第36話
ローゼベルトの申し出を受け入れると、彼は「まぁ♡」と言って聖剣を鞘から抜き出し、構えた。
「では――聖騎士長ローゼベルト・ヴァレンシア。参りますわ!!」
「......!!」
先程までとは桁違いに力強い。
......この私に両手で魔剣を構えさせるとは。
「......流石、聖騎士長と言う事か」
「お褒めにあずかり光栄ですわ♡」
「でも......これが本気ではないであろう?」
私がそう言うとローゼベルトはクスリと笑った。
そして聖剣を構えなおすと――目の前からローゼベルトの姿が消えた。
「......!!」
私は身体を捻り、ローゼベルトの攻撃を魔剣で受け流した。
「......速いな」
「レヴィちゃんこそ♡......でもまだまだこれで終わりじゃなくってよ?」
魔剣と聖剣が激しくぶつかり合う。
その度、凄まじい衝撃はが訓練場に響き渡る。
それを見た聖騎士達は声も出ないようであった。
「す、凄い」
「これが魔王の力、か......」
「待て。よく見ろ、魔王はローズ様の攻撃を受け流しているだけだ......」
流石は聖騎士。見えているものだな。
そうだ。私はまだ本気を出してはいない。
しかし、それはローゼベルトにも言えること。
「本気を出せローズ。まだまだ力を出せるのであろう?」
「あら。分かっちゃったかしら」
「分かる」
「それなら......」
ローゼベルトは聖剣を構えなおした。
「私も本気、出しちゃうわ♡」
「望むところだ」
そして再び魔剣と聖剣がぶつかり合う。
――そんな光景を見て、エリオスとセラフィンは頭を抱えていた。......何故であろう?
「よそ見をするなんて余裕ね!私だけを見てほしいわ!!」
「む。すまない。エリオス達の様子がおかしくてな」
「......私とのダンスに集中してほしいわ!!」
ローゼベルトが渾身の一撃を放った。
私はそれを魔剣で受け止める。
だが、その衝撃は強かったようで、地面が大きく陥没した。
「......ほう」
私は少しだけ目を見開いた。
「これは面白い」
「でしょでしょ♡」
「......では私も少しだけ力を......」
「レヴィ!!」
エリオスが慌てたように私の名を呼ぶ。
......せっかくいいところなのに興が削がれてしまった。
「......なんだ、エリオス」
「絶対に本気なんて出さないでね?!」
「私は"少し"だけのつもりだが?」
「その"少し"が桁違いなんだよぅ!!」
私は不思議に思い首を傾げる。すると、ローゼベルトがクスクスと笑い始めた。
「殿下。心配いりませんわ。こう見えても私は聖騎士長ですよ?魔王の魔力を受け止める自信はありますわ」
「そうか。それなら......」
私は微かに魔剣に力を流し込むと、ローゼベルトに向け禍々しい魔力のこもった魔剣を一振りお見舞いした。
するとローゼベルトの聖剣は魔力に耐え切れず負けて折れてしまった。
「楽しい一曲だったわ。容赦のないレヴィちゃんも大好きよ......!!」
ローゼベルトはそう言うとその場に膝をついたのであった。
......魔力は約束通り"少し"にしたのだが......、やはり"人間"と"私"の少しの基準はどうも違うらしい。




