第10話
森を後にし、瞬間移動魔法を使って城へと帰ると、セラフィンが護衛と共に出迎えに来た。
「レヴィ様?!ご無事ですか?!」
「?何のことだ?」
「いえ......急に森の方から強い魔力を感じたのですが......」
「あぁ。狂暴化したグリムベアがいたからな。ついでに森の浄化も行った」
セラフィンはそれを聞いた瞬間に目を見開いていた。
......私は何かおかしなことを言っただろうか??
「セラフィン?一体どうしたと言うのだ??」
「いえ......急に森の方から強力な魔力を感じたものですから......。森が浄化されたのを感じ取れたので......その浄化が魔王である貴方様に何らかの影響を及ばしたのではないか、と......」
「セラフィン。その浄化をしたのがレヴィだ」
「......え?」
セラフィンは今度は言葉を失った。
「......魔界にも浄化魔法はある。」
私が使ったのは、"瘴気を包み込み、穢れのみを分離して消し去る"というものだ。
「ただ、聖属性での浄化では魔物を構成する魔力の根源まで消し去ってしまう。しかし、私が使った"ノクス・サンクトゥス"は、瘴気だけを見極め、穢れだけを引き剝がし消滅させる魔法だ。......ついでにおせっかいかと思ったが、魔界へと続く亀裂も塞いでおいた」
一瞬、沈黙が広がった。しかし、次第に私の言葉に周りがざわついた。
「魔王が魔獣を......?」「穢れは聖女様だけが浄化できるのではないのか?」そんなことを口々にしていると"パンパン"と手を叩く音が聞こえた。
......音の主はセレスティア国王であった。
「レヴィよ、貴殿の働きは良いものであった」
「......別に、私は私の為すべき事をしたまでだ。......結果この国を守る事になった、ただそれだけだ」
セレスティア国王は「がはは」と大きく笑った。
......何がそんなにおかしいのか私にはわからなかった。
しかし、セラフィンも周りの兵士たちも、私のことを見て賛美の声ばかりを上げていた。
「レヴィよ......貴殿は実に面白い男だ。人は魔王と聞けば、冷酷非情な存在だと思い恐れを抱く。だが貴殿は違う。人間だけでなく、魔物までも守ろうとする。その器こそが"王たる証"よ」
セレスティア国王はそう言うと再び笑い声を上げた。
......一体何がそんなにおかしいのか、私には分からなかった。
だが、セラフィンも兵士達も私のことを恐怖の対象ではなく、敬意の対象として見ていた。
「ところでレヴィ様?城下はいかがでしたか?」
「ん?あぁ。非常に興味深いものばかりであった」
「まぁ、僕のエスコートだからな。外れるわけがないだろう?」
エリオスとセラフィンはバチバチと火花を散らしていたが、私の元に一人のメイドがやって来た。
彼女は城下へ行く支度をしてくれた"アリス"と言った少女だった。
アリスは王の元へと行くと跪き、礼をすると、セレスティア国王が私にとんでもない事を言ってきた。
「レヴィよ。彼女は今後、貴殿の世話係となる"アリス・リリアーナ"だ。何かあれば彼女に申すがいい」
「魔王様。どうぞよろしくお願いいたします。魔王様のために誠心誠意をもって......」
「アリス。そんなに固くならなくて結構だ。......私はまたお前に会えてよかったと思っているぞ?」
「!!......も、もったいなきお言葉!!」
「父上!レヴィの世話ならこの僕が......!!」
「いいえ!わたくしめが!!」
「エリオス。お前には政務がある。セラフィン殿も。日々の祈りに国民たちへの施しがあるであろう?それに、貴殿も客人であることには変わりない。いいな?」
エリオスとセラフィンはがっかりしたように肩を落とした。
......そんなに私の世話をしたがるとは。
四天王に負けず劣らず、人間という生き物も随分と物好きらしい。
......まぁ、悪い気はしない。
人間も案外捨てたものではないのかも知れんな。




