第1話
私は困っていた。
......悩みの種は、三下の魔物達が人間界で悪さをしていることだ。
本当は人間界と良好な関係を築きたいと思っている。
しかし、その想いとは裏腹に、魔物達や直属の部下である四天王達は人間を毛嫌いしている。
ある日、四天王達がボロボロの姿で私の元へとやって来た。
「魔王様!!勇者一行がこの城に......!!」
これはピンチなのでは?
......いや、これは逆に絶好のチャンスではないだろうか。
部下の非礼を謝罪し、人間達との関係を修復する。
うん。これはいけるのではなかろうか。
「魔王!!とうとう追い詰めたぞ!大人しくこの聖剣の錆と......」
「勇者一行。待っていた。......まずは部下の非礼をここに謝罪する。申し訳なかった」
「ま、魔王様......?」
「......私としては人間と争う真似はしたくない。それで、だ。ここに同盟を結ばないか?」
私からの提案に勇者一行は戸惑っていた。
しかし、そんな中、勇者は私をじっと見つめていた。
「魔王、同盟とはどういうつもりだ?」
「......問題は三下の魔物達が人間界で好き勝手していることだ。そこで、私が人間界へ赴き、魔物達から人間を守ろうではないか」
「......正気か?」
「もちろん。その代わり、人間も魔界に手出しはしない事。どうだ?悪い話ではないだろう?」
私の申し出に勇者は構えていた剣を地面に置いた。
そして、私の前に跪き、真っすぐ私を見上げた。
「セレスティア王国第一王子、エリオス・セレスティア。貴殿の申し出、ここに受け入れることを誓う」
なんと。勇者はセレスティア王国の王子であったか。
「受け入れてもらえて嬉しく思う。私はこの魔界、ノクス王国の魔王、レヴィ・ノクスだ。よろしく頼む」
「レヴィ、と呼んでも?」
「好きにするがいい。呼び方など気にしたことはない」
「......魔王は冷酷な男で、魔物にも人間にも恐れられるような存在だと思っていた。だが、お前は真っ先に謝罪することを選んだ。......お前は誰よりも世界平和を願っているのではないか?」
「......争いごとは好まぬ主義でな」
私は苦笑しながら小さく肩をすくめた。
「......そんな風に笑うのだな」
"そんな風"とはどういう事かは分からないが、これで魔界も人間界も落ち着いてくるだろう。
そう安心したその時だった。
静観していた四天王達が声を上げ始めたのだ。
「イヤですイヤですぅ!!魔王様がいない魔王城は鳥のいない鳥籠、イチゴの乗ってないショートケーキじゃないですか!!」
「こら!アスモデウス!!魔王様がお決めになった事だ!......クッ。従うしか無かろう」
「ルシファー、マモン、アスモデウス、ベルゼブブ。お前達にこの魔界を任せる」
「「「「我らが魔王様の仰せのままに!!」」」」
こうして同盟を結んだ魔界と人間界。
――この時私はまだ知らなかった。この同盟によって、私の人生......いや、魔生を大きく変える事になるなど。




