第44話
私は廊下の騒がしさで目を覚ました。
――何やらとんでもない夢を見た気がするのだが、思い出せない。
思い出そうとすると頭痛がする。
とりあえず私はベッドから降り、廊下へと向かった。
「......お前達は騒いでいないと死んでしまう呪いにでもかかっているのか?」
「レヴィ!! レヴィはわたしをおよめさんにしてくれるのよね?!」
「る、ルナリア王女?」
「ルナリア。悪いけれど、癪だけど!! レヴィが僕とセラフィンのお嫁さんなのは周知の事実なんだよ?」
......この男は、一体自分の妹相手に何を張り合っているのだ?
たしかに城下町に行った際そんな会話をした覚えはあるが......
「では、私はエリオスとセラフィンのお嫁さんになって、ルナリア王女をお嫁さんに......なんだかわからなくなってきた。もういいではないか。皆で"家族"とやらになれば」
「「「家族......」」」
うん。我ながらいい案を出せたぞ。
しかし、三人はなんだか気に食わなそうだ。
――一体何が不満なのだ?
「レヴィ......やはり君は一度"恋愛"について学んだほうがいい」
「そうですね......無知すぎると今後が心配になります」
「レヴィ、ちゃんとおべんきょうしてね?」
......そんなに無知であろうか?
人間界に来たばかりの頃に比べれば大分成長したと思うのだが......
「......要するに、誰か一人を選べと言うのか?」
「!! 分かってるじゃないか!!」
「......それは"結婚"すると言うことだったな?」
私がそう言うと、何故か皆キラキラした眼差しを向けてくる。
なんなのだ?
「さぁ、選んでレヴィ。僕? セラフィン? それともルナリアかローゼベルト?」
「......いきなり選べと言われてもだな......私は誰一人として欠けてほしくはないのだ。......それではダメか?」
秘儀、上目遣い。
困った時はこれをするといいと誰かが言っていた気がする。
私はそれに賭けをした。
どうやら効果は抜群らしい。
エリオスとセラフィン、ローゼベルトは胸を押さえ跪いた。
人間というのはこんなにも単純で大丈夫なのか?
「お、おい......そこまでならないだろう......」
「......レヴィの上目遣い......可愛すぎる!!」
「心にしかと刻みました......」
「レヴィちゃん、やっぱり私のコレクションに加えたいわ......」
......なんだか皆の顔が恐ろしい事になっている。
正気を保っているのはルナリアだけである。
「レヴィ? みんなどうしちゃったの?」
「ルナリア様。あれがなってはいけない大人の例っす。」
「......お前はたしか......レオンか?」
「残念、リオンっす!!」
む。また間違えてしまったか。
「すまないな。リオン。」
「いえいえー。慣れっこですからお気になさらず!!」
「ところで......一国を担う者達がこのような様子で大丈夫なのか......?」
「っすねぇ」
私達はため息をつきながら、男三人を放置して聖堂を後にした。
――私はこの時大事なことを忘れていたことに気がつかないでいた。




