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第29幕 ハンマープライス


「(こっそり尾行で探偵気分なのです)」


偶然ペニーを見つけたプリンは皆に連絡するのを諦めて、背後から彼女の動向を探るとともに隙あらば捕まえるチャンスを伺うという道を選んだのだった。

しかし一体どこに行くつもりなのかペニーはフラフラと会場を移動していたが、どうやらさっきまでプリンたちがいた客席の方とは反対側へ向かって歩いている。人の気配がまるでない通路を進み、とある部屋の前で立ち止まりそのまま中へと入っていく。

しかしこの場所は・・・、プリンの推測が正しければ更なる事件の予感がプンプンしていた。


周囲の状況に気を配りつつ、プリンも部屋の中に侵入する。

「(もしアタチの推理が正しければ、人に見られるのは面倒なのです)」

だが幸いなことに室内に他の人の気配は感じられない。

そして改めて部屋の中を見渡してプリンは確信した。

「(やはりアタチの思った通りなのです!)」

そこは客席の反対側というか裏にあたり、メナードが進行を務めるステージへとつながるその場所は、つまりオークションで競売にかけられる商品を準備しておく部屋だったのだ。


「(これって妖精さんを救出して、ペニーに罪をなすりつければいいんじゃないですか?)」

そんな悪魔のささやきが聞こえてくるなか、プリンは足元の障害物に躓いた。

こんなところに何が落ちているのかと視線を足元にスライドさせて、プリンは自分の不注意さを後悔することになる。

「(しまったなのです!)」

足元に転がっているのは、意識を失って倒れている人たちだった。

見ると数人のオークション関係者と思わしき人たちが急な襲撃を受けたように、いたるところでバラバラに倒れ込んでいたのだ。


プシュッ


その時、瞬時にペニーの襲撃を警戒して頭を上げたプリンの顔に、何かが吹き付けられた。

「こっ、これは・・・」

「チョロチョロと目障りなのよ。そこで大人しく眠ってなさい」

残念なことに、あっ!と思った時にはすでに手遅れで、薄れゆく意識のなかニヤリと不敵な笑みを浮かべるペニーの姿が、プリンのまぶたに焼き付けられるのであった。



その頃、オ-クション会場ではー

「なあ、連れの嬢ちゃん帰りが遅くないか?」

「きっとお花畑に大蛇のようなヤツが出たんだよ」

「なんじゃそりゃ?」

スケさんの答えにアカハナは混乱が深まるばかりであったが、会場の雰囲気がざわついて次の商品の競売が始まりそうな空気に意識を持っていかれた。

「それよりも、始まりそうだよ!チョビンさん準備はいい?」

スケさんの声掛けに紳士風姿のチョビンは無言でうなずく。


「皆さま、お待たせ致しました。それでは次の商品に移らせて頂きます。続いてはロットナンバー2543番、皆さん待望"フェアリーこと妖精"の登場です!」

「ちょっと何がロットナンバーよ!私に番号なんか勝手につけてんじゃないわよ!」

こうなるであろうことは半分予想できていたとはいえ、黙っていない商品に客席からはちょっと引いた空気が流れてくる。

「ミス・セプテンバーがひとりで元気にしているか、彼女の心情をおもんぱかってちょっと心配もしてたのだけど、・・・どうやら無用だったようだね」

スケさんの言葉に皆が無言で頷く。

「あっ!アンタたち、何そんなトコに座ってんのよ!遠くから眺めてないで、早く助けなさいよね!」

一行を見つけたミス・セプテンバーは囚われた籠のなかで騒ぎ立ててこれでもかと暴れているが、あまりの恥ずかしさにスケさんたちは他人の振りをすることに決め込んだ。だって元気そうなんだもん大丈夫でしょというのが全員一致の言い分である。


「えーっ、ご覧の通りイキがいいのは保証済みということで・・・。それでは、皆さま500ゴールドからお願いしますっ!」

メナードのこの言葉にミス・セプテンバーの眉毛がピクリと動く。

「ちょっと500って安すぎでしょ!私を何だと思ってんのよ、いい加減にしなさいよ!」

「1000ゴールド!」

「こっちは2000だ!」

「う~ん・・・、2500!」

しかし小刻みではあるもののミス・セプテンバーの値は徐々につり上がっていく。

「フッフーン、その調子よ!アンタたち、もっと気張んなさい!」

彼女は自分の置かれた状況を理解できているのだろうか、自らの値が跳ねるたびに上機嫌になっていくが、それは見知らぬ誰かに買われていくという事なのに。そもそも値が上がりすぎたら、助けるコッチの負担が大きくなるじゃないかとスケさんは思ったが、当の本人は涼しい顔で「上がれ上がれ!もっと上がれ!」などと叫んでいる。

「そろそろボクたちも、参加の頃合いじゃない?」

スケさんの言葉に、チョビンがそうじゃなと腰を上げかけた。


その時、場内に爽やかな風が吹く。

「僕たちは1万出します!」

見ると若い冒険者グループが先に立ち上がっていた。どうやら5人組のようだが、それぞれがタイプの違うイケメン揃い。まあ若干荒削りではあるが、嫌味なくらいに笑顔の素敵な若人たちである。

「ハンマープライス!決定よ、決定。そこに行くわ!」

突然発せられたその声は、ご想像のとおりミス・セプテンバーのものだった。そういう意味では、絶対に期待を裏切らない、それがミス・セプテンバーなのだから仕方がない。

「商品は勝手に発言しないように、お願いします」

「ウッサイわね!外野は黙ってなさい!」

いや、アナタの方が外野なんですけど、というメナードの言い分は彼女の勢いに押し流された。


「アンタらの連れは一体どうなっとるんじゃ!?」

「いやまあ、そういうオチは薄々想像してたけどね」

呆れ顔のスケさんだったが、当の妖精はイキイキしていたのだった。


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