第48話
***
「......それにしてもあの大樹、いつの時代になっても邪魔だな」
ゼノンは深淵に戻るとすぐに鏡の前に腰を下ろした。
「人間界に干渉しようとしてもあの大樹が邪魔をする。......私がまだあの大樹に未練があるからか?」
ゼノンの未練。
――それはあの大樹の前でレヴァイアに想いを告げた時のこと。
レヴァイアは気持ちが嬉しいと言ってくれた。
......しかし、誰か一人の物になる事は決してないのだと、世界の創世神なのだと。
――だから私は争いを起こした。
レヴァイアが絶望し、魔に堕ちてくるように。
「......もうレヴァイアはいない。しかし、魔王レヴィがいる。私はそれで満足だ。だからこそ、今度こそ、この手に入れてみせる......!!」
そう言うと、ゼノンは眠りに落ちた。
***
「要するに、その【ゼノン】という人物が、創世神であるレヴァイア......つまり今のレヴィを狙っている、と?」
「あぁ。そうらしい。しかし、レヴァイアの記憶は取り戻したが、ゼノンの存在は記憶にはなかった」
「それは奇妙ですね......レヴァイア様が消さなければならなかった"何か"があったとしか考えられません」
「"何か"とは?」
私がセラフィンに問いかけると、セラフィンも首を横に振った。
......分かるわけない、か。
私は何故、ゼノンを忘れてしまったのであろうか。
私は恐怖よりも申し訳なさが先立った。
――いったい何故?
「......」
「レヴィ様?」
「私は何か大切な記憶を消し去ってしまった気がする。......とても大切な」
「それは、そのゼノンに関することで?」
「......あぁ」
私はそう言うと、白銀の薔薇の大樹の方へと目をやる。
今は離れてその姿は見えないが、何故だか、あの大樹が鍵となっている。
そうとしか思えなかったのだ。
「レヴィ。今はもう考えても仕方がない。過去ではなく未来へと目を向けよう」
「そうですね。あまり無理に思い出そうとするのも体に毒です」
この二人に言われてしまえば従わざるを得ない。
......仕方がない。"今は"このままでいよう。
しかし、いずれお前のことを思いだしてみせる、ゼノン。
すると、ぐぅっと誰かの腹の虫が鳴いた。
あたりを見渡すと、ルナリアが顔を真っ赤にして下を向いていた。
「ルナリア王女。腹が空きましたか?」
「ち、ちがうの!! これは、その......」
「恥ずかしがることはありません。そういえば私も何も食べてはいないな。エリオス、腹が減った」
「......君は逆に少し恥じらいを持つべきだよ......」
私が恥じらいを持ったっところで誰も気にしないであろう。
私は、早く早くとエリオスを急かした。
「なに?! そんなにお腹空いてたの?!」
「......お前は幼い妹に恥をかかせる気か?」
私がぼそりと呟くと、エリオスはハッとしてルナリアを見た。
「そういう事だ。早く食事にしようではないか」




