第53話
「では、ヴァルク。お前に命ずる。私を深淵王 ゼノン・アビスの元へ連れていけ」
「......!! よろしいのですか? ゼノン様の元に行ったら帰ってこれない可能性もあります」
「それでも構わない」
私は真っ直ぐヴァルクを見つめる。
「私はゼノンに会わなければならない」
「......」
「私はレヴァイアだった頃、あの男を愛していた。それに間違いはない」
口にするだけで、胸の奥が締め付けられる。
......それほど強い想いだったのだろう。
そんなことを思っていると、エリオスがうめき声を上げながら起き上がった。
「......あれ? 僕はどうして......」
「......ヴァルク。お前は"闇の教会"にも関わりがあるのか?」
「はい。エリオス様に干渉魔法を使ったのは、私です。ゼノン様の命により」
信じたくはないが、やはり、か。
いつからゼノンと繋がっていたのかなんてもう気にしていられない。
とにかく私はゼノンと一度会う必要がある。
――それがどのような未来になろうとも。
「ヴァルク」
「はっ!! 魔王様の仰せのままに」
「お待ちください。一人で行くのは危険です。......わたくしも行きます。ね?エリオス様」
「......え?ごめん、一体何の話かさっぱりついていけないんだけれど......」
エリオスの発言により、緊迫していた空気が一転、ため息に包まれた。
まぁ、今まで操られていたのだ。
仕方のないことだ。
「エリオス。これから深淵王 ゼノンの元へ行く。......お前の力も借りたい。どうか一緒に来てはくれないだろうか」
「レヴィ......。君が決めたのであれば、僕に止める権利は無いし、この力、使えるなら是非とも使ってほしい」
「エリオス......ありがとう」
エリオスの返事を聞き私は安堵した。
勇者と聖女が一緒なら恐れるものは何もない。
――それに戦いに行くのではない。
私はただ話がしたいのだ。
「それでは、連れて行ってもらおうか?ヴァルク」
***
「レヴィが、レヴァイア様がこちらに来る......だと?」
人間界を覗いていたゼノンは混乱していた。
たしかにヴァルクに闇の教会の力を使い、エリオスに干渉魔法をつけた。
しかし、それがこちらにやって来る動機になるとは思ってもみなかった。
「あぁ。まさか貴方から来て下さるなんて......感激です!! しかし......勇者と聖女は邪魔だな。けれど、そうか。貴方が私を想ってくださるのなら......私はそれで構わない。やっと、やっと貴方を手に入れることが出来る!!」
ゼノンは恍惚とした表情を浮かべレヴァイアへの想いを強く見せる。
――ゼノンはもうレヴィが手に入ったことしか思い描いていない。
狂った存在になってしまったゼノンを見て、果たしてレヴィは受け入れるのか否か。




