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第28幕 お花畑でつかまえて


ザワザワ・・・


白いタキシード姿のチョビンに手を引かれたプリンがオークション会場に入ると、あからさまに場内が一瞬ざわつく。

パツンパツンにはち切れそうなドレスに身を包んだ巨体のご婦人、ヤングでエグゼクティブ感漂ういかにも切れ者そうな男性、はたまた闇を抱えていそうな気持ち悪い風貌の男や小綺麗な格好をした老人夫婦。会場に集まっている客層には一貫性がなく様々であったが、それぞれが得体の知れないプリンたち一行を値踏みするような視線であったり、けったいな一行だと言わんがばかりに好奇の視線が集まっている。というわけで、しばらく場内の関心はプリンたちに釘付けだった。


「なにやらエラく注目されてるダス」

「フン、上等なのです!」

だが鼻息荒いプリンは集まる視線をまるで相手にしていない様子で、それが妙に得体の知れない大物感を醸し出していた。


「お集りの紳士淑女の皆様方、ご静粛に願います!」

まもなくメナードの声が高らかに響き、オークションの開始を告げる。


扇状になった客席の中心にあるステージの裏手から、布で覆われた箱らしき物が運ばれてくると、メナードがそれを受け取り中央のテーブルに置いた。客たちの注目が集まるなか、もったいぶった仕草でその布を取り払うと黒ずんだ小さな物体が姿を現す。

「お待たせ致しました!それでは、ロットナンバー2536番"人魚の肉"です!」

それと同時に場内からおお~っと歓声が漏れる。

「皆さんご存知の通り、人魚の肉には食べた者に不老不死の力が宿ると言います。えっ、なになに?お年を召された方は今更この年齢のまま不老不死になっても仕方がない?ご心配召されるなかれ、この肉には若返りの効果もあると言います。すべての年齢層に魅力のあるこの商品、5千ゴールドからスタートさせて頂きますっ!」

メナードがそう告げたと同時に2万ゴールド、3万ゴールドと場内から声が響いてきた。


「うわっ、あんな得体の知れないものをホントに食べるつもりなのかな?」

スケさんがドン引きした様子でつぶやく。

「絶対にお金を使って腹を壊すってオチだよ」

「お高い下剤なのです」

だがスケさんとプリンのヤレヤレといった態度をみて、アカハナが口をはさんできた。

「それがな、このオークションでは絶妙なバランスで本物が紛れているから客が逃げないんじゃ」

「ホントに?」

「まあ本当かどうか知らんが、噂では本物と偽物の比率が6:4と言われとる。半分以上が本物だから夢があるし、四割は偽物だと公言しとるからニセモノを掴まされたとしても、クレームをつけてくる者がそれほど多くないって言うんだから不思議よな」

「四割ニセモノだったら信用できないでしょ!?」

「それが十割本物を謳うより、偽物が混じっている方が人は興味を惹かれるらしい」

「ふーん・・・。でもそういう人たちってのは、お金に対する意識が違うんだろうね」

「貧乏人には理解できない世界じゃな」

そんなこんなで話をしているうちに"人魚の肉"は35万ゴールドで競り落とされた。

本物かどうかも分からない物に35万ゴールド。それが高いのか安いのかなんてスケさんには判断のしようがなかったが、競り落とした人が幸せそうな表情をしているのを見て、でもまあその人が幸せならそれでいいんじゃないかという気分になってきた。


「えーっ、続きましては・・・」

まずは一つ目の商品が競り落とされて、すぐさま次の商品の競売が始まりそうなところで、スケさんは隣に座ったプリンの異変に気付く。

「どうしたんだい?」

「妖精さんの番までには、まだ時間があるですか?」

「うん。プログラムでは最後の方だから、まだ大丈夫じゃないかな。なんで?」

「ちょっと、お花摘みに」

「ああ、早く行ってきなよ」

しかしスケさんがそう伝えた時には、すでにプリンの姿は消えていた。


ーしばらくしてー

「ふ~っ・・・、危うくアタチまでスプラシュになるところだったのです」

トイレから清々しい表情で出てきたプリンは、オークションの会場に戻ろうと急ぐ。

というのもトイレの場所がわからなくて、あちこち探し歩いているうちにエントランスの方まで来てしまっていたからだ。会場では競売の真っ最中ということもあり、静かなエントランスには人の気配があまりなかった。

だから見覚えのある女が会場に向かって歩いていくのに気付いたのも偶然ではなかった。忘れもしないプリンとスケさんをダマして逃げたペニー、彼女は性懲りもなくまた受付嬢のコスプレ姿で悠々とプリンの前方を歩いていたのである。

急いで皆に報告するべきか?

プリンは一瞬迷ったが、ペニーに気付かれずに彼女の背後をキープできれば、彼女を捕まえるときにこれほどチャンスなことはない。そして賢明な仲間たちが自分が戻ってこないことにおかしいと気付き、ペニーとその背後にいる自分の存在に気付いてくれたら、一気に畳みかけて捕まえられるではないか。

このまま尾行しかない!

幸い出すモノも出してスッキリしているので不安要素も皆無だ。プリンはペニーを背後からマークすることに決めた。


ーその頃ー

アカハナからプリンの不在を問われた賢明なスケさんは答える。

「さあ、大きい方なんじゃないの?」


何かが起きそうな予感だけは大きくなっていくのであった。


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