第23話
馬車がたどり着いたのは孤児院が併設された教会であった。
セラフィンはその孤児院を"聖母の家"と呼んでいる。
セラフィンが姿を現すと、ルナリアよりも小さな子供から、少し大きな子供までがわらわらと集まって来た。
「皆さん、元気にしていましたか?」
「聖女様! お待ちしておりました!!」
「せいじょさま、あそぼー!!」
......やはり聖女と言うのは人を惹きつけるものなのだな。
なるほど。私が感心していると、不意にマントが引っ張られる感覚があった。
私は不思議に思い視線を下に向ける。
すると、そこには人形のような容姿の女児がいた。
「......どうかしたか? セラフィンならあちらだぞ?」
「あなたは、どうして"おつの"があるの?」
「ホントだー! 角があるー!!」
......困った。セラフィンに集まっていた子供達が、次々と私の方へ集まってきてしまった。
どう対応したらよいのか、全くと言っていいほど分からぬ。
「皆さん。この方は、魔界を統べる魔王様ですよ? ......と言っても、怖い人ではありません。心のとても綺麗で優しい人なのですよ」
「まおうさま!! すっげー!! かっけー!!」
「ねえねえ! 魔王さま! 今日ね、いっぱいくだものを貰ったの! このオレンジ、とっても美味しいのよ! 食べて食べて!!」
少女はそう言うと私に"おれんじ"と言う果実を差し出してきた。
......一体どう食べるのが正解なのだ??
私は不思議に思いながらも、とりあえずそのおれんじにそのままかじりついた。
「......ん。甘酸っぱいが......少しもごもごする。」
「レヴィ様。オレンジは皮をむいて食べるものなのですよ」
「......なんと。皮と言うのはこの表面を覆っているものか」
......人間界の果実とは、食べ方が難しく、面倒なものなのだな。
子供達はそんな私を見て一斉にわっと笑い声を上げた。
「魔王様って、おもしろーい!!」
「ほんと! もっと怖いのかと思ったわ!! 先生や巫女様達は悪い人だって言うけれど、貴方は全然悪い人だとは思えないわ! ......むしろ、魔王様の方が優しいわ!!」
「......私が面白い? 優しい? ......怖くはないのか??」
私が困惑していると、セラフィンがクスクスと笑いながら私の口元についたオレンジの汁をハンカチで拭いながら語りかけてきた。
「子供というのは、肩書よりもその人自身を見るのです。大丈夫。レヴィ様ならいずれたくさんの民から好かれることになるでしょう」
「......そのような未来が、訪れればよいがな」
私は庭を走り回る子供達を眺めながら、この平穏が続くのを祈るのであった。




