第30話
私は項垂れている連中を引き連れ、瞬間移動魔法で城下町へと繰り出した。
ちなみにエリオスもセラフィンも変装済みである。
四天王達は初めて見る人間界に対して興味津々であった。
すると、ベルゼブブが屋台の串焼きに興味を示した。
......まるで初めて来たときの私のようだと、微笑ましく思った。
「まお......レヴィ様!!この美味そうなのはなんなのですか?!食べてよいですか?!」
「待て。これを得るには金が要る。......エリオス」
「......しょうがないね。オヤジ、串焼き7本くれるかい?」
「ハイヨ!!......兄ちゃん達えらい美形揃いだな!特に珍しい黒髪の兄ちゃん!どうだい?ウチの娘の婿に......」
今度は"婿"と言う言葉が出てきた。
が、私は特に気にすることなく店主にこう返した。
「すまないな、店主。私はここにいるこの二人の"お嫁さん"らしい」
私はエリオスとセラフィンの腕を抱きしめそう宣言した。
すると、店主は目をまん丸くして指を指してきた。
「も、もしや、貴方はま、魔王様ですか?!......と、なるとこのお二人はエリオス王子と聖女様?!」
「......店主。シーっだ。今回はお忍びなものでな。騒ぎにしたくない」
店主は口を一文字にしてコクコクと頷くと、串焼きを焼き始めた。
「孤児院の子供達が言っておりました。『魔王様は心が綺麗で優しい』と。なるほど。子供たちの言葉に嘘はなかったようですな」
「?私は私だ」
「がっはっは!!魔王様は面白い!して、魔王様はエリオス王子と聖女様、どちらが本命なのです?」
......むむ。今度は"本命"、か。
これは知っているぞ。どちらかを選ぶ事であろう?
......そんな事、答えは一つに決まっている。
「私の本命は、この世界の者全てだ。人間も魔族も関係ない。......それが私の答えだ」
私の返事を聞いて、店主だけではない。
エリオスにセラフィンまでもが感涙し始めた。
「な、何故だ?何を泣く事が......」
「魔王様のお言葉は何よりも美しいものなのですよ?あぁ。私もその唇で愛を囁いてほしい」
「フッ。これだから人間は。魔王様が素晴らしいのは当たり前であろう」
「魔王様。もういい加減二人になれるところで......」
「人間界の食べ物も悪くはない。が、魔王様の血に勝るものはないな」
......なんだかもう、カオスである。
四天王達に人間界を楽しませようとしたというのに、いつの間にか"魔王様語り"となっている。なんだかとてつもなく恥ずかしい。
......なんだか身体が火照ってきたぞ?
「レヴィ?!顔が真っ赤じゃないか!」
「......へ?」
この感覚、初めてだが知っているぞ。"羞恥心"だ。
あまりに褒められすぎて恥ずかしくなってきてしまった。
――私はとうとう耐えきられずに、顔を両手で覆った。
どうやら羞恥心は知れば知るほど厄介なものらしい。




