第9話
それから私達は城下町を楽しんだ。
そして城へと戻ろうとした時、私は森から禍々しい気配を感じた。
......この気配......間違いない。魔物のものだ。
「レヴィ?どうかしたかい?」
「......魔物の気配がする」
「!なんだって?」
「エリオス。森に行くぞ」
そう言うと、私とエリオスは魔物の気配をたどり森の中へと入って行く。
すると、そこには"グリムベア"が現れていた。
「グリムベアか......どうしてこんな森の入り口付近に?普段は深い森の奥に生息しているんじゃ?」
「......本来は温厚で森の守護獣であるはずだ。もしかすると、森に溜まった瘴気に侵食されたか......?」
「早く討伐しなければ町が襲われてしまう!!」
「討伐はよせ。......私が原因を探る」
そして私は目を瞑ると、森中の気配を探索する。
......どうやら、人間界と魔界を隔てている結界に小さな亀裂が生じ、そこから瘴気が漏れ出ているようだ。
「......何者かが結界に亀裂を入れたようだ。」
「......それは人間がやったと言う事か?」
「いや、それは分からない。しかし、この瘴気のせいで、他の魔獣達にも影響を及ぼし、狂暴化する可能性がある」
「だったら、討伐すべきだね」
エリオスはそう言うと、右手を胸に当てる。
「聖剣よ――我の呼びかけに応えよ」
次の瞬間、足元には黄金の魔法陣が展開された。
すると光の粒子が集まり、一振りの白銀の剣が姿を現した。
「......エリオス、それは......?」
「聖剣だよ。勇者である僕にしか扱う事が出来ない」
「!待て。まだ討伐するのは早い」
私がグリムベアに近づこうとすると、エリオスは慌てた声で「レヴィ!!」と叫び、私の手を握った。
しかし、私はその手を解くと、「心配いらない」と言って強い魔力のオーラを身に纏い、グリムベアの元へと行くと、私の圧倒的な魔力を感じ取ったグリムベアは、本能的な恐怖を覚え、一歩、また一歩と後ずさった。
その隙に空へと手をかざし......魔法をかけた。
「......ノクス・サンクトゥス」
私が魔法を唱えると、森の淀んだ空気が浄化されていく。
そして、グリムベアは大人しくなり、森の奥へと去って行った。
その様子を見ていたエリオスは、感心した声を上げた。
「凄いね、レヴィ。」
「いや、まだ油断はするな。......これから森の奥に行って瘴気の原因の亀裂を塞ぎに行く」
「......もっと大人数で行った方が......」
「エリオス。私を誰だと思っているのだ?魔王だぞ?」
エリオスは、納得していない様子だったが、私は森の中へと進んでいった。
そして森の奥へと辿り着くと、一際大きな大木に魔界へと通じる亀裂が開いていた。
私はその大木に手をかざすと、魔力を注いだ。
すると次第に大木の亀裂が光に包まれながらゆっくり閉じられた。
「これでもう大丈夫であろう。森の浄化は出来ているから、ここから魔獣が入ってくる事は無くなるだろう」
「魔王が......魔物を救った?」
エリオスは信じられないものを見るように、目を見開いた。
「勘違いするな。魔物は私の大切な民だ。無駄に命を散らせたりしない。大切な民を守るのが"王"というものだろう?」
「......流石はレヴィ。君は本当に魔王の鑑だね」
「?そうだが?」
......エリオスは一体私を何者だと思っているのだ?
まぁ、何者だと思われていても構わない。
――ただエリオスの私に対して向ける視線が嫌ではなかった。




