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48. お話して貰いましょう

少し短いです。

次話からルイ君のお話になります。

 医官から治療を受けているルシェール様は、始終無言でいました。伏し目がちにしたその様子からは、いろんな思いが逡巡しているようで、迂闊に声をお掛けすることは出来ません。

 私はじっとご様子だけを見守っています。シリウス様は私達を医務室に送って下さると、再び中庭に戻られました。王宮内のことですから、ご自身の所属する宮廷近衛騎士団への指示に行かれました。非公式とはいえ、隣国の王族関係者が負傷してしまいましたもの・・・。責任は重大です。とても心配ですわ。


「奥様、治療が終わりました」


 奥様、と呼ばれて我に返りました。ルシェール様は肩に包帯を巻かれて腕を吊った状態です。短剣でつけられた傷は何針か縫われたとのことですが、神経などには問題無いとのことだったのでほっとしました。白いドレスシャツには血が付いていて肩に掛けるのも憚られます。何か替わりに着られる物をと思っていると、扉をノックする音がしました。


「カルバーン・ハイドと申します。入室のご許可を」


 ルシェール様は私に向かって頷かれました。カルバーン様の事を知っているのはここでは私だけです。私は扉の前まで行くと外に向かって声を掛けました。


「どうぞ、お入りになって下さい」


 扉を開けると、カルバーン様が静かに入ってらっしゃいました。彼は椅子に掛けているルシェール様を見ると、わずかに眉根を寄せて痛ましそうな表情をされました。


「大丈夫か?」


「ああ。大したことは無い。少し縫ったが、これで血も止まるし、傷も早く塞がる」


「・・・良かった」


 カルバーン様が、ルシェール様の頭を優しく撫でました。その表情から本当に心配していたようです。何となくですが、カルバーン様のルシェール様を見る瞳が()()()()()のように見えました。無茶をした弟を心配する兄の様な。


「洋服、駄目になってしまっただろう?とりあえず着る物を持ってきた。手伝うから着替えよう」


「ああ。すまない」


 カルバーン様が、血の付いたドレスシャツを脱がせて新しいシャツを肩に掛けます。右肩には包帯が巻かれて、負担を掛けないために腕を吊った状態なのでシャツもきちんとは着られません。そして臙脂の上着にも穴が開いてしまっているので、緩めのガウンを腕を通さず羽織りました。


「リリちゃん。この着替え、お宅の旦那さんから貰ったの。ありがとうね」


 手伝いを終えたカルバーン様が、ニッコリ微笑みながら私にお声を掛けてきました。随分、フレンドリーですわね。それを聞いていたルシェール様が私に向かって頭を下げられました。


「そうなのですか。リリ様、ありがとうございます」


「そんな、ルシェール様、頭をお上げください。私は何もしていませんし、シリウス様もお仕事ですもの。お気になさらないで良いと思いますわ」


 まだ少し顔色の悪いルシェール様は、少し微笑むと小さな声で(それでもです)とおっしゃいました。カルバーン様が手を貸して彼を立たせると、医官の一人が熱冷ましと痛み止め、消毒薬の入った包みを渡してきました。


「少し縫っていますから、今夜あたり熱が出るかもしれません。それから、薬の使い方は中の紙に書いてありますので読んで下さい」


 カルバーン様が大事そうに包みを受け取りました。


 そして、私達は様子を見に来られたレブランド様と一緒に、アレッド王太子様の執務室に向かったのでした。






 アレッド王太子様の執務室には、アレッド王太子様、クラウスお兄様、セーヴル様、オーキッド様、ルシェール様、カルバーン様。そして、シリウス様と私がいます。クラウスお兄様は、私の顔を見ると驚いたような顔をされましたが、シリウス様が頷いて下さったので同席できることになりました。お兄様は心配性ですから。

 レブランド様は皆にお茶を配ると、そっとお部屋から出て行かれました。


 重い沈黙を破ったのは、やはりこの方。オーキッド様でした。


「ああ。まさか王宮内にまで入り込んでるとは思わなかったね?」


「オーキッド殿、この際すべて話してくれ。仮にも王妃のお茶会で刃傷沙汰が起きたのだ。まして、隣国の王族の方なら国際問題になる」


 アレッド殿下は、いつになく厳しめな口調でおっしゃいました。


「そうだよね。リリちゃんにも迷惑掛けちゃったし。これからの事を思うと、皆に知って貰った方がいいかな?どう?」


 オーキッド様がルシェール様に目を向けました。

 ルシェール様は意を決したように口を開きました。




「私からお話させて下さい」



「私の父は、トウレンブルク王国の現国王の王弟でした。ただし、()ですが」





「私の父は、兄王に対する謀反の疑いをかけられて亡くなりました。5年前の事です」


 私は、時折暗い影が落ちるルシェール様の瞳の意味を知ることになりました。

誤字脱字は気づき次第修正します。

面白かった、続きが気になると思って頂けましたら、

評価ボタンを押して下さると、励みになります。

何となく、終わりが見えてきました。

最終話まで頑張れるように応援お願いします。


ブックマークしてくださった皆様もありがとうございます。

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