第46話
「......きれい」
「貴方のことを思って作りましたから。これはお守りです。貴方に何かあればこれが貴方を守ってくれます」
「......おまもり」
ルナリアはそう呟くと、薔薇の飾りをギュッと握りしめた。
「けれど、レヴィもわたしをまもってくれるのでしょう?」
「えぇ。もちろんです。薔薇を模したのは王妃様を想って。これを見るたびに王妃様を想えるように。――そして、このネックレスには私の魔力がこもっております。......わたしがいなくなったとしてもこのネックレスが貴方を守ります」
「......じゃあ、レヴィがいなくてもこれがあれば、レヴィが守ってくれるのと同じ......?」
「そうです」
私の言葉を聞くとルナリアは何故か泣きそうな顔をした。
また私はいらないことを言ってしまっただろうか?
「レヴィ、まえにいってた。レヴィがしんじゃうとあの"ガラスのばら"はきえてしまうって。これもそうなの......?」
「......」
「わたし、いやよ? レヴィがしんじゃうの!! ......だから、ん!!」
「?」
ルナリアは小さな小指を私に向けて差し出してきた。
......一体何をするんだ??
「やくそくの"ゆびきり"!!」
「......"ゆびきり"?」
「だいじなやくそくをするときにする、おまじない!!」
「......人間界には面白いまじないがあるのですね」
そう言いながら私も小指を差し出す。すると、ルナリアが私の小指に自身の小指を絡めてきた。
「あーらら。やっちゃいましたね、レヴィ様」
「?」
「王族との約束事なんて、破りでもしたら......兄貴が怖いっす」
「......それはたしかに恐ろしそうだな」
「もう! リオン!! 余計なこと言わないで!!」
ルナリアはぷんぷんと頬を膨らませながら怒っていた。
私はそれを見て微笑ましく思い思わず笑みが零れる。
――いつまでも、この穏やかな時間が続けばいい。
そう思った私を嘲笑うかのように暗く病んだ空気が辺りを囲う。
「!! リオン! ルナリア王女を連れて遠くへ!!」
「レヴィ様?! 一体何が......」
「いいから! 早く!!」
次の瞬間、私の目の前に大きな人影が現れた。
――頭痛が......頭が割れるようだ......
『レヴァイア』
人影がそう言うと私の身体から"青炎"が上がった。
「レヴィ!!」
「レヴィ様?!」
――あぁ。二人の声が遠く聞こえる......
『さぁ、こちらへ来るんだ。レヴァイア。お前のいる場所は"人間界"ではない。私と共に"深淵"で世界を見るのだ』
思い出した。あの夢を。私がこの男と対峙した夢を。
「......ゼノン・アビス」
私がそう呼ぶと、人影から一人の男が姿を現す。
――青炎は落ち着き、私の背には翼が現れた。
「さぁ、レヴァイアよ。私と共に深淵へと行こうではないか」
――私は差し出された手を弾き飛ばした。
「誰が......お前なんぞと......!!」
「んー。......もういい頃合いだと思って来てみたが......まだその時ではないらしい。今日の所はこれで失礼する。が、お前を手に入れるのはこのオレだ。それだけは忘れるな」
そういうと、ゼノンは闇に包まれ消えて行った。
私も青炎の翼をしまうと、その場に跪く。
「レヴィー!!」
――あぁ、ルナリアまたそんなに涙して。
綺麗な瞳が溶けてしまうではないか。
そんな事を思いながら、私は意識を手放した。




