはそこで再集合して次の作戦を練り直すということになった。
「メナードはどうするの?」
「猿ぐつわでも嚙ませて石化したペニーに括りつけておけばいいじゃろう」
ミス・セプテンバーの問いかけにアカハナが答えるが、陰気な妖精はまだ自分が売り物として振り回されたことに腹の虫が治まらないのだろう。猿ぐつわを嚙まされたメナードの顔に鼻毛を書いたり散々イタズラをしてやっと冷静さを取り戻す。
「フン、今日の所はこれくらいで許してやるわ!」
十分な利息を付けて仕返しされたメナードの支配人としての威厳は、すでに見る影もなかったのはご想像通りである。
「そろそろ機械兵がくるぞ!それじゃあ、作戦開始じゃ!」
こうして準備を整えた一同は、オークション会場を飛び出していくのであった。
それから二時間後ー
風が吹けば桶屋が儲かるバタフライエフェクトではないが、パンナコッタ・ヘブンの混乱はプリンたちの予想以上の効果をもたらす。
というのも妖精女王の護り石から放出されたアンラッキー効果はプリンのみならず、その周囲にもいかんなく発揮されていた。ノリまくっていた客は突然ツキに見放され、元々ツキのなかった客はさらに深みにハマっていきフラストレーションが溜まっていく。そこへきて遊技機の誤作動に競争ウサギが突然謎の大量失神、はたまたシステム障害による遊戯の中断、カードディーラーのイカサマが発覚などトラブルの規模は大小さまざまではあったが、そこを爆発寸前の客たちが敏感に反応した。
運営側としては自己のトラブル対応に加え、客への説明や損失補填で手が回らず、その対応の悪さから暴徒と化した客が更なるトラブルを生み出す。そしてその暴徒を機械兵が力ずくで鎮圧しようとしたため、混乱はさらに手の付けられないものに発展していったのだった。
もちろんその混乱に乗じて暴れまくったプリン一派の工作も功を奏したのは言うまでもない。
ヌンペッチやチョビンは機械兵の制御装置を破壊して暴走を誘発させて回ったし、グリンはお得意のスプラッシュで電気系統のエラーを引き起こした。
「ああ!オラ、キラキラしてるダス・・・!気持ちイイ」
恍惚とした表情を浮かべたグリンが何に対して気持ちがいいのか、分からないし知りたくもないが、その効果は決して小さなものではなかったし、なにより出番の少ない彼のモチベーションもこれで回復されたに違いない。
頭脳派のアダマンとヨンズなどは、言葉巧みに客たちの感情を煽り、集団心理を利用して暴動の火種をバラまいた。そして賑やかしのミス・セプテンバー、アカハナにいたっては、もうそこにいるだけでトラブルの種となっており、トラブルメイカーとしての面目躍如たる大活躍だ。
「なんか扱いが雑なんですけど!?」(ミス・セプテンバー:談)
あちらこちらで巻き起こる暴動を傍目にスケさんが告げる。
「そろそろ頃合いじゃない?プリン」
「分かっているのです」
パンナコッタ・ヘブンのいたるところに設置されているモニターには、緊急事態・避難勧告のメッセージが表示されているなか混乱は無差別に飛び火して、パンナコッタ・ヘブンは客も機械兵も収拾がつかないほどの惨状に陥っていた。
行動を起こすなら今をおいて他にない。
プリンはその場を後にして、セントラルタワーへ向かって走り出すのであった。
更新が遅れててゴメンチャイ。
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