第58話
「......終わった、のか?」
「ゼノンの気配はなくなりましたね」
「......二人とも。ありがとう。二人のお陰でゼノンを眠らせてやることが出来た」
私はそういうと、足元に転がったゼノンの魂の炎を拾い上げた。
エリオス達は私の行動を見守っている。
私は、エリオスから貰った魔石のブローチを取り出す。
「!! それ......」
「お前が"デート"の時にくれたものだ。ここまで導いてくれたのもこのブローチのお陰だ」
「一体どうするというのです?」
セラフィンは私に問いかけると、私はブローチの魔石にゼノンの魂の炎を近づけた。
そう。私はこの魂の炎を魔石に入れるつもりだ。
「......孤独が辛いのは私が一番よく知っている。......だからこそ、そばにいてやりたい」
「......でしたら」
「?」
セラフィンは近づいてきたかと思うと、私の手に手を重ねた。
「今から聖なる力を注ぎます。......封印だけでは暴走する可能性がありますからね」
「......助かる」
そうして、私とセラフィンは二人の力で魔石にゼノンの魂を封じた。
「なんだか、妬けるな」
「妬ける? 何故だ?」
「......二人の共同作業ってところにだよ」
? なんだか魔石のきらめきが揺らぎ、怪しく光ったように感じた。
......気のせいか?
「さぁ、無事ゼノンは封じることが出来ました。帰りましょう。人間界へ」
「......そうだな。腹も空いた」
「......レヴィ、一気に緊張感が弱まったよ」
む。私は結構頑張ったと思うのだが?
それに、ここ最近まともに食事をとっていない。
腹を空かすなという方に無理がある。
腹を空かせていると言えば......
「ヴァルク。何をしている? 帰るぞ」
「......いえ、私にはもう貴方様に仕える資格など......」
「何を言っている。言っただろう? "私のドラゴンナイト"だと。お前はもう私の支配下なのだぞ?」
「......魔王様」
ヴァルクは心のどこかで"私を裏切っていた"ということを責めているようだ。
しかし、私はヴァルクに裏切られていたとは思っていない。
「......ゼノンはもういないのだ。私に仕えてはくれないか?ヴァルクよ」
「......この身が尽きるその時まで、貴方様に仕えると誓います」
「よし! これで深淵は誰もいなくなった。――もう、必要はないな」
私は力いっぱい青炎を使った。
深淵を覆っていた黒い霧が、青白い炎に触れた瞬間、まるで最初からなかったかのように消えて行く。
重く淀んだ空気が晴れ、遠くまで澄んだ魔界の空気が広がった。
――深淵は消えた。
私はその光景を静かに見つめる。
これでいい。
もう、誰もあの場所に囚われる必要はない。
「ここは......魔界、か?」
「......深淵は人間や魔族の闇や穢れを集めた場所。それを消し去ってしまえば、ただの魔界と変わりない」
そういうと、私は慣れ親しんだ気配を感じた。
......まったく。しょうがない奴らだ。
「「「「魔王様!!」」」」
「久しいな、お前達。普段なら四天王が全員城を開けるなと苦言を呈するところだが今日の所は許そう」
「あぁ、我が魔王様......。とうとう深淵を消し去ったのですね」
「私達ですら立ち入れなかった場所を......」
――そうだ。四天王ですら深淵には近寄れなかったのだ。
これで魔界に住む者達に少しは自由を与えられたか。
「魔王様、せっかく魔界にいらしたのです。城で食事でも......」
「有難い申し出だが、人間に魔界のものは刺激が強すぎる。又の機会に頼む」
「......分かりました」
何故そんなに残念がっているのだ?
......それにエリオス達と睨み合っている。
仲良くしてほしいものだ。




