第38話
「さぁさぁ。皆さん! 訓練の邪魔をしてしまい申し訳ありません。どうぞ訓練に戻ってください。ローズ。聖剣をこちらに」
「聖女様ぁ!! お願いいたしますわ♡」
ローゼベルトがセラフィンの前に折れた聖剣を置くと、セラフィンは聖剣に両手をかざした。
すると白い光に包まれて......折れたはずの聖剣が綺麗に元通りになった。
「ありがとうございますわ、聖女様♡」
「貴方も、レヴィ様相手によく戦いました。わたくしも誇らしいです」
「そんな! お褒めにあずかり光栄ですわ!!有難き幸せ♡」
......むぅ。やはりセラフィンは人間に甘い気がする。
私には母親のようにぐちぐちと言うのに......。
「セラフィンはやはり人間の方が良いのか......」
「?! 何故そうなるのです?!」
「そうだね、レヴィ。でも安心して? 僕がそばにいてあげるから」
「エリオス様まで?!」
今度はセラフィンが慌てる番だ。
たまにはこういうのも悪くはないであろう? すると、「ふふっ」と小さな笑い声が聞こえてきた。
どうやらローゼベルトのものらしい。
「い、いえ......申し訳ございませんわ。本来敵対するはずであろう人間と魔王がこんなにも仲睦まじい様子を見せて下さるんですもの。......平和と言うのはこういうものかもしれませんわね」
「......そうだな。私は魔族だけでなく、人間も尊ぶべきものだと考えている」
「......そのお言葉、しかと胸に刻みましたわ」
今はまだ、魔王として人間と寄り添っていけたらと思っている。
「人間にも魔族は恐ろしいものではないと、共存できるものだと知ってほしいものだな」
「あら、素敵なお話ね♡」
「大丈夫。ゴブリンの一件で人間と魔族の距離は少しずつ縮まってきている。」
「それに聖母の家でも、子供達は貴方にとても懐いていたではありませんか。レヴィ様のご活躍の賜物ですよ?」
「......そいうか」
私は普段褒められ慣れていない。そんなに褒められると......
「魔王様。落ち着いてください。"青い炎"が漏れています」
「ヴァ、ヴァルク......」
そう、私は感情が高ぶりすぎると"青い炎"が身体から漏れ出てくるのだ。
......まさか褒められて恥ずかしくなったからとは口が裂けても言えない。
「レヴィ......今の炎は?」
「心配しなくていい。危険なものではないからな」
「......創世神の青い炎」
「え?」
セラフィンの小さな呟きはどうやら私にしか聞こえていなかったようだ。
「セラフィン? お前は何か知っているのか?」
「......それについては二人の時にお話します。レヴィ様もあまり正体がバレるのは避けたいでしょう?」
「......そうだな。それでは今晩私の部屋に来てくれるか?」
「分かりました」
「? おい、二人して何をこそこそしているんだい?」
......これ以上は怪しまれるな。
「何でもないぞ。それより腹が減った」
「まったく。君も随分と気分屋だなぁ」
「もういい時間ですもんね。でもその前に湯浴みが先ですよ?」
湯浴みは好きだ。
人間界に来て初めて触れた文化だが、気持ちがいい。
エリオスがもう倒れないでいてくれることを祈りながら私達は湯浴みに向かった。




