第20話
セラフィンとお茶を飲んでいた時、微力ではあるが複数の魔力を感じた。
――場所は城下町の噴水広場、か?
「ヴァルク!!」
「ハッ!!」
「レヴィ様!お一人では人間達から攻撃されてしまいます!わたくしもご一緒に行かせてください!!」
セラフィンの申し出に私は頷くと、瞬間移動魔法で魔力の原因である場所まで飛んで行った。
するとゴブリンの群れが町を襲ているではないか。
死者はいないようだが、怪我人が出ているようであった。
「セラフィン!お前は怪我人の治癒を!私がゴブリンの相手をする!!」
「分かりました!!」
そして私はゴブリンの群れの前へと立ちふさがった。
「......お前達。誰の許可を得て暴れている?」
「ま、魔王様!!」
「我々はただ、仕返しに来ただけで!!」
「......仕返し?」
ゴブリン達は悲痛な顔をして私を見つめてきた。
......一体何があったと言うのか。
私はとりあえずゴブリン達から話を聞く事にした。
「我々は森の奥深くに住んでいるのですが、人間どもが我々の畑から作物を盗んでいくのです。......それに」
「それに?」
「......子供達に乱暴したんですよ。やられたら、やり返す。魔族として当たり前のことをしたまでです!!」
なるほど。事の発端は人間側の盗みと暴力か。
「人間。お前たちは何故ゴブリン達の作物を盗み、子供らに暴力をした?」
「だ、だって魔物だから!!魔物のくせして人間界で暮らすのが悪いんだ!!」
「魔物だから、というのがお前たちの言い分なのだな?」
人間は意味もなく魔物を魔物と言うだけで憎む節があるようだ。
私は再びゴブリン達に語りかけた。
「お前たちの気持ちは痛いほど分かる。しかし、憎しみは憎しみを生み、血は血を呼ぶ。......これでは、永遠に鼬ごっこだ。罪が巡るだけ。」
「し、しかし......!!」
「そこで、だ。ルールを決めようではないか」
私は人間とゴブリン達の前に立ち高らかに宣言した。
「人間よ。これからはゴブリン達の作物には対価を払う事。」
「......何故私達が魔物に対価を......」
「ゴブリン達の作る作物には体力回復の魔力がある。......それを知って盗んで打たのではないか?」
私がそう言うと、人間達はぐうの音も出ない様子であった。
「人間よ。作物を得る代わりにゴブリン達の農地を襲わない事。そしてむやみやたらに魔物狩りをしない事。そして、ゴブリン達には作れない麦やパンなどとの物々交換。どうだ?これなら文句はあるまい」
「そ、そういう事なら我々は喜んで作物を提供いたします」
「......皆さん。魔王様のこの提案は我々人間と魔物が共存する第一歩です。受け入れてはいかがでしょうか?」
聖女であるセラフィンがそう言うと、人間達も渋々頷いた。
「あ、ありがとうございます、魔王様」
「礼などいらぬ」
私は静かに首を振った。
「私はただ、どちらか一方を悪者にしたくなかっただけだ」
私の言葉を聞いた人間もゴブリン達も驚き目を見開いた。そして――
「魔王様が、血を流さずして問題を解決した......?」
誰かがポツリと呟いた。
その呟きはあっという間に周囲に広がっていく。
魔族を恐れていた人間の心に宿ったもの。
――それは、"恐怖"ではなく"信頼と希望"であった。




