第59話
私は四天王とエリオス達を見つめる。
人間と魔族。
かつての私は、そのどちらにも肩入れすることが出来なかった。
どちらにも正義があり、どちらにも過ちがあったからだ。
だから私は、どちらか一方を選ぶ事をやめた。
――私は「中立の審判」。
人間の味方でも、魔族の味方でもない。
ましてや、神として世界を上から見下ろす存在でもない。
私はこの世界に生きる一つの命として。
人間も、魔族も、笑っていきられる未来を選ぶ。
「レヴィ?」
私はクスリと笑うとエリオスに向き直った。
「いや。なんでもない」
「......何か隠し事でもしているんじゃない?」
「......しつこいぞ。そんな男は嫌われる」
「僕はレヴィに好かれればそれでいいけれど?」
不意を打つ発言に、私は顔に血液が集まるのを感じた。
――きっと顔は真っ赤になっているだろう。
「ば、バカを言うな!!」
と、その時だった。
――カラン。
「え?」
「レヴィ?! 角が......」
「「「「魔王様?!」」」」
私の頭の角が取れ落ちた。
一瞬にしてその場が静寂に包まれた。
「......生え変わり?」
「魔王の角が生え変わるなんて聞いた事ないよ!!」
「......失敬」
「セラフィン?」
セラフィンは私の前に来ると、頭上に手をかざした。
――そして。
「やはり、今まで純なる魔王だったのが、今では人間の魂が見えます」
「人間の魂?!」
「あ、だからといって魔王の力は失われていません。安心してください。――貴方は魔王、レヴィ・ノクスです。」
――だとすると、一体どういうことなのだろうか。
まさか。
「貴方様は創世神から解放され、中立の審判としてその身に人間の魂と、魔王の魂を共存させているのでは、と考えられます。」
「......なるほど?」
私に人間の魂が......。
そういうことなら。
「エリオス。お前に頼みがある」
「? なんだい?」
「私に"人間としての名"を与えてはくれないか?」
「!! 僕なんかでいいのかい?」
「......お前だから頼んでいる」
――どうせつけられるのであれば"愛する者"に付けてもらいたいだろう?
まぁ、口が裂けても言ってはやらぬが。
「......オラ」
「......え?」
「レビオラ、はどうだろうか? レヴィの面影も残せる」
「レビオラ......ありがとう。大切に名乗る」
私は今までにないほど柔らかい笑みが浮かんだのではないかと思う。
ゼノンとの過去にも、決着をつけた。
そして私はもう過去に囚われることはない。
創世神でもない。
魔王だけでもない。
私はこの世界に生きる一つの命。
人間と魔族、そのどちらか一方を選ぶのではなく。
どちらも生きられる未来を見届ける者
――それが私の選んだ"中立の審判"という生き方だ。
「エリオス、セラフィン。さぁ、帰ろう」
私はそう呟き、エリオス達と共に歩み出した。
――もう振り返ることはしない。
私達の未来はこれから始まるのだから。




