27. 宮廷近衛騎士は事実を伝える?
サブタイトル、いきなり誤字してましたので修正しました。
恥ずかしー。
王宮の陛下がいらっしゃる謁見室までは、アレッド王太子様の侍従であるレブランド様が案内をして下さいました。陛下にお目にかかるのは、デヴュタントでご挨拶した以来ですので2年振りになります。王妃様には、度々お茶会にお招き頂いているのでそこまでお久し振りですということは在りません。でも、結婚のご挨拶というのはいささか・・・
「緊張していますか?」
していますとも。王宮に来るのも、陛下にお会いするのも2年振りですから!
「はい。それはもう・・・でも、シリウス様がご一緒なので大丈夫ですわ」
言った後で思わず後悔しました。だって、蕩ける様な笑みを浮かべて私の手に口付けされたからです。そして、(嬉しいことを言って下さる。)なんておっしゃるとそのまま手を繋いで廊下を歩きます。でもね、お待ちください!レブランド様が生ぬる~い目線を送ってきてますから!
「よく来た。シリウス、そしてリリ嬢よ。久し振りであるな」
2年振りの陛下は、私達がご挨拶をすると、気さくにお声を掛けて下さいました。シリウス様が結婚証明書をレブランド様にお渡しすると、銀盆に載せて陛下の手元にお渡して下さいました。そして陛下はゆっくりと書面を確認し、最後に署名をして下さいました。
「シリウス・スタンフォード、リリ・アンナ・グランデルク、両名の婚姻をここに宣言しよう!」
「「ありがとうございます」」
2人揃って陛下にお礼を申し上げると、王妃様が待っていたとばかりに声を掛けてきました。
「リリちゃんが、シリウスのお嫁さんになってスタンフォード公爵家に嫁いでしまうなんて。そうよね。考えようによっては、一番良い婚姻よね?公爵夫人になっても私のお茶会にはいらしてちょうだい。シリウス、宜しいわよね?」
「ええ。これからもリリを宜しくお願いします」
「おい!もう呼び捨てか?随分早いな?」
アレッド様が、耳ざとくリリ呼びを指摘しました。本当です。さっきまではリリ嬢と呼んでいたのに。
「ええ。もう私の妻ですから。なんの問題もありません。それとも何かありますか?」
シレッと無表情でシリウス様が言い放ちます。物凄く悔しそうな顔でアレッド様が(無い)と一言おっしゃいました。それでも、陛下の隣からシリウス様の所まで降り来られると肩を抱いて(おめでとう!)と祝福して下さいました。
王族へのご挨拶もつつがなく終えてほっとしていると、王妃様から明後日のお茶会にシリウス様もご一緒するように勧められました。私のお誕生日祝いをして下さる予定でしたが、この際結婚のご報告もしてしまいましょう。ということになったのです。親しい王国の貴婦人やご令嬢が参加されますので、正式に発表する前のお披露目には、丁度良いかもしれません。私は、シリウス様を伺うように見上げました。
「ぜひ、お伺いさせて下さい。リリがお世話になっている方々です。皆様にご挨拶させて頂きましょう」
またまたニッコリ極上笑顔で微笑まれると、それを見たアレッド様が苦虫を潰したような顔をされました。
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結局、王族の皆様に引き留められてお茶を頂きながら、結婚式はいつになるとか、ドレスはどうする、とか(主に王妃様から)色々聞かれてしまい、思ったよりも時間が経っていました。さすがに今日は朝早くから準備をして、更にあちこち行ったりしたので疲れてきたような気がします。普段の引き籠り生活の報いでしょうか。
ようやく王宮を後にしたのは、陽が沈みかけた夕方になった頃でした。グランデルクの屋敷まで送って頂くため、馬車にエスコートされるとホッとしたせいかため息が出てしまいました。
「疲れてしまいましたね。あちこちと引っ張りまわしてしまいました。でも、どうしても今日中に貴方と結婚したかったのです」
「なんだか、怒涛の二日間だったので・・・昨日求婚されて、今日はもう結婚したなんて、普通では考えられないですわよね?」
「確かにそうですね。でも、貴方が17歳になって、婚約期間無しに結婚できるようになると思ったときに、他の誰かのものになるかもしれないなんて、耐えられなかったのです」
「・・・(うっ!爆)それですわ。ずっと伺おうと思っていたのです。私達はいつ、どのようにお会いしたのでしょう?残念ながら、私は全く覚えていないのです。本当に申し訳なく思うのですが、なぜ忘れているのか・・・とても大事なことがあったはずですわ。シリウス様とお会いしているのに。屋敷まに来て頂いたのですよね?・・・何があったのでしょう?」
意を決して、一息にしゃべってしまいました。昨日からのモヤモヤはずっと私の中にありました。皆さんが祝福してくださった時、皆さんが二人の結婚に納得をされている時、私とシリウス様に時間の重なりが感じられなかったのです。そう、私には。
「そのことは、グランデルク邸についてからお話ししましょう」
シリウス様は、そのサファイアブルーの瞳で私を見つめてから静かに目を伏せ、そのまま何もおっしゃいませんでした。
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グランデルク伯爵邸。
無言のまま落ち着かない雰囲気を引きづって馬車は我が家に到着しました。ベネットに案内されて、シリウス様と共に家族の待つサロンに向かいます。その間、シリウス様はずっと無言のままですが、私の手をギュッと握ってくれています。緊張した空気が伝わってくるようです。
「グランデルク伯爵夫妻、クラウス。結婚証明書も受理され、陛下へのご報告もつつがなく済みました。これからは、家族としてよろしくお願いします」
「「「おめでとう!二人とも!」」」
シリウス様の報告に、両親とクラウスお兄様は安堵と共に喜びの表情で私達を抱きしめて下さいました。
そして、シリウス様もお誘いして一緒に晩餐を取って頂くようにお願いしました。しかし・・・
「リリ。これから、貴方の疑問にお答えしましょう。伯爵、夫人、クラウス、宜しいですね?」
そう言うと、シリウス様は3人に視線を向けました。クラウスお兄様はぐっと息を飲んで、お母様は不安そうな顔でお父様を見上げました。お父様は・・・
「貴方がそうおっしゃるなら・・・よろしくお願いします」と、低い声で答えました。
家族をサロンに残して、シリウス様と私は、私の部屋で向かい合っています。もう、結婚しましたから、お部屋にお招きしても大丈夫ですよね。
丸テーブルの上には、ハーブティーが淹れられています。ベネットの配慮ですね。落ち着くカモミールの柔らかな香りが漂います。
「まず、貴方が聞きたいことを伺いましょう」
シリウス様はお茶を一口飲んだ後、私の手を優しく握りました。そして、優しく問うてくれました。
私は感じていたモヤモヤと、フラッシュバックする既視感の断片について恐る恐る口を開きました。
そして、驚くことを聞かされたのでした。
「貴方は、2年前のデヴュタントの舞踏会で王宮から誘拐されたのです」
「ええっ!?」
「本当です。デヴュタントで王族への挨拶を終えた後に何者かに誘拐されました。貴方の機転によって馬車で連れ去られたことが分かったのです。その後は、ある屋敷にいたところを無事発見して救出したのです。その時、救出に向かったのが、アレッド殿下、セーヴル、レチル、クラウスと私です。正確には第二騎士団や近衛騎士団、王宮の警備兵もいましたが」
「だ、誰がそんなことを?犯人は誰ですの?」
シリウス様は、小さく頭を振って続けました。
「残念ながら犯人は捉えられていません。囚われていた屋敷は、パルマン辺境伯の屋敷でしたが無断使用されたと被害届が出されています。それに、実行犯たちの形跡が残っていなかったのです。唯一、私達が目撃したのが、銀髪の青年ただ一人だったのです」
「・・・・銀髪の青年?・・・・」
「はい。貴方を直接攫ったのは、多分彼だと思われますが、屋敷で彼を捕らえることは出来ませんでした」
「貴方を救出しようと屋敷に踏み込んだ時には、貴方ただ一人しか残っていませんでした。他には人っ子一人いなかったのです」
何ということでしょう!?誘拐された?銀髪の青年?そんなことになっていたのに、何で何も覚えていないのでしょうか?
「救出した時に、私は初めて貴方にお会いしました。そして貴方を抱いて馬車にお連れしたのです」
「そうだったのですね・・・」
「そして、グランデルク伯爵邸に戻ったその夜に、何者かが屋敷に侵入して、これは想像ですが・・・」
信じられないシリウス様の言葉に、私はクラクラしてきました。本当でしょうか。
「これは想像ですが、多分、催眠術か暗示の様なものを掛けられたため、誘拐されたことを忘れさせられたのではないかと思われます」
「・・・・・」
「俄かに、信じられないことでしょうが、これが事実です」
フラッシュバックしたあの既視感は、本当にあったことなのだと確信しました。
誤字脱字は気が付いたら修正していきます。
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