30. 宮廷近衛騎士はお兄様と相思相愛?
もしかして、シリウス様はお兄様がお好きなのでしょうか?目の前の二人の様子は只ならぬ関係に・・・見えなくも無いです。というより、お兄様の手を握り締めたシリウス様が、く、口付けをしそうな感じでした。あんなに近くで見つめ合うなんて口付けでもしない限りありませんわ!
私と見つめ合っても、あの近さはありませんでしたもの。
「・・・・・」
もし、シリウス様の本心が、お兄様にあるのだったら私はどうしたらいいのでしょうか。二人の顔を見ながらこれ以上聞くのが怖くなってしまいました。
「良かった。来てくれたのですね。リリ、貴方に私の本当の気持ちを知って貰いたいのです。聞いてくれますか?」
「本当の気持ち?」
「そうです。貴方がどう思うとも、私の気持ちは変わらないのです」
今日一日、ずっと一緒にいてお話もしました。優しくエスコートしてくれて皆様にご紹介して下さり、時にはノロケるような言葉もおっしゃいましたけど・・・・変わらない本当の気持ちというのがあるのですね?
(・・・私がどう思うかは関係ない・・・のですか・・・)
「貴方に、はっきりと言っておかねばなりません」
シリウス様が、私にの方に手を伸ばして近づいてきます。はっきりと言われたら、私はどうしたらいいのでしょう。お兄様を見れば、心配そうな顔でシリウス様を見ています。
「リリ、私は・・・「聞きたくありません!!」」
言いかけたシリウス様の言葉を遮って、大きな声で言いました。
「これ以上は、聞きたくありません。でも、シリウス様のお気持ちは解っています!」
そう叩きつけるように言い放つと、シガールームの扉を乱暴に閉めて自分の寝室へと走りました。
改めて、シリウス様のお気持ちなんて聞いてしまったら、これから私はどう振る舞えばいいのでしょうか。お兄様への気持ちを押し留めて、その妹と結婚するなんてどんな神経なのでしょう。
もしかして、お兄様と相思相愛なのでしょうか?だから、お兄様はシリウス様に私と結婚するように頼んだのかしら?お二人の関係を公にするには色々と問題がありますから、カモフラージュで私と偽装結婚させたかったのでしょうか。それならば納得できます。家族も皆さんも、例え仮初の結婚だとしても慶事と祝って下さいます。
「待ってください!リリ!ちゃんと話を聞いてください!!」
シリウス様の声が追いかけてきます。でも、今捕まって話なんて聞きたくないのです。きちんと話を聞くために追い掛けたのに、あんな場面を見せられてしまったら、もうどうでも良くなってしまいました。
滑り込むように寝室の扉を開けて入るとすぐに鍵を掛けました。深呼吸をして扉に寄り掛かると、シリウス様の声が扉の外から聞こえて、強くドンドンと叩く音もします。
もう嫌です。もう何も聞きたくないし、何も考えたくありません。そう思うと私はベッドにダイブして布団を被りました。もう、放っておいて下さい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
リリの寝室の前。
「開けて下さい。リリ、話を聞いてください!」
どうしてこうなったのか解らない。リリはシガールームに来てくれたのだ。多分、クラウスの言った通りに自己消化して、改めて話をしに来てくれたのだ。と思う。しかし、自分達を見た途端に態度が豹変してしまった。何が原因なのだ?彼女が怒る理由が解らない。
彼女は、私の気持ちは解っていると言ったが、とてもその結果でこの状況になるとは思えない。
「リリ、ここを開けて下さい」
聞こえているはずなのに、扉は固く締められて鍵まで掛けられてる。
「今日はもう諦めた方が良いのではないか?」
そうはいくか!クラウスの気の抜けたような言葉に反論する。そして、お前の言うことなど聞かずにすぐに話に行けば良かったと心の中で思った。とにかく、彼女が誤解をしているのは判る。そうでなければ、こんな状況に陥ることは無いはずだ。なぜなら、こんなことになる前は、ぎこちないながらも二人は幸せな気持ちで一緒にいたはずだから。
「埒があかん。クラウス、この扉、壊していいか?」
「はっ!?壊す?」
「話ができないと状況は悪化するばかりだ。とにかく、顔を見て話をする」
騒ぎに気付いた伯爵夫妻も心配そうに部屋の前まできた。
「伯爵。申し訳ございませんが、この扉を開けさせて頂きます。」
伯爵が返事をする前に、シリウスは近くにあったサイドテーブルを持ち上げて扉に叩きつけると、脚で思い切り蹴り破った。
扉の鍵が壊れ把手が吹っ飛び、厚い扉はギッシっと軋むとゆっくりと開いた。
「開きましたね。二人だけで話をさせて下さい。宜しいですね」
顔色一つ変えない表情のままそう言うと、部屋の中に入って行った。
クラウスは思った。あいつ相当慌てているなと。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
物凄い音がしました。まるで、雷が落ちたような轟音です。ベッドで布団に包まっていた私は、思わず耳を塞ぎ、身を竦めました。
「な、なに?何が起きたの?」
布団の中で丸くなって身じろぎできずに固まっていました。
すると、
「リリ」
凄い近くでシリウス様の声がします。う・そ!!
「リリ、貴方が何を誤解しているのか判りませんが、ちゃんと話を聞いて下さい。お願いです」
真剣な声です。布団の上から私の存在を確かめるように揺さぶります。懇願するその言葉に、包まっていた布団を緩めて片目を出すと、バッチとシリウス様のサファイアブルーの瞳に捕まりました。
「顔を見るのが嫌なら、そのままでもいいです。とにかく私の話を聞いて下さい」
「結構です!!シリウス様のお気持ちは分かっていますから。大丈夫ですわ」
「何が大丈夫なのですか?ちっとも大丈夫なようには見えませんよ」
「ですから!シリウス様の本心を公にするつもりはありませんから。ご安心なさって下さい!」
「!?」
もう、トボケなくても良いのです。言い合っているうちに、だんだん熱くなってきました布団のガードもいつまでもつかしら?と思ったところで、いきなりシリウス様の手が布団を強く引っ張りました。
「きゃあ!」
クルリと布団を剥かれた私は、仰向けにされて顔の両脇に手を付かれました。シリウス様にあっさりと固定されてしまったのです。ベッドで身動きができない体勢というのは・・・。。
(ひえええっつ! 近い!近い!近いー!!)
「話を聞いて下さい。貴方は聡いけれど、思い込みが激しいと言われませんか?話を聞いてくれなければずっとこのままでいます。私は構いませんが、貴方はそれで良いですか?」
この体勢は危険です。シリウス様は平気かもしれませんが、私にとっては心臓が爆発しそうな体勢です。
なのに、その微笑みは・・・・黒い?
「と、と、とにかく、ど、どいてクダサイ」
「逃げませんか?話を聞いてくれますか?」
「ワ、ワカリマシタカラ!離れて下さい!」
(そうですか。残念ですね)と小さく耳元でおっしゃると、右手で私の頬をするりと撫でて姿勢を正しました。そして、私を見下ろすと今度は優しい微笑みを浮かべました。
(こ、怖い・・・で・す)
ベッドヘッドを背に、枕を重ねて寄り掛かるように座り直しました。そして、枕元に置いていた熊の縫いぐるみの≪マートン≫を胸の前でぎゅーっと抱きしめました。絶妙な柔らかさに少し気持ち落ち着いてきます。彼は昔から頼れる存在で、私の秘密や大事なことを守ってくれる騎士でした。
まぁ、本物の騎士様は、ベッドサイドに椅子を寄せると優雅に腰を掛けましたけど。
誤字脱字は気づき次第修正します。
面白かった、続きが気になると思って頂けましたら、
評価ボタンを押して頂けると励みになります。
ブックマークしてくださった皆様もありがとうございます。




