↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王、勇者と聖女(男)から溺愛される~部下からも言い寄られて困ってます!?~  作者: 朱音小夏


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/62

第54話

 ヴァルクの転移魔法により、私達は深淵へと足を踏み入れた。

 肌を撫でる風が、重く冷たい。

 ――まるで世界そのものがこちらを拒んでいるようなそんな感覚だ。


「ここが......深淵、ですか」


 セラフィンが辺りを見渡すと、薄暗い空には赤黒い雲が渦巻いている。

 遠くには黒く聳え立った城が見える。

 ――あそこにゼノンがいる。

 そう直感的に思った。

 私は思わず身震いをする。

 するとエリオスとセラフィンがそれぞれ手を握って来た。


「レヴィ。大丈夫。一人じゃないよ」

「そうです。私達がそばにいます」

「二人とも......ありがとう」


 私は思わず笑みを零すと、二人は顔を赤くした。

 ......やはり深淵の空気は合わなかったか?


「二人とも。無理することはない。ここから先は私一人でも......」

「「なりません!!」」

「は、はい......」


 二人の勢いに押され、私は思わず敬語になった。


「......皆さま。......覚悟はよろしいでしょうか?」

「あぁ。大丈夫だ。連れて行ってくれ」


 そう言うと、ヴァルクを先頭に、私達は歩き出した。




 ***


 同じ頃。

 深淵王の城。


「......来た」


 玉座に腰掛けていたゼノンがゆっくりと立ち上がった。

 その顔は狂気的な笑みを浮かべていた。


「本当に......来てくださった」


 遠くに感じる気配。

 忘れもしない。

 何年。何千年経とうとも。

 あの気配だけは、忘れるはずがない。


「あぁ......レヴァイア様......」


 ゼノンは玉座から下りる。

 そして、一歩。

 また一歩と入り口に近づいていく。

 まるで待ちきれない子供のように。


「今度こそ」


 その瞳には狂気的な熱が帯びていた。


「貴方を誰にも渡さない......!!」




 ***


 巨大な扉の前でヴァルクは立ち止まった。


「こちらにゼノン様はいらっしゃいます」

「そうか......ここに」


 私はその重々しい扉に触れると、ギィイイッと音を立て扉が開いた。

 エリオスは剣を構え、セラフィンも警戒するように身構えた。

 そして扉が開ききった途端、私は温かい人のぬくもりに包まれた。


「レヴァイア様......!! お待ちしておりました!! この時を何年......いや、何千年お待ちしていたことでしょう!!」

「ぜ、ゼノン? 一体何を......!!」

「何って......再会のハグですよ。貴方は私を、私の想いを思い出してくださった!! あぁ......実に感動的です」


 ゼノンは私の身体を抱きしめながら何度も何度も、私を"レヴァイア"と呼んだ。


「ゼノン。私はもうレヴァイアではない。それに......」

「いえ? 貴方はレヴァイア様です。 あぁ。貴方が私の腕の中にいる......なんて甘美なことでしょうか......」

「ゼノン・アビス。その汚い手を離してもらおうか?」

「これはこれは勇者に、聖女。......私達の再会を祝いに来た、という訳ではないのだな。残念だ。実に残念だ」


 ゼノンはそう言うと二人に手を向けた。

 そして、魔力を集中させる。


「やめろ!! ゼノン。私は話しに来たのだ」

「話しに? あぁ。私との愛を語らいに......」

「違う!!」


 ゼノンはもう話にならない程、酔っているようだ。

 ......何にって?私にだ。


「私はもうお前の愛したレヴァイアではない!!」

「? だったらなんだというですか?」

「......え?」

「記憶はあるんですから、もう一度私を愛させるだけ......!!」


 そういうと、ゼノンは私の額に指を当てる。


「――っ?!」


 視界が歪む。

 そして――。

 今まで見たことのない光景が脳裏によみがえってくる。

 二人で笑いあった時間。

 交わした言葉。

 触れた指先。

 ――知らないはずなのに懐かしい。


「な、なんだ......これは」


 あまりのも膨大な記憶。

 あまりにも強烈な感情。

 私の頭では、とても受け止めきれない。


「レヴィ!!」


 遠くでエリオスの声が聞こえた。


「レヴィ様!!」


 セラフィンの声も聞こえる。

 二人は近寄ろうとしてくる。が。


「近寄るな。お前達には用はない。近寄るというなら今ここで......分かるな?」


 ゼノンが何かを言っている。

 けれど――。

 もう、何も考えられない。

 視界が暗く染まっていく。

 そして、私は――。

 深い眠りへと、落ちていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。