第45話
......何故だろう。なんだかもやもやして気持ちが悪い。
思い出せない謎の夢を見たせいか?
「......気持ち悪いな」
「え?! 大丈夫っすか?!」
「あ、あぁ。問題ない。気分でなく気持ち的な問題でな」
私はそう言うと、唇を指でなぞる。
――何かが触れた感覚があるのだ。
「なぁ、リオン。夢とは覚えているものなのだろうか?」
「へ? んー、人によるんじゃないっすかね? オレも覚えてたり忘れてたりっすもん」
「......そうか」
「レヴィ? ぐあいわるいの?」
おっと。ルナリアにまで心配をかけてしまうとは。
「大丈夫ですよ、ルナリア王女。ご心配ありがとうございます」
私が微笑みかけると、ルナリアは頬を紅潮させ、リオンの陰に隠れてしまった。
なんともまぁ、愛らしい行動に、私はほっこりした。
「ルナリア王女。久々に中庭の薔薇園に行きませんか?」
「まぁ! すてきなデートのおさそいだわ!! ぜひ、いきましょう!!」
「......そう言えば、リオン。兄のレオンはどうしたんだ?」
「あぁ、兄貴っすか? 兄貴はしばらくルナリア様の縁談を断るのに必死になってる最中っす」
「......わたしは、けっこんするならレヴィがいいわ」
あぁ、なるほど。
大事な王女様が望んでない婚姻など認めない、と。
しかし、こんなに幼くても王女となれば許嫁を決められるとは......人間とは時に残酷だ。
「ルナリア王女。きっとレオンがどうにかしてくれますよ。さぁ、"デート"に行きましょう」
「!! そうね!! 行きましょう!!」
「あぁ!! ルナリア様!!そんなに急いで走らないで!!」
私はルナリアに手を引かれながら中庭へと向かった。
ルナリアが元気な姿に安心した。
やはり子供には元気で駆け回っていてほしいものだ。
――そう言えば国王には会ったが、この庭の主である王妃にはあった事はないな。
「ルナリア王女。王妃様はどうされている?」
そう私が問うと、ルナリアはピタリと足をとめた。
そして、立ち止まり下を向く。
慌てた様子でリオンが私に説明してきた。
「レヴィ様! 王妃様はルナリア王女が幼い頃にお亡くなりになってしまって......この薔薇園も唯一の思い出の場所なので毎日通っているのです!!」
――私としたことが、とんでもない地雷を踏んでしまったようだ。
しかし、こんな小さなレディを泣かせては紳士ではないな。
私は以前よりも細心の注意を払って魔力を集中した。
――そして生まれたのは七色に光る薔薇のネックレス。
「ルナリア王女。これを」
「......? これは?」
「私の魔力を込めたネックレスです。......これが貴方を王妃の代わりに守ってくれます。だから泣かないでください。貴方に涙は似合わない。花のように美しく笑っていてください」
そういいながら私はルナリアにネックレスをかける。
――これがあれば私がいなくとも彼女を私の代わりに守ることが出来る。そう思いながら。




