29. 宮廷近衛騎士は誤解される?
少し短いですが、区切りが良いので今日はここまでです。
シリウス様とクラウスお兄様を部屋から追い出す様に退席させた後、扉を後ろ手で閉めながら涙が零れそうになりました。
「何も、おっしゃって下さらなかった・・・」
そんなことは無いと。例え、お兄様に言われたからと言っても、ご自分の意志で求婚して下さったと強く言って下されば良いのに。何もお兄様と顔を見合わせて、挙句に無言で出て行ってしまうなんて!一体お二人はどんなお話をしたのでしょう。シリウス様だってあんなに優しくして下さっていたのに、あれらは全てお兄様に頼まれたからですか?公爵ご夫妻や陛下に王妃様、アレッド王太子様にもどんなお気持ちでいらしたのでしょう。
「ちょっとでも、浮かれていた私が馬鹿みたいです」
とは言っても、すでに結婚証明書は受理されていますし、明後日の朝にはもう正真正銘の夫婦として扱われます。シリウス様は良いのでしょうか?本当は後悔しているのではないでしょうか?キュッと心臓の辺りが痛みました。が、
「でも、もう遅いですわね。陛下にも祝福された結婚ですもの」
若干開き直りのようにそう思ったら、この結婚はシリウス様にマイナスはあっても、私にはダブルスコアのプラスしかないことに改めて気づきました。そう考えると、実はシリウス様が被害者のように思えてきました。
もしかしたら、王宮からの誘拐犯を捕獲できなかったペナルティーとか?宮廷近衛騎士団の不手際を突かれて責任取れよ的な?そんなことがあったのでしょうか?あり得るかもしれません。
(駄目ですわ。思っている以上に深い理由があるのかもしれません。シリウス様にちゃんと伺わないといけないですわ)
私はそう思うと、二人を追って玄関まで急ぎます。シリウス様、まだお帰りにならないで!!
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「・・・お前の妹は、千里眼か何かなのか?」
シリウスとクラウスの二人は、リリの部屋から追い立てられて玄関脇にあるシガールームに入った。シリウスは普段から喫煙はしないが、クラウスに付き合って入室したのだった。クラウスは途中バネットに言いつけると、酒と酒肴を持ってくるように命じた。
「そんな訳無かろう。ただ、リリは勘が鋭いのだ。変な所で勘が働くというか、気が付くというか・・・」
クラウスは、葉巻を燻らせると疲れたように言った。
「しかし、あそこで無言になってしまったのは不味かった。まるで、あの時に見ていたかのような問いただし方だったので。つい感心してしまった」
バネットから琥珀色のグラスを受け取ると、シリウスは一口飲んで両手に握り締めた。氷が冷たくて気持ちが良かった。高まっていた気持ちが落ち着いてくる感じがした。
「しかし、このままでは、私はお前に頼まれたから求婚したことになってしまう。私は自分の意志で結婚したいと思ったから求婚したし、彼女を守りたかったから急いで結婚した。それを疑われたままでいるのは不本意だ。やはり、今から行って」
「やめておけ」
「なぜだ?」
「リリが自己消化するまで待て。私達のこともちゃんと考えているはずだ。お前の立場や気持ちも全部ひっくるめて色々考えているはずだ」
「そんな悠長な。やはり、いまから彼女の所に行ってくる」
シリウスはソファから立ち上がりグラスをサイドテーブルに置いた。
「まあ、もう少し待っ!!!ああっ!!」
葉巻から灰が落ちかけたのを、クラウスが咄嗟に掌で受けてしまった。驚いたシリウスはクラウスの腕を引いて掌を開かせると眉を顰めた。うっすらと火傷になっている。
「ああ、赤くなっている。とりあえず、これで間に合わせておけ」
そして、グラスの氷を取り出すとクラウスの掌を開かせて握らせた。まったくコイツはいつもは冷静な癖にちょっとした行動が雑というか、ぼっとしているところがあった。幼いころからの付き合いだったからよく知っているし、対応にも慣れたものだ。
自分よりも少し低い身長のせいで、クラウスの瞳が少し上向きに自分を見ている。良く似た兄妹だと思う。顔の造りが良く似ているのだと思った。
リリと良く似た緑の瞳がすぐ近くにあった。モノクルの奥にある瞳に、リリの様な青い矢車菊が見えるかと、思わず顔を近づけて間近に覗き込んだ。
「何を、していらっしゃるのですか?」
シガールームの扉を開けてこちらを見ているリリがいた。
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「お二人は、何をされているのですか?」
シガールームにお二人がいらっしゃるとバネットから教えて貰って来てみれば、お兄様の小さな悲鳴?が聞こえました。何事と思って扉を開けると・・・・
シリウス様がお兄様の手を握って、超至近距離で見つめ合っているじゃないですか!?何ですの?この場面は。
「シリウス様・・・まさか、お兄様を・・・・」
も・し・か・し・て、妖精姫である私の婚約者は超ハイスペックで溺愛系ですが、本当はお兄様に気があるのではなくって?
誤字脱字は気づき次第修正します。
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