第11話
「さぁ、今日は先に湯浴みをしよう。......一緒でも構わないかい?」
「ちょ、エリオス様?! それはずるいのではありませんか?!」
「セラフィン殿は人の"穢れ"のある所には入れないでしょう? それに、魔族であるレヴィの浸かった湯には入れないのでは?」
......エリオスもセラフィンも何をそんなにムキになるのだろうか?
「セラフィン。魔族である私と共に湯に入るなど、神聖なお前にとっては自殺行為ではないのか?」
「......それ、は......そうですが......」
「晩餐は共にとるのだ。いい子で待っていてくれないか?」
私はそう言いセラフィンに笑いかける。
するとセラフィンは、悔し気に、「分かりました」と言って項垂れた。
エリオスはルンルンと鼻歌を歌うかのように城の大浴場へと私を誘った。
「やっぱり、親睦を深めるには"裸の付き合い"だよね!」
「......」
「......レヴィ? どうかしたかい?」
私が服を一向に脱ごうとせず、固まっているのを不審に思ったエリオスが声をかけて来た。
......私は人間界に来て初めてのピンチに陥ていたのだった。
何を言おう、私は普段、魔力で清潔を保っている。
だから湯浴みの経験がない。
衣服も普段は悪魔達に脱ぎ着している為......どうやってこの服を脱ぐのかが分からない。
「......エリオス。笑わないで聞いてくれるか」
「? なんだい?」
「......これはどうやって脱げばよいのだ?」
「......は?」
今朝も身支度はアリスがしてくれた為、"自分で"着替えるのは......初めてかもしれん。
「......ふふ」
「おい、笑うなと言っただろう!」
「あはは。ごめんごめん。レヴィは"魔王様"だもんね。着替えは今までどうしていたんだい?」
「......従者の悪魔達にさせていた」
そんなやり取りをしているとエリオスが服のボタンを一つ一つ丁寧に外していく。
成程。このようにしてボタンは外すのか。
「ズボンは......流石に分かるよね?」
「?」
「......マジか」
エリオスはしゃがみ込むと、ベルトに手をかけ外し、ズボンの前をくつろがせた。
「ここまですればあとは脱ぐだけだから大丈夫でしょう?」
「あぁ。手間をかけた。」
「いえいえ! こちらこそ美味しい思いをありがとう」
「? 何がだ?」
「......いや、なんでもない」
......美味しい思いとは一体何なんだ?
まぁ、いいか。私は衣服を脱ぐと、先に待っていたエリオスと共に大浴場の中へと入っていった。
「......人間界の風呂とはこんなに澄んだ色をしているのだな」
「魔界は違うのかい?」
私は過去、入っていた時のことを思い出した。
「私はあまり入らぬが、マグマの様なものだと聞いたな」
「......マグマって......相当熱いんじゃ......」
「そうだなぁ......」
私は浴槽の中に手を入れて温度を確かめた。
「うむ。魔界と比べたらまるで"水"の様なものだな」
「へ、へぇ......」
「......ところでエリオス。ここではどのようにして身体を清めるのだ?」
「?! そ、そこからぁ?!」
エリオスは驚きながらも、丁寧に分かりやすく教えてくれた。
初めてだったので、大変助かった。
......のだが、今度はエリオスが鼻血を出して大惨事になっていたのであった。
「おい! 大丈夫か?!」
「......君、どれだけ無防備なのか分かっているかい?」
「? 風呂の入り方を教わっただけだが?」
「......そう言うところだよ、レヴィ。」
そう言うとエリオスは床に倒れてしまったのであった。
......とりあえず回復魔法でもかけておくか。




