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第11幕 麗しき石化の君よ


「ちょっと、もっとよく探しなさいよね!」

立ち並ぶ石灯籠で照らされたストリートにミス・セプテンバーの声が響く。


「だめダス・・・、それらしい人はどこにも見当たらないダスよ」

「あーっ、もう!どいつもこいつも使えないわね!」

「そうは言ってもなぁ、これだけ探しても見つからんということは、お前の見立てが間違っておるのではないのか?」

「ウッサイわね、ハゲチョビン!そんな訳ないでしょ!」

「ハゲって言うな!」


キーっとヒステリックを起こしたミス・セプテンバーが筋骨隆々のチョビンと大立ち回りを繰り広げるなか、ひとり冷静なヨンズが思案を巡らせていた。

「でもホントにおかしいですよ。これだけの協力者にも彦ブー探しを手伝ってもらっているというのに、手がかりの一つも出てこないというのは。ミス・セプテンバーを否定するわけではないのですが、作戦の見直しは必要なのかもしれませんね」

「う~ん・・・。ヨンズ君がそう言うんだったら、そうなのかな」

「!?」


ヨンズたちはあれから、心の支配から解放した人たちの助けも借りてキーパーソンである彦ブーを探し続けていたのだが、目ぼしい情報をなにも得られずにいたのだった。苛立ちを隠せないミス・セプテンバーがチョビンやグリンに八つ当たりするなか、ヨンズの言葉にはしおらしく対応するその態度はチョビンたちに衝撃を与えた。

「ワシらとは態度が違いすぎるだろ」

「待遇の改善を断固要求するダス!」

「ダスダスやかましい!アンタは股間からスプラッシュでも出しときなさい!」

「・・・おかしいダス、目からとめどなく水があふれ出てくるダス」

「だいたい物語だからって、狙い通り思惑に沿って話が進むってのがヤラセ感満載なのよ!リアル感あふれるファンタジー路線が、このシリーズのコンセプトだって、どっかの誰かが言ってたんだからね!だからこれがガチなリアルとファンタジーの融合ってやつで結果オーライなのよ」

「・・・ダメじゃ。完全に開き直っておるし、もう何を言っているのか訳が分からん」

「・・・ダス」

「フンだ、まったくもう!」


カラン・・・、カランコロン


そのとき寸劇を繰り広げていた一同のちかくで不思議な音色が響く。ふとそれが気になってミス・セプテンバーがその方向へ目をやると、人でごった返すストリートのなか着物をなびかせて厚底の木製サンダル"ポックリ"で駆け抜ける少女の姿があった。

「か、可愛ぁいい・・・」



それから間もなくしてー

「てぇへんだぁ、てぇへんなのです!」

慌てた様子で坂道を駆け下りてくるプリンを、ヨンズたちが出迎える。


「おぉ!ハゲッチのじっちゃんとスプラッシュが生き返っているのです!」

「勝手に人を殺すな!」

「ダス!」

「それよりも、どうしたのですか?そんなに血相を変えて」

「そうだったのです!じつはカクカクシカジカ・・・」

「そうだったんですね、実はこちらもカクカクシカジカで」

互いにこれまでのいきさつを報告しあうプリンとヨンズ。

「なんだか・・・ハーイ、マイク。こちらはブレンダ。ブレンダ、こちらはマイク。みたいなノリでカクカクシカジカが飛び交っているのダス」

「グリンはうるさいのです!あっちでスプラッシュでもしているのです」

「・・・おかしいのダス。またも目から水が溢れてくるダス」


「そうですか、オツ姫が逃げたのですか。でもこれはチャンスなのかもしれませんね、だってそのオツ姫を見張っていれば、彦ブーが向こうからやってくるかもしれませんから。もしそうでなくても二人が何らかの形で接触する可能性は高いですし」

「おぉ~、その手があったのです!」

「まあ、ミス・セプテンバーには悪いですけど、一部作戦の変更ってことで・・・。って、あれ?彼女はどこに?」

皆が辺りを探すがそこにミス・セプテンバーの姿はなかった。

「ああ、ドSニック妖精の姉さんならさっき着物姿の女の子を追いかけて、あっちの方向に飛んでいったダスよ」

「茶色の髪が肩くらい伸びてて、赤い着物の・・・ですか?」

「そうそう、よく知ってるダスね」

「それがオツ姫なのです!」



カランカラン・・・、カランコロン

「もう、一体どこまで行くつもりなのよ」

どこかへ向かって走るオツ姫を尾行して、ヨンズたちの元からかなり離れたところまで来てしまったミス・セプテンバーがつぶやく。


オツ姫を追いかけるうち、次第に人混みは消え人気のない場所へと誘導されているようで、戻るべきだろうかと不安を覚え始めるミス・セプテンバーだったのだが、そうこうするうちに目的地に到着したようだった。

そこはパンナコッタ・ワールドの敷地を見渡せる小高い丘の上の広場。

天気のいい昼間には、お弁当でも広げてくつろぐには丁度いい場所であったが、さすがに日も暮れたこの時間では誰もいない場所にポツンと不自然な石の彫像が立っているだけだった。


「そこに居るんでしょ、出てきなさいよぉ」

突如発せられたオツ姫の言葉に、一瞬ミス・セプテンバーは最初それが自分に向けられたものなのかどうか判断に迷った。しかし周囲を見渡しても、自分以外にそれらしい人の気配は感じられないのでオツ姫の様子をうかがいながら物陰からそっと顔をのぞかせる。

「釣れたのは妖精一匹だけかぁ・・・、まあいいや」

「え、ナニ!?やっぱりコレって罠だったの?」

慌てて逃げようとするミス・セプテンバーをオツ姫が呼び止める。

「心配しなくていいよ、罠じゃないから」

「罠じゃないなら、何でこんなとこに私をおびき寄せるようなマネしたのよ!」

「頼みたいことがあるから」

「?」

「ってゆっかぁ、アナタあの魔女っ子たちの仲間なんでしょ。だったら、あたしの彦ブーを助けてくれない?」

そう言いながらオツ姫が指差した先にあったのは、ポツンと突っ立ったあの彫像だった。

よく見るとその彫像は、今にも動きだしそうなほどリアルな石像であることに気付く。


「じゃ、そろそろ時間だから。あとは彦ブーにでも聞いてよね」

「えっ?」

オツ姫がそう言ったかと思うと、石像が徐々に色づき始めていく。そしてその姿はやがて血色のいい男の子になっていった。

「ちょっと、これって一体どういう事なの!?」

そして突然の出来事にオツ姫を問い詰めようと振り返ったミス・セプテンバーの前に現れたのは、男の子と入れ替わるように石と化してしまったオツ姫の姿なのであった・・・。



想像以上に手こずりました。

一つ言えるのは・・・、キャラが勝手に動き出しても泳がせすぎるのはキケンです!(笑)

それじゃまた。


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