第61話
「レヴィーー!!」
「ルナリア様!! そのように走っては危ないですよ!!」
「ルナリア王女。ご心配をおかけしました」
私は飛び込んでくるルナリアを抱き止めながら、その美しい涙を拭った。
視線を動かすと、その手に持っていたのは、私が渡したガラスの薔薇。
「ルナね、レヴィがいなくなってから、ずっとこのバラにおいのりしてたの」
「お祈り?」
「......レヴィがぶじにかえってきますようにって」
「ルナリア王女」
「でも、バラはきえなかったから、レヴィはぶじだったんだって。......わたし、とてもとてもあんしんしたわ」
――ルナリアは私の教えを覚えていた。
聡明な少女だ。
「......そういえばレヴィ? おつのがないわ?」
「あぁ。人間と魔族の魂が混ざった故に取れたのかと」
「とれたおつのはどこに?」
ルナリアがそう問うと、エリオスとセラフィンが一つづつ見せてきた。
「レビオラの角なら記念に僕らが貰って来たよ」
「......そんなものを記念にするな」
「? "レビオラ"?」
「あぁ、人間界での名前ですよ。ルナリア王女はお好きにお呼びください」
ルナリアは「んーー」ッと考えた後、パァっと明るい笑顔を見せた。
「それじゃあ、"レビー"ってよぶわね!」
「なんだか、楽しそうな声が聞こえてきたかと思えば......」
「セレスティア国王。うるさくして申し訳ない」
「良いのだ良いのだ。して、レヴィ。今のお前はなんなんだ?」
セレスティア国王に問われ背筋が自然と伸びる。
「今の私は"中立の審判・レビオラ"人間も魔族も平等に愛する一つの命だ」
「そうか。それでは"中立の審判・レビオラ"の誕生を祝い、国を挙げ人間と魔族両方の種族で祝いの祭典をしようではないか!!」
セレスティア国王の発言により、城中が慌ただしくなった。
私も衣装を着替えさせられることになった。
「れ、レビオラ、様」
「ん?あぁ、アリスではないか。久しいな」
「しばらくお姿を見られなかったので心配いたしました......あ!! 私のような下等な人間がレビオラ様を心配するなんて......」
「何を言っている。嬉しく思うぞ?」
「今回の衣装、国王様がレビオラ様がいらしたときに友好の証としてあつらえさせていたものなんですよ?」
そうして見せてきたのは、白と黒の混ざった衣装。
刺繡には金色の糸が使われている。
「......いつの間に測ったのかと思うぐらいピッタリだな」
「......よくお似合いです。とても神々しい」
着替えが済んだ瞬間に、扉がコンコンと音を立てた。
アリスが扉を開くと、そこにはセラフィンが立っていた。
「まぁ、とてもお似合いですよ?」
「世辞はいい。何か用があって来たのではないか?」
「いえ。私は緊張している花嫁の元に訪れた母親のようなものですよ。......まぁ、いつでも掻っ攫う準備は万端ですがね」
「?」
セラフィンの言うことはよく分からないことが多い。
......そう言えばエリオスは?
「セラフィン、エリオスは一緒ではないのか?」
「ふふ。それは祭典が始まってからのお楽しみですよ」
「しかし、急に決まった祭典だというのに準備が行き届いているな」
「それは......親心ってやつですかね?」
そんな会話をしていると、再び扉が叩かれ使用人が入って来た。
「お二方。式典の準備が整いました。バルコニーへご移動を」
そう促され私達はバルコニーへと移動することになった。
――そして。
この時の私は、まだ知らなかった。
この先に待っているものが、私の新たな人生を象徴する光景になる事を。




