第34話
「......ローズよ」
「なぁに、レヴィちゃん?」
「お前はいつもあのような者達を率いているのか?」
私の問いかけ、にローゼベルトは嬉しそうに微笑んだ。そして――。
「聖騎士達は、私にとって可愛い可愛い部下よ?......その子らを率いて任務にあたる。これほど光栄なことは無いわ」
「......そうか」
私はエリオスの腕を外し、聖騎士達の前へと出た。
そして、私は目の前に並ぶ聖騎士達を見渡した。
皆、白銀の鎧を纏い真っ直ぐな眼をしている。
「......今お前たちの前にいるのは"魔族"で"魔王"だ。恐ろしくないのか?」
「......正直に申し上げますと、最初はとても恐ろしかったです。」
「......そうか」
「しかし、聖女様が信頼を置き、陛下や殿下が心を開いていらっしゃる。......それに」
聖騎士は一つ息を置いたかと思うと、ローゼベルトに目をやった。
「ローズ様が『お気に入り』と仰ったので」
「......ん?」
「だから、我々も貴方様を心より歓迎いたします」
「......おい、待て。お前たちの基準はローズなのか?」
私が思わずツッコミを入れると、ローゼベルトは嬉しそうに笑う。
「もちろんですわ。わたくしが認めた存在に、無礼を働く者など許しませんもの♡」
「......ローズ様がお認めになったからと言って......」
「そこ。何か文句でもおありなのかしら?」
ローゼベルトが鋭い視線をやると、失言したのであろう聖騎士は即座に姿勢を正す。
「い、言え!滅相もございません!!」
「そ。ならいいのよ」
......やはりこの男は凄い。先程まで私を"可愛い"と騒いでいた人物とは同一人物には思えない。
「......お前は凄いのだな」
「!レヴィちゃんに褒められちゃったわぁ!!そうだ、これから聖騎士の訓練場を見に行かない?」
「訓練場?」
訓練場と言う事は戦闘訓練をする場所なのだろう。
......気になる。非常に興味深い。
「もしかして、興味あるのかしら?」
「ある」
どうやら私の顔に感情が出ていたようで、ローゼベルトに言い当てられてしまった。
......魔界にいた頃は感情が読めないと言われていたはずなのだが。
「私はまだ人間界の事をよく知らない。"聖騎士"と言う存在ももっとよく知りたい」
「まぁ♡」
ローゼベルトは嬉しそうに両手を合わせた。
「もちろん、聖騎士の実力、たんと見せてあげるわ!!」
「それなら僕も行こう」
「わたくしもご一緒いたします」
エリオスとセラフィンも続く。
「......では、皆で行こうではないか」
「えぇ!」
そう言うと、ローゼベルトが私の手を取って歩き始めた。
「こっちよ、レヴィちゃん」
「......ローズ、その"ちゃん"というのはやめにしないか?」
「絶対にい・や♡」
「......むぅ」
またしても押し切られてしまった。
人間と言うのはこうも強情なのだろうか。
そんなやり取りを、後ろからついてきた聖騎士達が見ていた。そして――
「......あれが本当に魔王?」
「人間のようにしか見えん」
「しかも、ローズ様に手を引かれているぞ」
「......なんだか微笑ましいな」
そんな小さな声が聞こえた。
「?どうかしたのか?」
「「「「い、いえ!なにも」」」」
「そうか」
......人間界と言うのは不思議な場所である。
魔族である私を恐れる者もいれば、こうして受け入れてくれる者もいる。
そして私は――今、魔王としてではなく、一人の存在としてこの世界を知ろうとしているのだ。




