第7話
今日は、エリオスとセラフィンと共に城下へとくり出すことになった。
私は人間に擬態する魔法を自身にかけた。
二人は、角が無くなり耳が人間のそれになった私の姿を見てえらく感心していた。
「なるほど、人間に擬態する魔法......書物で読んだことはありますが、実物を見たのは初めてです」
「......私も滅多に使う機会は無いな」
「そんな事より!二人とも!庶民の服に着替えてくれないかい?あまり国民を驚かせたくはないからね」
エリオスがそう言うと、メイド達がわらわらと部屋に入って来た。
私の元に来たメイドは怯えた様子を見せていた。
......無理もない。魔王を相手にするのだ。怯えない方がおかしいだろう。
「お前、名は何と言う?」
「え......あ、アリスと申します」
「アリス。怯える事は無い。危害を加える気などないからな。......そうだな、服はシンプルな物をお願いしたい。柄物は好まないものでな。それと、髪を結ってもらえるか?」
私は出来るだけ優しく、微笑みながら語りかけた。
すると、アリスは安心したかのように私の身支度を始めた。
服は黒いワイシャツにグレーのパンツ、それに黒のブーツを合わせた非常にシンプルな組み合わせであった。
「ま、魔王様。髪結いのリボンは何色になさいますか?」
「私は別に何色でも良いのだが......」
「いや、ここはやっぱりレヴィの瞳の色に合わせて赤がいいんじゃないかい?」
......ふむ。悪くはないチョイスだ。
私はエリオスの案を採用し、アリスに赤いリボンを手渡した。
「これで頼む。」
「か、かしこまりました」
アリスの小さく優しい手が私の髪を梳いて結っていく。
髪を結い終わるとアリスは「出来上がりました」と小さく告げた。
「あぁ。アリス、ありがとう。少しは人間に見えるだろうか?」
「は、はい!とても素敵でいらっしゃいます!」
「フフッ。ありがとう、アリス。」
私はそう言うと、アリスの頭をそっと撫でた。
すると、アリスは顔を真っ赤にしてペコペコと頭を下げながら部屋を出て行った。
「......レヴィ。あまりウチのメイドたちを魅了させないでおくれ?......君の魅力を知るのは僕だけでいい」
「何をおっしゃっているのですか?エリオス様。レヴィ様の魅力は森羅万物知る権利があります」
「......あまりいろんな者に色目を使わないでおくれよ?」
......色目を使った覚えなどないのだが。
エリオスは何を心配しているのか?
まさか私が人間界を支配しようと考えていると思っているのだろうか?せっかくの友好の関係、崩す訳がないと言うのに。
エリオスは心配性だな。
「さて、準備は整った。早く私を城下へ連れて行ってくれないか。......こう見えて実は昨日から楽しみにしていたのだ」
私がそう言うと、エリオスもセラフィンも胸を抑え込んだ。......一体何をしているのやら。私は早く視察へと行きたいと言うのに。
「おい、何をしている?早く城下に......」
私が声をかけたその時だった。
エリオスが私の手を握り走り出した。
「悪いなセラフィン!今日は二人きりの"デート"を楽しませてもらうよ!!」
「お、おい!エリオス?!」
「行こうレヴィ!」
エリオスはそう言うと瞬間移動魔法を使って後追いをできないようにしたのだった。
「......してやられました。仕方ありません。今回だけは譲って差し上げます。......今回だけは、ね」




