第6話
楽しい宴も終わり、私はあてがわれた部屋へとやって来た。
「......ヴァルク」
「ハッ。ここに」
「お前の"食事"はまだだったな。こちらへ」
私はヴァルクを呼び寄せると、口づけを交わした。
この口づけは、ヴァルクに魔力を分け与えるために必要な儀式のようなものだ。
ヴァルクは食べ物を食べない代わりに、この行為が必要となる。
「ん......。満足か?」
「今宵も美味なる魔力でありました」
ヴァルクは恍惚とした表情を浮かべ、私を見つめてきた。
ヴァルクは私が初めて配下に置いた者で私にとっても特別思い入れがある。
ヴァルクが"食事"として魔力を必要とするのであれば、私も喜んで力を与える。
「ヴァルク。今日はお前も休め。」
「......しかし」
「大丈夫だ。......ここは安心できる場所だ。だから"本当の姿"に戻っても大丈夫だ」
私がそう言うと、ヴァルクは黒い煙に包まれた。
次の瞬間、艶やかな黒い鱗に覆われた小さな竜――本来の姿である、"ブラック・ドラゴン"に姿を変えた。
"ブラック・ドラゴン"は魔界でも絶滅危惧種に指定されている希少な種族だ。
普段は人の姿をとり、"ドラゴンナイト"として私の騎士を務めているヴァルクも、その一族である。
もっとも、私が見つけた時は群れからはぐれ、小さくピーピーと鳴いていた。
その時、幼かったヴァルクに私が魔力を与えたことで、私達は主従関係を結んだ。
今は、力もつき"ドラゴンナイト"として良き働きをしてくれている。
「......ヴァルク。お前もこちらへ来い」
「グルル」
ヴァルクは子犬程度の大きさだ。
その姿は、普段の騎士姿からは想像もつかないほどギャップがあり可愛らしかった。
「フフッ。......お前は可愛らしいな。おやすみ我が小さなナイトよ」
一方、その頃の魔界では――
「ぐぅ......!!ヴァルクめ!!なんて羨ましい......!!」
「魔王様から口づけで魔力をいただけるなんて......!!お陰で魔王様は口づけは特別な物だと思わないピュアピュアっ子になってしまったというのに......!!」
「私など......血をいただくのにどれほどの時間がかかったと思う?!もう数えきれない年月かかったぞ!!」
「それよりも......同じベッドに入るなどと......。私が入ろうものなら鉄拳が待っているというのに......」
「「「それは下心が丸見えだからだ!!」」」
アスモデウスの言葉に他の四天王達からツッコミが入る。
今覗いているのは、人間界と魔界を繋ぐ水晶。
過保護な四天王達がいつでも魔王の様子を覗き見れるようにするための物である。
しかし四天王達は、この先、人間界で魔王様を狙う者が一人や二人ではないことをこの時はまだ知らない。そしてその誰もが強敵であることも――




