第2話
「では、こちらも出迎える準備がある。また後日迎えに来よう」
勇者、もとい王子がそう言うと、勇者一行は我が魔王城から去って行った。
王子以外の連中は私の言葉がまだ信用できていないようで、去り際私のことを睨んで行った。
......とはいえ怖くもなんともないのだが。
「魔王様ぁ、本当に行ってしまわれるのですか......?勇者達は私達に攻撃してきたんですよぉ?貴方様の大事な部下が!こんなにボロボロになるまで......!!」
「......それに対しては私も思うところがないと言えば嘘になる。しかし、これからは人間と魔物、共生していく世の中にしていくのも面白くはないか?......少なくとも、私はそんな平和な世を望んでいる」
私の言葉にルシファーはぐぬぬとしている。
それもそうか。
こいつはナルシストな性格だから、自尊心が傷つけられたと憤慨するのも無理はない。
......しかし。
「ルシファー、分かってくれないか?私もお前たちの事は大事に思っている。愛すら持っている。しかし、魔界の平穏のためにも今回の同盟は必要なことなのだ」
「ま、魔王様......も、もう一度言ってはくれませんか......?」
「?魔界の平穏のためにも......」
「そこではありません!そ、その......愛を......」
「?あぁ、愛しているぞ?」
そんな言葉を聞いてどうするんだ?と思ったが、ルシファーは満足気に舞を舞っていた。
......気難しい奴だ。
「ですが、魔王様お一人で人間界に行くなどと、心配して夜も眠れません......」
......マモンよ。魔界はいつでも夜なのだが。
しかし、マモンの言う通り一人で行くなどと無謀なことをするつもりはない。
「安心しろマモン。一人で行く気は毛頭ない」
「!でしたら......」
「あぁ。我が騎士ヴァルクを連れて行くつもりだ。ヴァルク。こちらへ」
「......お呼びでしょうか?我が主」
私が名を呼ぶと、黒い鎧を身に纏った一人の騎士が静かに歩み出て、私の前に膝をついた。
すると、マモンは悔しそうにしていた。
......知っているぞ。
お前は私が寝入る時を狙って寝室に忍び込んではヴァルクにつまみ出されているのを。
「私はこれから人間界へと赴く事になる。そこで、だ。お前に護衛としてついてきてもらいたい」
「......四天王のお方々でなくてよろしいのですか?」
「そうですよ!私は魔王様の血がなくては生きていけません!!」
「......ベルゼブブ。定期的に帰って来るからその時でも良いのではないか?」
ベルゼブブは自称美食家であるが、何故か私の血を高級ワインを味わうように欲するのである。
「私の一日の楽しみなのですよ......?!それを奪うと言うのですか!!」
「......ベルゼブブ」
いつ、どこで教育を間違えてしまったのか......。四天王と恐れられているほど実力はあると言うのに、全員私のこととなると......ハァ。
「ともかく!これは決定事項である!!......お前達であるから我が魔界を任せることが出来るのだ。信じてはくれないだろうか......?」
私はわざと弱々しく懇願するかの様に"お願い"をした。
すると、全員胸を押さえその場にしゃがみ込んだ。
......なんなんだ一体。
「「「「仰せのままに、我が魔王様」」」」
これで一先ずは大丈夫であろう。
さて。今日はこやつ等に労いのご馳走でも振舞うとするか。
「「「「魔王様のお手製ですか?!」」」」
「あ、あぁ」
「「「「やったぁ!!」」」」
四天王は先程までの落ち込みが嘘だったかのように目を輝かせた。
......ついさっきまでの悲壮感はどこへ行ったのだ。




